たかしくん

11畳は広すぎる。身分不相応。

たかしくん

11畳は広すぎる。身分不相応。

記事一覧

時間を売る男

その男は困窮していた。凡庸な言い方をすると、明日の米にも困るほどに貧しかった。その男はハマり癖のある浪費家であったから、アニメや芸能人に一度ハマったら金が尽きる…

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今週のごはん

①焼きそば ②バターチキンカレー ③タンドリーチキン ④ちくわの磯辺揚げ

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ママの秘密

僕はママの秘密をいっぱい知っているんだ。ママは僕がまだ六歳だからって油断してるみたいだけど、最近の六歳をバカにしたらいけないんだよ。こんなところに書くことだって…

5

飼育

達夫は今日も上司に怒鳴られていた。ここのところ連日である。しかし今日のミスは達夫が悪いわけではなく、部下のミスであった。しかし彼がそれを言うと怒りを増幅させるだ…

3

ババ抜き

勝負は佳境に入っていた。幸子が、残り二枚になった真理子の手元のカードのうち、どっちを取ろうか頭を悩ませていた。その場面はババ抜きをやるにあたって最も緊迫するとき…

4

秘密のキーマカレー

今日は朝から妻と口論になってしまった。まあ口論というよりかは、一方的に私が文句を言っていたという言い方の方が適切であろう。理由は、妻が珍しく寝坊してしまったこと…

2

銭湯コミュニティ

コミュニティはどんな小さな社会にだって存在する。たとえそれが銭湯であってもだ。いやむしろ裸の付き合いであるから、下手に格好つけることもせず腹を割って話せるという…

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赤い糸の行方

私の職業は運命の赤い糸を結ぶというものだ。もちろん人間には見えないものを扱うということになるから、当然私は人間ではない。ちなみに私は上から来る命令を淡々と日々こ…

3

今週のごはん

①キーマカレー ②冷凍餃子 豚汁 ③鶏肉のレモン漬け焼き ④南蛮漬け ミニバーグ2種

2

特有の病

マコは普通の中学生であった。特に目立った特技はなかったが、一人っ子であったから、両親の愛情を一心に受け成長してきた。 そんなマコが自身の身体の異常に気づいたのは…

3

タイムマシン(後編)

そこは20年後の日本だった。 タイムマシンの発明者のジジイは、「あまり事を荒立てるなよ」と言っていたが、そんなことはハナからするつもりはなかった。ただちょっと観察…

1

タイムマシン(前編)

支配する側かされる側かで、人類を2つに分けるとしたら、俺は間違いなく前者に当てはまるだろう。 そんな俺が「タイムマシン」に出会えたのも、俺の引きの良さがあったか…

2

俺は赤ん坊

「ばぶばぶぅばぶぅー、あばば、キャッキャっ」 (俺は赤ん坊だ。まだ生まれてちょっとしか経ってないから、当然喋ったことはない。俺の周りの人間は俺がしゃべらない理由…

2

名前を呼んで欲しいだけ

バッグ・クロージャーは死のうとしていた。 誰も彼の存在を知らなかった。だから彼が居なくなっても別段困る者はいなかった。生まれたときから彼の名前は「バッグ・クロー…

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第三者

そいつは私の目の前に突然現れた。 そいつは自分のことを「第三者」と名乗った。名前は与えられていない、「第三者」だと。見た目はぬいぐるみのようだった気もするし、ピ…

3

運命の赤い糸

「私たちって、運命の赤い糸で結ばれてたのよ」 というセリフはフィクションのなかで見聞きしたことある人がほとんどだろう。そしてそれに当てはまる人の全員が、その存在…

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時間を売る男

その男は困窮していた。凡庸な言い方をすると、明日の米にも困るほどに貧しかった。その男はハマり癖のある浪費家であったから、アニメや芸能人に一度ハマったら金が尽きるまでそれらに貢いでしまうのだった。

たまらなく腹をすかせたその男は、とにかく金を欲していた。そうであったから、彼が「時間買えます!」という張り紙を見つけたときにそこに書かれた電話番号に電話をしたのも自然な流れであろう。

「もしもし。」

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今週のごはん

①焼きそば

②バターチキンカレー

③タンドリーチキン

④ちくわの磯辺揚げ

ママの秘密

僕はママの秘密をいっぱい知っているんだ。ママは僕がまだ六歳だからって油断してるみたいだけど、最近の六歳をバカにしたらいけないんだよ。こんなところに書くことだってできるんだから。

僕が初めてママの秘密を知ったのは、公園で葵ちゃんと遊んでる時だったんだ。僕の好きな仮面ライダーのおもちゃで遊んでたら、その首がポロっととれて中から白い粉が入った袋が出てきちゃったんだ。僕はその時、ママに怒られちゃうと思っ

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飼育

達夫は今日も上司に怒鳴られていた。ここのところ連日である。しかし今日のミスは達夫が悪いわけではなく、部下のミスであった。しかし彼がそれを言うと怒りを増幅させるだけだということが彼には分かっていた。だから彼は黙ってそれに耐えていた。

「先輩。ほんとによかったんですか。あれは僕の確認不足ですよ。」

達夫がデスクに戻ると、部下の村上が困り眉にしながら話しかけてきた。

「いや、いいんだ。課長に呼び出

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ババ抜き

勝負は佳境に入っていた。幸子が、残り二枚になった真理子の手元のカードのうち、どっちを取ろうか頭を悩ませていた。その場面はババ抜きをやるにあたって最も緊迫するときであろう。幸子は、二枚のカードを順番につまみながら、変化する真理子の表情を見てカードを引こうと思っていたが、思いのほか表情に変化がないので彼女は困った。悩んだ挙句、幸子から見て右側のカードを思い切って引き抜いたがそれはジョーカーだった。周り

