俺は赤ん坊

「ばぶばぶぅばぶぅー、あばば、キャッキャっ」

(俺は赤ん坊だ。まだ生まれてちょっとしか経ってないから、当然喋ったことはない。俺の周りの人間は俺がしゃべらない理由を、頭がまだ成長してないからだと思っているようだ。だがそれは違う。俺がしゃべらないのは口を動かす力がまだないからであり、頭だけで言ったら周りの大人より優れている。だからなるべく俺を舐めないでもらいたい。)

「あーうーうー」

(俺は周りの大人たちに言いたいことがたくさんある。)

「えっえっ、あうー、おぉー」

(まず、「いないいないばあ」や「たかいたかい」を我々は本当におもしろいと思って笑っているわけではない。笑わないと大人が不審がるからだ。俺たちは空気を読んで笑っているに過ぎないのだ。)

「あばばば、うー」

(あと、俺にハチやらオニやらのコスプレをさせるのをやめてくれ。俺で遊ばないように。)

「おぉー、えっえっ」

(まあ母親には感謝を伝えなければならない。なんてったって俺の下の世話を嫌がることなく毎日やってくれているわけだから。あの時間は俺は恥ずかしさで泣けてくる。体がまだ制御できないのだから仕方ないのだが。)

「あー、おーおー」

(あと、俺のことで喧嘩をするのはやめてくれ。俺は夜に泣くこともない育てやすい子のはずだ。俺に悪いところがあったら治すから。)

「あぱー、うーうー」

(あと、これは個人的な悩みなんだが、最近頭の回転が鈍くなってきたようだ。俺のピークは母親のお腹の中にいたときで、その頃の俺は円周率を100桁は余裕で言えたのに、今では10も怪しい。)

「おーおー、えっ、」

(もしかして俺も年相応になってきているのかもしれんな。)


「最近、一歳の誕生日くらいからマー君急に赤ちゃんっぽくなったと思わない?もちろんいい意味でね。」

「僕もそれは感じてたんだよ。うまく説明できないけど、前までは目が据わってて僕たちを見透かしてる感じあったもんな。」

「そうね。ほらーマー君!たかいたかーい!」

「キャッキャっ、まんま、キャーっ!」

(キャッキャっ、まんま、キャーっ!)

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