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西尾維新×少年ジャンプ×ガイナックスという奇跡のコラボが実現

今回は、西尾維新原作アニメ「めだかボックス」について書こうと思う。
この作品は、週刊少年ジャンプに連載されてた人気漫画で、アニメとしてもそこそこヒットしてたよね?
制作はガイナックス
といっても、この頃のガイナックスはGONZO、スタジオカラー、TRIGGERの発足で中核だったメンバーの大半が独立して去った後の状態、正直下り坂だったんだよねぇ・・。
一部には、「めだかボックス」=ガイナックス最後の傑作、という捉え方もあるらしい。

「めだかボックス」(2012年)

この作品を改めて見るにあたっては、

西尾維新の作風vs少年ジャンプの作風


という視点で視聴してもらいたい。
本来、このふたつは相容れないものだよね?
少年ジャンプの作風については、皆さんもよくご存じだろう。
とにかく、バトルだ。
最後は暴力、ドツキ合ってナンボである。
そして必殺技の応酬。

その一方、西尾先生の作風についても皆さんはご存じのはず。
「物語」シリーズ等を例にとれば、ここでも当然バトル描写はあるんだが、でもジャンプのそれとは少しニュアンスが違う。
必殺技で敵をねじ伏せるとかではなく、基本、バトルにおいてもその本質は会話劇なんだよね。
ここは、「漫画」と「小説」という表現媒体の違いだと思う。

ところが、その「小説」の西尾先生が、敢えて「漫画」の総本山というべき少年ジャンプに乗り込んだわけさ。
「漫画」の原作を書きますよ、と。
これ、凄いと思わない?
めっちゃアウェーじゃん。
まぁ、西尾先生はもともと漫画家志望だったみたいだし、ジャンプには憧れがあったのかもね。

じゃ、「めだかボックス」を知らん人の為に、少し内容を説明をしよう。
まず主人公は黒神めだかという女子高生で、彼女は生徒会長なんですよ。
上の画の4名がその生徒会メンバーで、彼女らが学内の問題を解決していく的な王道学園モノである。
「SKET DANCE」とかに近いかも。
設定的には主人公最強系であって、ヒロインめだかはスーパーウーマンである。
西尾維新の小説作品でいうと、割と「美少年探偵団」が近いかもしれん。

「美少年探偵団」

とはいえ、やはり土俵は少年ジャンプ。
めっちゃバトル色は強い。
それも「物語」シリーズ的なバトルじゃなく、「美少年探偵団」的なバトルでもなく、正統に少年ジャンプ的な王道のやつである。

生徒会長vs風紀委員長のバトル

上の画の恐い感じの人が、ヒロインのめだかです(笑)。
戦闘モードになると雰囲気が少し変わるのは、スーパーサイヤ人的なものと捉えてね。
このへんはジャンプっぽいよなぁ。
ストーリーが進むごとにジャンプ色の方が強くなり、特に2期に入ってからは
強いのを倒したら、もっと強いのが出てくる
以前は敵だった奴が、味方に転じて主人公を助ける
など、ジャンプお馴染みのパターンになってくるのよ。

正直、私は2期より1期の方が好き。
なぜって、1期の時のめだかは穏健派で、何とか暴力に訴えず、物事を穏便に解決をしようとする姿勢が明確にあったんだ。
そこで色々と相手に語りかける、彼女の言葉はまさに西尾維新節。
ちゃんと、西尾先生ならではの会話劇として成立してたんだよね。
たとえば、1期でメインとなる敵キャラは風紀委員長で、彼は暴力至上主義ながらも、自らは「正義」だと自称する人物だった。
彼は信念は「性悪説」。
それゆえ、対話での和解や相手の改心などを一切信じず、ただ、暴力による統制でしか正義は実現できないという考え方。
一応、筋は通ってるんだよね。
それに対し、ヒロイン・めだかは「性善説」。
悪人であっても核には善があるという考え方で、そういう意味では風紀委員長と真逆の思想である。

性悪説vs性善説

このへんの論戦は、きちんと西尾先生っぽさがあったよ。
だけど2期になると、もはやそういう思想もヌキで【能力vs能力】の純粋な能力勝負となっていた。
これ見て、

「あぁ西尾先生、最終的にはジャンプの空気に屈したなぁ・・」


と思わざるを得なかったよ。

あと、ジャンプの作風といえば、こういうのも多分そうだろうね↓↓

私、こういうのあまり好きじゃないんですよ。

好きじゃないというか、嫌いですね。

いや、むしろ、大嫌いといっていい。

ああ、嫌いだな。

大嫌いだとも。

で、この「めだかボックス」は2009年に原作漫画連載を開始、そして2012年にアニメ化という流れだった。
2012年ということは、既に「化物語」や「刀語」はアニメ化されてたということね。
つまり、例の「西尾維新アニメプロジェクト」は既に始動してたのさ。