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秘密のキーマカレー

今日は朝から妻と口論になってしまった。まあ口論というよりかは、一方的に私が文句を言っていたという言い方の方が適切であろう。理由は、妻が珍しく寝坊してしまったことで私の朝のリズムが乱されたことだ。今から考えると、おおむね私が悪かった。なにせ彼女は昨夜遅くまで息子の運動会の衣装づくりに励んでいたのだから、寝坊しても致し方あるまい。しかし今朝の私はどうにも虫の居所が悪かったらしい。「何もここまで言う必要

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銭湯コミュニティ

コミュニティはどんな小さな社会にだって存在する。たとえそれが銭湯であってもだ。いやむしろ裸の付き合いであるから、下手に格好つけることもせず腹を割って話せるというものかもしれない。私は1か月前から銭湯に通っている。主に行く時間はバイトが終わった夜の9時過ぎだ。そこから店が閉まる11時まで満喫するのが私の唯一の息抜きだと言える。その時間帯の銭湯では、4,5人の常連たちによるコミュニティが存在していた。

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赤い糸の行方

私の職業は運命の赤い糸を結ぶというものだ。もちろん人間には見えないものを扱うということになるから、当然私は人間ではない。ちなみに私は上から来る命令を淡々と日々こなしているだけで、誰が誰とくっつこうと興味はない。私にとって大切なのは自身の昇進話だけである。はやくこの下働きから抜け出し、上司のように適当に男女の組み合わせを決めるだけの立場になりたいものである。

私は筋肉痛の肩を抑えながら今日も人間界

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今週のごはん

今週のごはん

①キーマカレー

②冷凍餃子 豚汁

③鶏肉のレモン漬け焼き

④南蛮漬け ミニバーグ2種

特有の病

マコは普通の中学生であった。特に目立った特技はなかったが、一人っ子であったから、両親の愛情を一心に受け成長してきた。

そんなマコが自身の身体の異常に気づいたのは、テスト最終日の朝のことだった。

初めの異常は目に現れた。朝起きた瞬間、なにやらいつもより視界が鮮明ではないことに気がついた。なにやら目に白いベールが被さっているようであった。寝ぼけているのかと思ったが、時間をおいても、目をパチパチさせ

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タイムマシン(後編)

そこは20年後の日本だった。

タイムマシンの発明者のジジイは、「あまり事を荒立てるなよ」と言っていたが、そんなことはハナからするつもりはなかった。ただちょっと観察するだけのつもりだった。

そこには現代人がいかにも考えそうな、空飛ぶ人間だったり、自我を持ったAIなんてものはなかった。人間は普通に地面を歩き、仕事に行っているようだった。

そんな中でも変わっている点があった。

俺が何気なく渋谷の

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タイムマシン(前編)

支配する側かされる側かで、人類を2つに分けるとしたら、俺は間違いなく前者に当てはまるだろう。

そんな俺が「タイムマシン」に出会えたのも、俺の引きの良さがあったからに違いない。

年老いたジジイに街中で話しかけられたときは怪しさしか感じなかった。しかしそのジジイに連れられて、タイムマシンを体験してみて、それが本物であることを知った。そのジジイは右足を引きずっていた。「昔の古傷さ」とジジイは笑ってい

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俺は赤ん坊

「ばぶばぶぅばぶぅー、あばば、キャッキャっ」

(俺は赤ん坊だ。まだ生まれてちょっとしか経ってないから、当然喋ったことはない。俺の周りの人間は俺がしゃべらない理由を、頭がまだ成長してないからだと思っているようだ。だがそれは違う。俺がしゃべらないのは口を動かす力がまだないからであり、頭だけで言ったら周りの大人より優れている。だからなるべく俺を舐めないでもらいたい。)

「あーうーうー」

(俺は周り

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名前を呼んで欲しいだけ

バッグ・クロージャーは死のうとしていた。

誰も彼の存在を知らなかった。だから彼が居なくなっても別段困る者はいなかった。生まれたときから彼の名前は「バッグ・クロージャー」といった。彼は自分の名前を気に入っていた。なかなかかっこいい名前だと思っていた。しかし周りの人間は彼を認めなかった。彼はパン屋で働いていたが、そこで彼は自分が空気のような存在になっていることを知った。

そんなとき、彼は彼女と出会

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第三者

そいつは私の目の前に突然現れた。

そいつは自分のことを「第三者」と名乗った。名前は与えられていない、「第三者」だと。見た目はぬいぐるみのようだった気もするし、ピエロのようだった気もするが、どういうわけかその記憶はない。そいつが、女か男かも覚えていない。

その頃の私は窃盗、詐欺、暴力、脅し等の悪事の限りを尽くしていた。しかし私は全く反省をしていなかった。「悪いことをしたら反省する」という当たり前

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運命の赤い糸

「私たちって、運命の赤い糸で結ばれてたのよ」

というセリフはフィクションのなかで見聞きしたことある人がほとんどだろう。そしてそれに当てはまる人の全員が、その存在を信じていないことも私は心得ている。

その上で言わせて頂きたいのだが、運命の赤い糸はあるのだ。なにせ私の仕事は男女の小指についている赤い糸を結ぶ仕事なのだから。

私はこの仕事を初めてもう500年になる。だが未だ昇進は叶わず、日々淡々と

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