なぜ禁止されるとしたくなるのか? 心理的リアクタンスとは

「なるべく外出を控えましょう…」→「外出したい!」

非常事態宣言時は外出自粛を強く求められ、外出に対する欲求はかなり強かったように思います。一旦落ち着いた感染者数も、その後上昇し、マスク着用、ソーシャルディスタンス、県外への移動はなるべく控えるなどが依然として求められています。こうした、「〇〇してはダメ」という、ある種禁止に近い要請を受けた時、どうしても反発心が芽生えてしまいます。

こうした、「するな」と言われると、むしろがぜん「したくなる」心理はこのコロナに限らず、様々なシーンで知らず知らず目にしています。

なぜこのような心の動きが起こるのでしょうか。改めて、禁止されたことへの反発心のメカニズムについて考えます。

禁止されるとやりたくなる(心理的リアクタンス)

冒頭の事例はコロナの直近のケースですが、昔からこの反発に関する話はよく見聞きします。例えば「決して覗いてはいけません」という一言が出て来る昔話。こう禁止されると物語の主人公は覗いてみたくなるものです。読んでいる側も同じ心境になりますね。

このような好奇心をベースとした反発心のことを心理学用語で心理的リアクタンスと言います。

【心理的リアクタンス】
選択する自由が外部から脅かされた時に生じる、自由を回復しようとする反発作用のこと。

「カリギュラ効果」という言葉もあります。カリギュラ効果は、禁じさせることで、逆にやってみたくなるという心理的リアクタンスを用いた効果です。この分かりやすい例が「上映禁止」という言葉。1980年に制作された「カリギュラ」という映画が、残額なシーンや性的描写が多く、あまりに過激という理由でアメリカのボストンで突然上映禁止令が出ました。すると、かえって人々の注目を集めたという出来事に由来しています。映画を観る自由が奪われ、それに反発して興味が湧くという、心理的リアクタンスが作用した事例ですね。

コロナウィルスの感染が拡大し始めた時のマスクについてもこの現象が起こっていました。「一人1個まで」と制限されると、逆に気になって買ってしまう。そこに希少性を感じ、さらに心理的リアクタンスと相まって心が動いてしまうということですね。

某化粧品のCMでも「申し訳ありませんが、〇〇は初めての方にはお売りできません。」といった表現をされていますが、これもこの作用が働いてしまう広告表現です。

人間は自分で決めたい生き物

人は誰しも生まれながらにして「自分の行動を自分で選択したい」という欲求を持っています。子供の頃に、夏休みの宿題をしようと思っていたところに母から「早く宿題をやりなさい」と言われ、逆にやる気を失った経験はないでしょうか。これが正に心理的リアクタンスが働いた瞬間です。

自分から進んで宿題をやろうとしていたが、自分の行動を他人に決められたことで「選択の自由が奪われた」と感じ、反発する態度を取ってしまうのです。これの面白いところは、相手の指示と自分がやろうとしていた行為が同じものでも、さらに言えば、例え相手の指示に従うほうがメリットが多くても、心理的リアクタンスは生じてしまう点です。人間とは不思議な生き物ですね。

人は何に反発しているのか

人は自分の行動や選択を自分自身で決めたいと思っている生き物です。ではなぜそんな感情が芽生えるのでしょうか。これは自己効力感に関係しているのではないかと思います。

人間に限らず、高等な霊長類はすべて「自分のことは自分で律したい」という本能を遺伝子レベルで持っていると言われています。やるorやらない、好きor嫌いなど自分で判断したいと思っています。自分で決めて、自分で行動する時に芽生えるのが自己効力感です。

例えば「やめろ!」「やれ!」と自分の意志に関係なく命令された時、その内容に関係なく「自分で判断する」という選択肢を奪われた状態になります。この瞬間、自己効力感を失います。次に起こるのが自己効力感の回復です。

「やめろ!」→「いやだ、やる!」(自己効力感回復)
「やれ!」 →「いやだ、やらない!」(自己効力感回復)

命令を否定し、自分の意志に沿って行動した時に自己効力感は回復します。これは「自分の行動を自分自身で決めた」ということ。結果的に反発しているだけで、本質は「自己効力感の回復」のためにこのような衝動が起きるのではないかと思います。

禁止されていない方に目を向ける(心理的リアクタンスの回避方法)

人は禁止されるなど選択肢を奪られると「自己効力感の回復」のために反発行動に出てしまいます。これは時に自分をアンコントローラブルな状態に置きかねません。ではその中で心理的リアクタンスを発動させずに、いかに自制するか。

そのポイントは禁止されていない方に目を向けることです。禁止されたり、否定されたりしているのと逆の部分に目を向け、できるだけ自分で選択できることに意識を向けることで心理的リアクタンスを回避することができます。

例えばコロナ禍で起こった「外出自粛」のケースでは禁止されている「外出」の方に目を向けるのではなく、「家での生活」の方に目を向ける。「家で過ごす時間が増える」点に注目することで、どんな風に過ごそうかな、と選択肢がいろいろ思いつきます。観たかった映画を観る、ドラマをまとめてゆっくり観る、ゆっくりとコーヒーを楽しむ、家族と過ごす、掃除がはかどるなど、選択肢が思いつきます。そこから選択して行動すれば、自己効力感は満たされ、無用な反発は起こりません。ストレスを回避することができます。

まとめ

今我々は、特にコロナの影響もあり、いろんなところで「制限」を伴う生活を強いられています。「〇〇禁止」「〇〇しなければならない」など、マスクやソーシャルディスタンスなど、自分の意志に関係なくやってはいけない、やらなければならない、といった選択肢を奪われるシーンが多いです。

そんな時に発動してしまうのが心理的リアクタンスという反発心です。これは自分で選択肢を奪われたことに対する回復行動であり、自己効力感を取り戻すために芽生える感情です。

この反発心はストレスを伴うため、なるべくなら回避したいところです。そのポイントは禁止されていない方に目を向けること。そうすることで、自分の中に選択肢を持てるようにしましょう。そうすれば、自己効力感を取り戻せ、心理的リアクタンスを回避できます。

その時に役立つキーワードは「逆に考えてみたら」です。外出自粛⇒「逆に考えてみたら、家にたくさん居れるってこと」、という風に、別の側面に視線をずらすことができます。

制約が多い今だからこそ、自分の意識を上手にコントロールし、ストレスを回避していきたいものですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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