ママの秘密

僕はママの秘密をいっぱい知っているんだ。ママは僕がまだ六歳だからって油断してるみたいだけど、最近の六歳をバカにしたらいけないんだよ。こんなところに書くことだってできるんだから。



僕が初めてママの秘密を知ったのは、公園で葵ちゃんと遊んでる時だったんだ。僕の好きな仮面ライダーのおもちゃで遊んでたら、その首がポロっととれて中から白い粉が入った袋が出てきちゃったんだ。僕はその時、ママに怒られちゃうと思ってすぐにその首をひっつけたからバレなかったんだ。だめだよね、ママ。あんなところにお塩を隠したらおばあちゃんに怒られちゃうよ。そんで、ママはお塩が入った仮面ライダーのおもちゃを葵ちゃんのママに渡してたんだ。あれは僕のなのに。葵ちゃんのママは嬉しそうにそれを受け取ってたんだ。なんでただのお塩なのにあんなに嬉しそうにしてたんだろなあ。



二つ目の秘密は、パパが会社に行ってる時に、よくおうちに山下先生が遊びに来ることがあるんだよね。山下先生はかっこよくて、僕たちよりサッカーがうまいヒーローなんだ。ママに聞いたら、「ママにとってもヒーローなのよ。」って嬉しそうに言ってたなあ。僕、山下先生といる時のママの笑顔が一番かわいいと思うんだ。



三つ目の秘密は、ママがたまにおばあちゃんのお茶にだけ茶色い液体を入れてることなんだよね。ママは、「おばあちゃんはお口が悪いから、それを治すお薬なのよ。」って言ってたんだ。でもそのとこは誰にも言ったらだめなんだって。ママはいっつもおばあちゃんにいじめられているのに、おばあちゃんの病気を治そうとしてあげて偉いなあ。



この前パパに、「ママについて何かおかしなところがあったら教えてね。」って言われたんだ。だから、僕はママのさっき言ったすごい秘密を教えてあげたんだ。そしたらパパは静かに言ったんだ。「ママはもう少ししたら病気で死んじゃうよ。だからママが急に死んじゃっても悲しんだらだめだよ。」って。僕は悲しかったけど我慢するんだ。だって僕はパパのことも大好きだからね。

今度の日曜日はパパとホームセンターでロープとスコップを買いにいくんだ。帰りには葵ちゃんのママに取られた仮面ライダーのおもちゃも買ってくれるんだって。このことはパパと僕とみんなだけの秘密なんだ。みんなも絶対に誰にも言ったらだめだからね？