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グロなし『墜落遺体』印象的なエピソード3選
1985年8月12日、18時56分。
1台のジャンボジェット機が、高天原山の斜面に墜落しました。
日本航空123便墜落事故。
この事故で、乗員乗客520名の尊い命が奪われました。
それから16年。
事故当時、身元確認班に所属していた群馬県警の刑事官、飯塚訓さんが、身元確認作業の様子を詳細に綴った『墜落遺体』を出版しました。
それからさらに、18年後。
一昨日、タイムラインで目にしたこ
【小説】美しい孔雀 9
王子は、家の戸を叩いた。
すると、中から、あの若い娘──マーシーが姿を見せた。
「ど、どなたですか?」
青紫のワンピースにエプロンをつけ、靴を履いたその姿には、あの時の貧苦の影は、少しも見られなかった。
「私はあの日、あなたに羽を渡した孔雀です。神様が、私を王子にして下さり、新しい人生を歩むようにおっしゃったので、そのお礼とごあいさつをしに参りました」
「まぁ、何てことでしょう!!!!
【小説】美しい孔雀 8
孔雀が消え入りそうな声でそう言った、その時だった。
突然、老人の姿が光り輝いた。
老人は孔雀を抱きかかえて、すっくと立ち上がったと思うと、更にその輝きを増した。
辺りが昼のように明るくなった中、そこに立っていたのは、白い上着をまとった、ほかでもない神その方だった。
「美しい孔雀よ」
「美しい…?」
「見た目ではない。お前の心が、限りなく美しいのだ。
自分の身を犠牲にしてまで人々を救っ
【小説】美しい孔雀 7
そんなある日、孔雀は、あの懐かしい呼び名を聞いた。
「テンチャ!」
「ドーヴ! どうしたの?」
「テンチャ…。噂は、聞いていたけど、まさか、まさか、こんなことになっていたなんて…」
ドーヴは、孔雀の変わり果てた姿を見て、大粒の涙をこぼした。
それからドーヴは、首の回りがびしょ濡れになるまで泣き続けた。
しばらくして、ドーヴはようやく、伝えたかったことを口にすることができた。
「お城の
【小説】美しい孔雀 6
しかし、楽しい時はそう長くは続かなかった。
あれほどたくさんあった飾り羽が、とうとう無くなってしまったのである。
最後の飾り羽を渡し、家から出てきた孔雀に、孔雀と遊んだことのある少女が通りかかった。
「カミーラ! 元気にしてた?」
「うん! それよりあのね、見て見て!」
そう言ってカミーラはリュックサックから、一冊の本を取り出した。
それは、英語の教科書だった。
「学校、行けるように
【小説】美しい孔雀 5
その日から、孔雀は、来る日も来る日も自分の羽を配り続けた。
そして夜になると、地面の上で、できるだけ汚れてないところを探して体を休めた。
夏は涼しく、冬は暖かく、完璧に整備された環境の中で、ふわふわの専用ベッドに寝ていた孔雀にとって、それは過酷なものだった。
眠る孔雀の体を、寒さが襲い、風が吹き付け、雨が穿った。
ネズミの声で目を覚ました時もあった──
──いや、ネズミならまだよい方であ
【小説】美しい孔雀 4
しばらくすると、辺りの様子が一変した。
昨日馬車で通ったような、あの、煉瓦屋根でパステルカラーの壁の家々は消え、代わりに、板切れや布を継ぎ合わせたような粗末な家々が立ち並んでいた。
辺りには、鼻が曲がりそうなほどきつい悪臭が立ち込め、でこぼこでぬかるんだ狭い道の上を、時折、ネズミやゴキブリが走っていった。
それでも、軒前には洗濯物が並び、道には子どもたちが走り回って遊んでいた。
そし
【小説】美しい孔雀 3
家の屋根で翼を休めながら、休み休み空を飛んでいくと、街の片隅に、今にも崩れそうな小さな家があった。
孔雀が扉が無くなった窓から中をのぞいてみると、頭にタオルを乗せ、ベッドに横たわる女性がいた。
女性の頬はやつれ、顔は熱で赤くなっていて、目は閉じていた。
だが、女性の布団は、ぼろきれを縫い合わせたような布一枚だけだった。
その後ろに、大きな写真が飾られていた。そこに写っていたのは、間違いなく
【小説】美しい孔雀 2
そして、この日もまた、孔雀の召使いたちは、その「生ける国宝」を丁寧にカンガルー革製のお出かけ用バッグに入れ、王様の馬車の座席に乗せた。
季節は春。
南風が窓を開け放った馬車を通り抜け、かぐわしい花の香りを運んできた。
孔雀は、一体どんな美しい花が咲いているのだろうと思い、お出かけバッグの中から首を伸ばした。
するとそこには、美しい街並みが見えた。
おそろいの煉瓦屋根と、それぞれ異なったパ
【小説】美しい孔雀 1
ある国に、一つの城があった。
その城は、王様の住んでいる城で、この国の中で一番大きく、立派なものだった。
真っ白な大理石に、金の装飾が施された柱、赤いビロードの敷かれた床、七色に輝くステンドグラス、細かい装飾が施され、素晴らしい絵が描かれた天井…。
しかし、この、他に類を見ないほど豪華で美しい城の中にも、それと同じぐらい、いや、それ以上に美しいものがある。
それは、王様の居室に住まう、一羽
【小説】海の涙 12
遥希と海音は、もちろん、あの浜辺へと足を運んだ。
二人は浜辺を走り、叫び、波や海の生き物たちと戯れて…。
そして夕方ごろ、またあの「君とみた海」を歌った。
海音の透き通った声と遥希のハイトーンボイス、そして波の音が、見事な調和をなしていた。
歌い終わった後、遥希はぽつりとこう呟いた。
「この歌は、ぼくたちの歌だね」
「私もそう思う…」
夕日が空に紫と桃色のグラデーションを生み