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世にも小さな音楽劇団の脚本

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よあけのばん公演シナリオのまとめ
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おやすみなさい、眠り姫

おやすみなさい、眠り姫

姫がこの世に生を受けた時、12 人の魔女が集まり、贈り物を授けました。 ひとりは沢山の富を、ひとりは限りのない美を、ひとりは高く積まれた徳を...。王様もお妃様も、 またとない晴れの日に大層喜びましたが、11 人目の魔女が贈り物を手渡した時、 城の外では雷鳴が轟き、見る見るうちに暗雲が立ち込めました。分厚く重なる紫色の雲からは、 恐ろしい顔の女が舞い降りてきます。
「王よ、妃よ、何故私をこの宴に呼

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クジラの夢を見るか?

クジラの夢を見るか?

https://youtu.be/Hly9avaLuT4

アーカイブ動画(ヤマネヒロシゲchにて公開中)

演目【クジラの夢を見るか?】

例えば、それは“宗教”に似ている。
心が弱く、悲しみや虚無感を抱えたニンゲンたちは、どうにか救ってもらおうと神や仏や太陽・宇宙、八百万・様々な物に願い・祈った。

クジラもまた、その一つだ。

→日没オレンジ
(新聞の一面には「オリンピック反対運動加速」「オ

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カタチのおはなし

カタチのおはなし

─カタチ。見たり触れたりしてとらえることができる、物の姿・格好。物体の外形。
きょうのお話は、見えるカタチが無い男の子と、カタチを探す女の子の不思議な物語です。
ふたりは運命の恋人同士です。だから簡単に出会うことができました。
どんな風に出会ったのでしょう?
それはこんな風に彼の歌声を辿って、彼女はこっそり家を出ました。

→Over the moon

辿り着いたのは、月の青白い光が照らす公園

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2021.4.30 よあけのばん記念公演

2021.4.30 よあけのばん記念公演

よあけのばんでは、お互いの誕生日などに演目を書き下ろすという風習(?)があります。過去、あまさき倫公里に向けてNonsugarが書き下ろした演目には【ハンニバル】【TWENTY SEVEN CLUB】【君に決めた】があります。

今回は、あまさき倫公里(28歳)の誕生日の為に書き下ろされたNonsugar単独公演で、演目名を伏せた状態で行われました。Nonsugarから手渡されるキーワード(ピン球

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2XX1年 GO TO ミステリーツアー

2XX1年 GO TO ミステリーツアー

─時は、2XX1年。

非営利法人 よあけのばんはミステリーツアーの企画を打った。

ターゲットの客層は“人間”。参加費は1500円と破格だ。

開催日程は1月17日 日曜日の晩。参加者たちが足を運びやすいよう、30分間の旅に設定されている。

ミステリーツアーの名目通り、目的地は秘密。「あなた自身の事を考えましょう!」というキャッチコピーに胸を打たれた者が十数名名乗りを上げた。─

皆さま、まず

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小瓶を売る女

小瓶を売る女

アーカイブ動画
https://twitcasting.tv/catooobar/movie/653795299
(1時間04分ごろからよあけのばんの公演がはじまります。)

演目【小瓶を売る女】

あるところに老夫婦が暮らしていました。
いつもふたりで仲睦まじく過ごしていましたが、時間の経過には勝てず、少しずつ少しずつ、おばあさんの様子が変わってゆきました。
最初は小さな物事の物忘れ程度でしたが

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ヘンゼルとグレーテル

ヘンゼルとグレーテル

ある森に、木こりとその家族が暮らしていました。木こりであるお父さんと、お兄さんのヘンゼル、 妹のグレーテル、そして再婚した継母の 4 人です。 家は貧しく、毎日の食べるものにも困っていました。そんなある夜、お父さんと継母は、こっそり 話をしています。どうやら、口減らしの為に幼い兄妹を森に捨てようという計画のようです。 その二人の会話をこっそり聞いていたヘンゼルは、あわててグレーテルに言いました。

