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おすすめ小説まとめ

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noteのおすすめ小説。小説紹介記事をまとめています。読書好きさん必見✨
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2021年8月の記事一覧

コイツを好きとかありえない。

コイツを好きとかありえない。

#2000字のドラマ

「中村薫(なかむらかおる)って、女かと思った」

 その言葉にカチンときてキレなかったのは褒めて欲しい。
 初対面でそんなデリカシーのない発言をした堀綾香(ほりあやか)の印象は最悪だと思った。

 そんな堀は自分が所属する天文部で唯一の女子であり、自分と同じ学年の部員だった。
 男子しかいない天文部で女子の堀の入部は歓迎されたものの、堀は女子でありながらおしとやかの欠けらも

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【小説紹介】短編小説をサクッと読みたい時に!

【小説紹介】短編小説をサクッと読みたい時に!

小説紹介!短編集を隙間時間に読んでみてください。

一通のメルマガにより出会ったなぎと、8名の作家。出会いから生まれた物語、それは偶然か必然か。出版を目指す8名の有志によるオリジナル短編集。

それぞれが考える日常と、非日常の世界・・・。
何が本当に日常で、何が非日常なのか?日常だと思っていることが実は非日常で、非日常だと思っていることが日常だったりする。

日常や非日常というのは、結局判断するの

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ショートショート【白い物語】

ショートショート【白い物語】

今日も私は図書館へ向かう。足取りは軽い。
外観は古いけれど、利用者も少なく静かで、何時間でも居られそうなくらい落ち着く空間。
もう何年も借りられてない様に見受けられる分厚くて埃っぽい本から、いつ覗いても貸し出し中の流行りの本まで、様々な本達が鎮座している。

「館長おはようございます!」
元気に挨拶する事は欠かさない。
「茜くんおはよう。今日もご機嫌なようだね」
笑いジワから優しさが伝わってくるよ

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【ショートショート】ミント

【ショートショート】ミント

いつもと変わらないはずの帰り道に、いつもと違う何かを感じる。

いつもならしないのに、訳もなく遠まわりをした。
最寄り駅の方へ行かず、反対方向に歩き出した。

既に青になっているのに横断歩道を渡らず、そのまま赤になるのを見届けた。
それを何度か繰り返した。

道端に夕べの雨の忘れ物が残っている。
反射した空に重なる、自分の顔を踏みつけた。
靴下越しに湿り気を感じる。

僕の通う中学校では、寄り道を

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私の魅力にクラクラしなさいよ

私の魅力にクラクラしなさいよ

 彼女はサディスティックだ。
 ぐいぐいくる。ぐいぐいくる。
 僕は彼女の魅力にノックアウトする。
 ぐいぐいくる。ぐいぐいくる。

【1分小説】14「僕は命の代わりに君を捨てる」

【1分小説】14「僕は命の代わりに君を捨てる」

「さて、光一くん君がここから出るには彼女を殺すしか手はないのだよ」

窓のない部屋に電子音で加工された声が流れる。光一とその彼女、遥は十数日監禁され疲労は限界まで来ていた。

「光一だけでも逃げて」
「それはできない!」

遥は自分を犠牲に光一が脱出することを望むが、光一は受け入れない。当然だろう。
しかし遥はそれが不満だったようで、必死の形相で掴み掛ってきた。

「なんで? だって私光一君の彼女

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【短編小説】比翼双飛 ~義姉との禁断の恋

【短編小説】比翼双飛 ~義姉との禁断の恋

 蝉の声はやんだ。

 東の窓のレースのカーテン越しに外を見る。青い空に忘れ物のように浮かぶ小さな雲のかけらの前を、自衛隊機の黒い影がまっすぐに飛んで行く。庭の木々の葉が風に揺れいる。はるか上空の巨大エンジンの爆音が遠く聞こえた。
 エアコン温度の自動設定が作動し始める。

 貴彦の部屋で、ふたりは汗ばんだからだを横たえていた。
 スカイブルーのベッドカバーを洗濯し、畳んで、この部屋に夏代が持って

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