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投資先企業の成長と魅力的なコミュニティづくりに向けたDEI推進 | 株式会社ミダスキャピタル

「フェアな労働市場をつくる」をミッションに掲げるXTalentは、DEI向上を目指す企業を対象としたアンコンシャス・バイアストレーニング(以下、UBT)を提供しています。

様々な企業のDEIの在り方にフォーカスし、広く社会に発信することを目的にした「#DEIのカタチ」シリーズとして、UBTを受講した株式会社ミダスキャピタル 代表パートナー 吉村 英毅氏、ディレクター 香川 恵美氏にインタビュー。PE(プライベートエクイティ)ファンドである同社から、投資先企業に対するDEIの考え方、UBTの感想、今後のDEIへの向き合い方について話を伺いました。

【吉村 英毅氏 プロフィール】
2003年大学在学中に株式会社Valcomを創業。2007年株式会社エアトリを共同創業し代表取締役社長に就任(株式会社Valcomを吸収合併) 。 2016年株式会社エアトリを東証マザーズ上場、2017年東証1部上場。
2017年株式会社ミダスキャピタルを創業し、後に代表取締役社長に就任。同年ミダスキャピタル第1号案件として株式会社BuySell Technologiesを買収。後に取締役会長に就任し、2019年東証マザーズ上場。
東京大学経済学部経営学科卒

【香川 恵美氏 プロフィール】
2009年総務省入省。地方自治・地方行財政業務に従事。2015年ソフトバンク関連会社にて事業開発、海外事業展開プロジェクトリーダーに就任。在籍中はソフトバンクアカデミアに入校。2017年からベイン・アンド・カンパニーにて戦略コンサルティング業務に従事。
2020年からミダスキャピタルに参画。
東京大学工学部システム創成学科卒


DEIは、投資先企業の競争力を高めるために
必要なことの1つ


ーーミダスキャピタル様は、PEファンドとして「傑出した才能と技術を集め、世界に新たな価値と景色をもたらす」というミッションを掲げ、現在15社へ投資されています。投資先企業のDEIについて、どのような考えをもっていますか。

吉村:私たちは、ファンドとして投資先企業の人事方針を決めることはしていません。ただ、DEIの思想は、企業が競争力を高めていくために必要な要素のひとつだと考えています。

我々の投資先企業の現状として、経営陣のバックグラウンドという観点でのダイバーシティは既に高いと思っています。というのは、各社の経営陣は、起業家・事業家、投資銀行などの外資系プロフェッショナルファーム出身者、メガベンチャーをはじめとした事業会社出身者、エンジニアなど、さまざまな経験を積んだ方々が集まってチームが組成されていることが多いからです。

その一方で、性別という切り口においては現時点では結果的に男性に偏っています。それは意図的に男性を選んでいるからではなく、採用候補のテーブルに女性があがってくる頻度が低いことに起因しています。なので、採用候補者となる女性の方々と出会う機会を投資先企業へ積極的に提供しています。その推進役が香川です。

香川:女性にベンチャーへの転職を考えてもらうためのキャリアセミナーや交流会を行い、女性候補者との接点をつくる活動をしています。

さらに今回のようなDEIトレーニングの提供や、女性や外国人を採用した企業へのセレブレーション(投資先企業の会合の場で称賛する)なども行い、経営陣へDEIの意識醸成をしています。また、投資先企業で働く女性メンバー同士がキャリアや働き方について相談し合う場も定期的に設けており、参加者からは、他社の女性メンバーの経験談が聞ける社員と交流ができると好評です。

こうした取り組みが始まったきっかけは、投資先の経営陣数名から「DEIを推進すべきだと思うものの、小規模なベンチャーでは手が回らないので支援してほしい」との声が挙がったことでした。

初期のベンチャーは即戦力を求めて中途採用を行いますが、中途採用者に多い20代後半〜40代前半の世代はライフイベントと重なることもあり、ベンチャーへ転職しようと考える女性が少ないんです。そうすると、もともと女性が少ない転職市場から採用するため、結果的に男性中心のチームになりがちです。

DEIを向上させる意識は、各社でも持っている人もいると思いますが、成長フェーズのベンチャー企業は常にリソース不足であるためDEI施策にリソースを割きにくいものです。ファンドとして企業支援に割くリソースがあるからこそ、さまざまな具体策を実行できていると思います。


研修を実施したことだけで醸成される
心理的安全性


ーー今回、なぜUBTを実施することになったのでしょうか。背景や目的について教えてください。

香川:投資先企業の経営陣のなかには、DEIがしっかり推進されている日系大企業や外資系企業の出身者もいます。そのため、前職と比べて自社のDEI施策が充実していないとの問題意識をお持ちの方が多かったです。しかしながら、日々ビジネスに注力している中で、成長フェーズのベンチャー企業は常にリソース不足であるため、DEI施策にまでなかなか着手できないという状況でした。

加えて、最近は経営者や政治家によるたった一度の失言で、辞職に追い込まれたり業績が下がったりする報道が目につくようになりました。こうしたニュースを目の当たりにした投資先の経営陣から「自社であのような不祥事が起きたら困る。明らかなNGワードはもちろん言わないが無意識に誰かが何かを言ってしまう可能性があり不安だ」という話が挙がるようになったんです。DEIの意識が世の中のスタンダードに達しているのか、という不安が高まっていたため、投資先とミダスキャピタルの経営陣を集めてUBTを実施することにしました。