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ラインシネマ

ラインシネマ

8月3日、月曜日。

ライブハウスから、イベントタイトルが『ラインシネマ』に決まったと連絡がありました。ついで「惜しまれつつも閉店してしまった地元の映画館の名前だ」と聞かされたわたしたちは、そこで『無くなった映画館・ラインシネマ』を知りました。

さて、わたしたちには「おやすみなさい。」というタイトルの曲があります。この曲は、亡くなったものに捧ぐ曲として作られたので、「きっと今回の演目“ラインシネ

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8月32日

8月32日

ぼくだけじゃなくて、だいたいの人が考えることだと思うけど、夏休みは短すぎる。
その割に宿題は多いし、忌々しきお母さんに家のお手伝いもどんどん任される。
おまけにお金持ちの家じゃないと海にも連れてってもらえないし、行ったところで、ビデオゲームも漫画雑誌も無いおばあちゃん家だ。

だから絵日記が全然埋まらない。8月の最初からなんにも書いてない。
先生は『毎日楽しいことを書きましょう』って言ってたけど、

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ぼうぼうと風の吹くところで死んではいけない

ぼうぼうと風の吹くところで死んではいけない

チャプター1【今まさに自害しようとしている少女】

「ぼうぼうと風の吹くところで死んではいけない」と教えてくれた先生の名前も忘れてしまったから、何も気にせずこの世を去れるわ。

→日没オレンジ

チャプター2【友達を亡くしてしまった少年】

崖から飛び降りて死んでしまったから
彼の顔は無くなってしまったんだ

葬儀にはたくさんの人が来たけど
誰も彼の顔を見ることはできなかった

一枚ぽっちの便箋を

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注文の多い料理店?

注文の多い料理店?

 二人の若い紳士が、すっかりニッポンの若者のかたちをして、とても便利なスマアトホンを持って環状線の寺田町駅の近くの、木の葉の一つも落ちていない道を、こんなことを云いながら、あるいて帰っておりました。
「ぜんたい、ここらの町はけしからんね。客引きの一人も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、飯を喰いたいもんだなあ。」
「焼きたての鶏肉と冷えたビールなんぞを、ごくごくと喉に流しもうした

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ぼくらのひみつきち

ぼくらのひみつきち

空間 絵描きdai
演出 よあけのばん

わたしたちの町には一本の川が流れていて、、、と始めてみたけれど、桃が流れてくるわけでも、河童が住んでいるわけでも死体が隠されているわけでもない、よくある川です。河原で花火をしたり、河原で星を数えたりできて、始まりも終わりもない、ただただ、感情も風景も流れて行く、川。ありふれた日々変わりゆく景色ですが、そこには大事な記憶があって、今日もあなたは描き続けている

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モナ・リザ

モナ・リザ

わたしの生まれは1503年のイタリア。今はパリのリヴォリ通り、75001番地。“ルーヴル美術館”と呼ばれる大きな建物の中に居を構えています。
あなたたち人間は、わたしのような絵が意見を持たず、言葉も話さず、感情も持たない無機物だと思っているようですが、それは大間違いだと思ってもらって構いません。

…申し遅れましたが、わたしの名前は『モナ・リザ』。創ったのはレオナルド・ダヴィンチという男性。骨はポ

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都市伝説

都市伝説

「ねぇねぇ、口裂け女って知ってる?」
「知ってる!赤いコートの女の人なんでしょ?」
「そうそう、学校帰りの子に話しかけてくるの。髪が長くってすっごくキレイなんだけど、
マスクをしているのよ。」 
「で、何か聞いてくるのよね?」
「そうよ。『わたし、キレイ?』って。」 
「でも顔は見えないんでしょ?」
「顔の半分を覆うようなマスクをしているからね。でもね、目鼻立ちからキレイなのがにじみ出てるのよ。」

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