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枝瀬優
2021年12月26日 19:09
からっぽになったときほど涙が溢れるのはどうして視界がゆるやかに滲んで世界を曖昧にするからっぽのわたしたちに丁度いい世界風で乱れた前髪の隙間から見る夕陽の美しさはいつまでもわたしだけのもの君の感情を知らない昨日までがとても心地よかったんです知ってしまったら戻れないから嫌いなものも好きなものも、知ってるだけでいいの理解しなくていいのに、理解することが君のためとか言ってくるあなた嫌いだよ
2021年10月12日 17:34
昼間のシャッター商店街はなんだか居心地がよくて、すこしだけゆっくりと歩いて通過する、時間がわたしを急かさない、そこにあった記憶だけが堆積していて、眩しい昼間の太陽さえも懐かしくみえる、世界終末ごっこ、わたしたちはたくさんの勘違いを共有して繋がっているの、その勘違いが絆とか愛とかになって、ほんものになっていくの、だから謝らないで、嘘つきの君をすきになったとき、じぶんのこともすこしだけ許せた気がして、
2021年9月25日 22:44
真夜中の雨、きらきらしてるから、サンダルひっかけて浴びにいっても良いとおもえたんだよ、だれにも読まれない日記、遺書みたい、世界から消えたい度に鉛筆で綴ったコピー用紙一枚分の遺書はすべて燃えるごみになりました、わたしは2Bの芯と一緒にゆっくりと確実にすり減って死んでゆく、日記帳はすべて燃やして焼き芋をつくりましょう、夕焼け眺めながらきみと食べたい、秋は寂しい季節だねって、みんなそう思っているから正し
2021年9月4日 19:09
きみは居心地が良いひとって言うと、それは相手が我慢してるからだよって誰かが刺してくるし、みんな違ってみんないい党は主張が強すぎてそれが正義だって受け入れないと刺してくるしみんな自分が自分がって相手を刺して刺されてわけがわからない、ほんもの なんて誰も知らないくせに、ほんものを求めたり貶したり、にせもののわたしたちはいつまでも、ほんもの未満に恋してる、相手にばかり穏やかさを求めてるけれど、君のその言
2021年8月31日 18:22
美術室の隣の音楽室重い扉を引けば天井が高く臙脂色に囲まれた空間すべての教室にある机や椅子たちは違和感として存在していて五線譜黒板にらくがきすることなんだか躊躇われていつだって綺麗で長いチョークが並んでる夜中に絵画の音楽家たちが奏でるピアノ聴きたくて忍び込んだ8月31日
2021年8月19日 12:47
こどもの頃、掛け布団から足先がはみでているとおばけやなんだか怖いものに引っ張られるって根拠もない恐怖に怯えていた暗闇に紛れてやってくるそれらに恐怖して夜が怖かった暗いことが怖かった純粋な恐怖はいつのまにか居なくなって夜に暗闇に安心しているおとなのわたしたち
2021年8月12日 16:59
アイスの当たり棒がでたこどもの頃はいくら願っても当たらなかったのに興味が薄れた頃にやってくるなんて意地悪ねもうすこし暑ければ午後のおやつに引き換えてしまいたかったけれど君との約束がなくなってしまったついでに買っただけだからほんとうは当たりなんてほしくなかったよ神様が味方してくれないのはいつものことなのにね遠くで蜩が鳴いてるすべて汗になって流れたわたしのなかの水分は涙になれなかった
2021年7月28日 21:27
あと13時間で世界が終わりますなんとなくチャンネルをあわせたワイドショーすごく派手なワンピースを着た女子アナが真剣な表情で原稿を読み上げてる翌日でも1週間後でもなくて13時間後がいいのすこし焦って開き直って君と目が合う回数がいつもより増えて昨日と同じかすこしだけ背伸びした生活をしておやすみなさいって明日を生きる魔法を唱えて叶わないことに愛しさを感じて終わりたいね
2021年6月24日 20:35
愛されなかった幼少期同級生からのいじめを制服と大人から隠していた十代うっかり魔が差したリストカットぽたぽた垂れる真っ赤な血液に興奮と安心感恋した相手はとんでもない甲斐性なしで捨てられたのは自分でそんなわかりやすい壮絶な過去がひとつでもあるとわかりやすく周りが食い付いてくるねオマケでいまの自分は幸せですって顔してさ悲劇って美談にしやすいでしょそういう人間って違う世界のいきものみたいで
2021年3月2日 19:04
カボチャの馬車にのって王子様に会いにきたシンデレラは午前0時に帰らなくてはいけないけど、わたしたちは午前0時に待ち合わせましょう、日付がかわるその瞬間、一日のすべてがリセットされて清くなります、まっさらになったわたしと君で、はじまりをはじめましょう、闇に浮かぶ三日月の滑らかなカーブで寝てみたい、輝く星たちはけっしてわたしたちを邪魔することない透明な光、二人が指差した星を繋いで秘密の星座をつくりまし
2021年4月20日 18:52
また人の死を美化してる、美談にして語り継ごうとしている、苦しくて死にたくて辛かっただろう人の死を、わたしたちは解釈違いして、心に残そうと必死だ、きっと天使たちは空からわたしたちのつむじを見ながら笑ってる、あの人も笑っているかな、もしも笑っていたら嬉しいです、あなたの笑顔がだいすきだから、死が不幸なのはこの世に残ったわたしたちの価値観で、4回生まれ変わることが本当ならば、次の人生で、この世で笑い合い
2021年4月19日 20:41
午後の道徳の授業命や死について学ぶとききまって同級生の親友の死を語ってくる先生がいた名前も顔も声も知らないその親友の最期を聴かされるわたしたち不慮の事故だってわたしたちは話の中盤にはもう飽きていて途中から涙ぐみながら語る先生はいつだって不気味で感動ポルノ監督気分で教壇に立つ死にたいクラスメートは窓際の席からグラウンドを見つめて下級生の持久走を眺めていて一周遅れのあの子は世界の理
2021年3月28日 19:10
春がそこまできているにおいがします暖かいひざしはすきなのに春のにおい、胸がざわざわして向き合えません桜吹雪に巻き込まれて消えてしまえたら素敵なのに足元に散った花弁を踏んで進むしかないわたしたち綺麗なものはいつか必ず朽ち果ててわたしたちは見て見ぬふり綺麗な春だけ思い出にしましょそうすれば来年の春も待ち遠しくなるでしょ桜吹雪に巻き込まれて笑顔のあなたは春の妖精
2021年3月20日 15:51
まだ世界の広さを知らなかった4、5歳のわたしのせかいは疲れない程度に歩ける範囲通っていた医院は先生ひとりと看護師兼受付の女の人ひとりだったもしかしたら看護師さんと受付のおねえさんは別人だったかもしれないけれどあの小さな医院内に三人もの大人が居るとは思えなかったお医者さんはその先生ひとりだと確信していたあの頃子ども相手でも決して営業スマイルしない看護師さん(と受付のおねえさん)診察後に