じゃ、「めだかボックス」は「プロジェクト」内の作品にカウントされてるのかというと、実はされていないんです。
なぜなら、「プロジェクト」は<西尾維新×講談社×アニプレックス>という三者によるものだから。
「めだかボックス」は集英社ゆえ、当然カウントされていないということ。

<西尾維新アニメプロジェクト>
・「物語」シリーズ
・「刀語」
・「美少年探偵団」
・「クビキリサイクル」

<プロジェクト対象外>
・「めだかボックス」
・「十二大戦」

実は「十二大戦」も集英社のジャンプ+からコミックが出版されていて、「めだかボックス」同様、これも作画/暁月あきら先生とのタッグ。
あるいは西尾先生の中で、「小説は講談社、漫画原作は集英社」という
棲み分けがあるのかも?

で、西尾先生は2022年、「めだかボックス」から約10年ぶりに少年ジャンプにまた復帰したってさ。
暗号学園のいろは」という新連載の原作を手掛けることになったという。
あの西尾維新が帰ってきた!」と大々的なプロモーションがあり、集英社的にもかなり期待を寄せた大型企画だったらしいよ。

・・ところがこれ、爆死したらしいんだわ。
「暗号」を題材にしたというかなりマニアックな内容ゆえ、一部には熱烈にウケたらしいが、読者人気アンケートでは常に底辺をさまよってたらしい。
まぁ、私も読んだことないから分からんけど、「めだかボックス」のようなジャンプ王道路線を今回は敢えて外してきた感じ?
あるいは、これが小説だったら普通にヒットしたのかもしれんが・・。

ちなみに「めだかボックス」はコミックス発行部数が500万部を超えてたという話なので、十分合格ラインだっただろう。
やっぱ「郷に入っては郷に従え」。
いくら西尾先生といえど、漫画の世界ではジャンプの流儀に従わない限りには売れないのかもしれん。
思えば、「めだかボックス」の時は、そうしてたのにね?

「めだかボックス」黒神めだか

実際、この黒神めだかはかなりのインパクトがあるキャラだったと思うし、これって、きっと「物語」シリーズの方にも少なからず影響を与えたと思うのよ。
それは特に、戦場ヶ原ひたぎに対してだね。

謎の動きをする戦場ヶ原さん

こういうのって、意外と人気に結び付くのさ。
案外、馬鹿にしたもんじゃない。

とにかく西尾先生は小説家ゆえ、「言葉」の人である。
言葉でありとあらゆる表現をできる達人なんだろうけど、でも言葉では絵のインパクトに勝てない領域って絶対あるんだよね。
たとえば、オッパイの柔らかさなんて、まさにそれじゃん?

ああ、羽川・・。

こういうのも文章で表現できなくはないにせよ、絶対に絵のインパクトには勝てないって。
あと、バトルもそうだよね。
少年ジャンプなんかはそのへんをよく分かってるから、とにかくアクションとお色気を非常に大切にする。
一方、西尾先生はやはり土俵が小説の人ゆえ、とにかく言葉を非常に大切にする。
こういうお互いの一番大切にしてる部分を、お互いに尊重し合わない限りは絶対にいいものなんて作れないだろう。
できれば、フィフティ/フィフティでいくべきだね。
この均衡が崩れてしまうと、やはり作品として不十分なものになってしまうと思う。
私としては、このへんの均衡を最も理想的な形で実現しているのが「物語」シリーズじゃないかな、と。
じゃ、「めだかボックス」の方はどうかというと、ぶっちゃけジャンプ色が強すぎる。
いや、誤解のないように。
アニメはジャンプ色が強いからこそ、かなり熱い内容で面白いんだよ。
ただひとつ思うのは、

「こういうのだったら、西尾先生以外の人でも話を書けるんじゃね?」


ということである。

「めだかボックス」1期第12話

ただね、個人的には「めだかボックス」の中で唯一「おっ!」と思った回があって、それは1期の最終回なのさ。
全12話の中でこの回だけ、西尾先生自身が脚本を書いてるのよ。
原作にはない、アニメオリジナルでね。
で、これは最終回だというのに、なぜか主人公のめだかが最初から最後まで出てこない(笑)。
そう、戯曲「ゴドーを待ちながら」方式なんだ
でもって、この回は見せ場となるバトルも一切なし。
いや、正確にはないこともないんだが、それも言葉のやり取りで先方を納得させるという、いかにも西尾先生らしい決着の付け方だったのよ。
なんと地味な最終回・・。
いや、逆に私はこの回、めっちゃいいと思ったなぁ。
これぞ、西尾維新アニメである。
多分だけど、こういうのを「めだかボックス」に期待してたファンも意外と多かったんじゃないかな?

皆さんにも、昔懐かしい本作を一度見てみてほしい。
多分、YouTubeで無料動画が見つかはずだから。
で、見るなら「これは西尾維新の原作である」という前提で視聴してみて。
そうやって改めて見てみると、色々と発見のある逸品だよ。


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