ーーUBTを受講されて、どのような感想をおもちになりましたか。

香川:私を除く参加者の多くが男性で、もともとDEIの理解が深い人もいましたが、「このような視点で物事を考えたことがなかった」との感想もありました。なかには、「今までこのような研修を受けたことが無く、自分の無意識の発言が誰かを傷つける可能性があることすら気づいていなかったので考えさせられた」という人もいました。

私自身は、性別の面では少数にあたる女性として働いてきたので、元々ダイバーシティへの意識は強くありました。ずっと孤軍奮闘しているような気持ちもあったのですが、今回のUBTに男性も前向きに積極的に参加してくれたことをきっかけに、「このコミュニティでは、DEIの文脈で違和感を覚えたことは我慢せずに言っていいのだ」と思えたことが収穫でした。ミダスキャピタルや投資先企業の人たちとDEIの重要性を共有できたからこそ、お互いに違和感を伝えられる心理的安全性が生まれたように感じています。

ーーUBT受講後、組織や個人に変化が見られた事例はありますか。

香川:意識の変化はかなり起きています。女性にベンチャー転職を検討してもらうための、投資先企業の経営陣と採用候補者の女性との交流会は、参加者人数としては女性のほうが多くなります。その会場で、性別においてマイノリティとなった男性経営者から、「自分がマイノリティになると、何かひとつでも、グループの中で発言する際にこんなに努力しなければいけないのだ、と、これまで見えていなかったハードルを感じた」という感想が挙がったんです。UBTを受講したからこそ気づけた感覚なのではないかと思います。

その経営者は、自社の女性社員が会議などで発言した際に「勇気をもって発言したんだな」と受け止め、しっかり耳を傾けようと、より意識するようになったそうです。


優秀な人に魅力的に感じてもらえる
企業群を目指して


ーー今後、ミダスキャピタル様としてDEIのテーマにどのように向き合っていきたいとお考えでしょうか。

吉村:我々の最終的なテーマは事業成長であり、そのためにミダス企業群(ミダスファンドが過半数もしくは筆頭株主の企業)に優秀な人や案件がどんどん集まるような状態をつくっていきたいと考えています。各案件を成功させていくことが根幹にあり、そのためにはフェアネスの担保と、誠実さが必要だと思うのです。

DEIはその一環という位置付けであり、優秀な女性が活躍していることは、ミダス企業群として確立させたいブランドのひとつです。

香川:ダイバーシティがないことのデメリットは、今後ますます顕在化すると思っています。DEIの意識が不十分な企業は、公の場やSNSでの失言リスクが高まるだけでなく、DEIの意識が既に根付いている若手ビジネスパーソンや大企業出身者の採用がより難しくなっていくでしょう。こうした方々が採用選考において居心地が悪いと感じてしまえば、入社に至らないと思うのです。

各企業が成長していくためには、これらのリスクを減らしていくための積極的な取り組みが不可欠だと考えます。何もしなければ、いつの間にか同質性は高まってしまいますから。

ミダスキャピタルとしての具体的なDEI推進策は、今後も大きく変える予定はありません。DEIを忘れないために、施策を「続ける」ことが大切だと考えているからです。これからも、DEIは重要であるというメッセージを投資先企業へ出し続け、当たり前になる状態を目指したいです。

ーーミダスキャピタル様が今後目指す姿を教えてください。

吉村:ミダス企業群の時価総額の総計は現在約2,000億円ですが、将来的に1兆円、10兆円、100兆円にすることを目指しています。1兆円までは現在の主要マーケットである国内事業で達成できると思うのですが、それ以降の目標は海外展開をしていかないと難しい見込みです。

目指す姿の実現に向けては、海外企業もミダス企業群に入っていただいたり、海外事業に比重をおく企業を増やしたりすることを見据えており、そのためには外国人の経営者に参画いただく必要があります。

しかしながら外国人採用は女性の採用より難しく、その中でも優秀な方に来ていただかないと目標に到達できないと思いますので、そういった方々に魅力的だと感じてもらう環境づくりは重要ですね。

DEIの観点では、女性が活躍しているというブランド認知をつくること、そして海外事業への挑戦と外国人の経営陣を増やしていくことにチャレンジしたいと考えています。


各企業の「習慣」を乗り越え、
成長するために欠かせないDEI


ーーDEIへの取り組みの重要性について、企業の経営者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

吉村:マイノリティの方々が違和感を覚えてしまうような「習慣」は、多かれ少なかれ会社ごとにあるのだろうと思います。UBTでも、ご指摘いただいたことが普通になされている会社はあるのだろうなと思いながら受講していました。

日本企業において偏りがちなのは性別だと思います。DEIのテーマのひとつとして推進したほうがよいとの認識は違和感なく形成されているように感じるので、実行するためにはまず意識改革が必要ですね。

香川:上場企業になると機関投資家との面談もありますが、その中には、ダイバーシティやESGの観点がない企業には投資しないという明確なスタンスをもつ投資家もいるようです。

企業が成長するにつれ、DEIのスタンダードが高い人たちと取引をすることになるので、DEIの意識が薄い企業は違和感を持たれてしまうだろうと思います。ベンチャー企業は、大企業の後を追いかける形でDEIを推進するケースが多いですが、企業の成長過程において必要不可欠なものだと考えています。



▼ 「#DEIのカタチ」シリーズはこちら

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XTalent主催・共催 DEI関連イベントのレポートはこちら


ーSTAFFー
企画:筒井 八恵(XTalent株式会社)
取材・執筆:御代 貴子
撮影:森田 純典