マガジンのカバー画像

【虹の彼方に】

15
2020年9月25日 最愛の妻が空へ旅立ちました。 出逢って4年弱、入籍して1年と3ヶ月、結婚式を挙げて10ヶ月目のことでした。 一緒に過ごせた時間はとても短いものだったけ…
運営しているクリエイター

#家族

#最終話. 虹の彼方に 【虹の彼方に】

#最終話. 虹の彼方に 【虹の彼方に】

 妻の告別式の日、彼女の親友でありジャズヴォーカリストの吉田真理子さんからLINEで1本の動画が送られてきた。

話は少し遡ることになる・・・

妻の病気が発覚するずっと前、真理子さんがヴォーカルレッスンの教室を開いてすぐ、2019年の夏頃に彼女は彼女の親友のひろぽんと一緒に生徒として入門した。

その話はボクも聞いていて、妻がレッスンに行った日は、よく家で歌の練習していた。

 きっかけはレッス

もっとみる
#13. 九月 【虹の彼方に】

#13. 九月 【虹の彼方に】

9月1日 「抗がん剤治療」の2クール目に突入した。

1クール目の抗がん剤が効いていたのか、3〜4倍のスピードで成長していた腫瘍の成長をどうにか食い止めることができていたように思う。

腫瘍自体の大きさは現状維持か、ほんの気持ちだけ小さくなっていたようにも見えた。

2クール目の抗がん剤は1クール目よりも内容がより強力になったため、副作用が強く、身の置き所がないようなしんどさが続いた。

あまりに

もっとみる
#12. 闘病 【虹の彼方に】

#12. 闘病 【虹の彼方に】

8月13日 通院の日だった。

しかし何日か前から妻のお腹は妊婦さんのようにみるみる大きくなってしまい、下半身はパンパンに浮腫んで、1分と同じ体勢をキープできないほど身の置き所がないしんどさに襲われていた。

結局自宅には戻れず、その日は急遽緊急入院となってしまった。

お腹の張りは腹水が溜まっているとのことで、針を通して水を抜くことを試した。

しかし結果的にうまくいかず、利尿剤を使って水分をと

もっとみる
#8. 結婚 【虹の彼方に】

#8. 結婚 【虹の彼方に】

 指輪を買ったボクは、彼女と初めて出逢った1月29日の記念日に、改めてプロポーズをしようと心に決めていた。

彼女の仕事が終わるのが遅い時間帯なのと、高級で雰囲気のあるレストランとか全然知らなかったボクは、今まで一緒に行った中で彼女のテンションが一番高かった『ワニ料理』が食べれるお店を予約して、「2人が出逢って2年目の記念日」のお祝いをしようと、あらかじめ彼女を誘っておいた。

花束とケーキを買い

もっとみる
#2. 出逢い 【虹の彼方に】

#2. 出逢い 【虹の彼方に】

 彼女と初めて出逢った当時、ボクは43歳で建築関係の中間管理職をしていた。

当時の職務内容は、中間管理職と言いつつも、元請や職人との折衝に加え、慢性的な職人不足を補うため、そして現場の工期に間に合わせるために、自ら現場にも出て肉体労働をしながら事務作業もしつつ、受け持ちの現場のトラブルシュートに走り回ったりといった、とてもハードで何でも屋のような要領の悪い生活を続けていた。

若い頃にそれなりに

もっとみる
#1. 最愛 【虹の彼方に】

#1. 最愛 【虹の彼方に】

 2020年9月25日 午後15時06分

 最愛の妻が懸命の闘病の末、空に旅立ってしまった。

癌だと発覚してから、たったの3ヶ月だった。

出逢ってから約4年、入籍をして1年と3ヶ月弱、結婚式を挙げてからわずか10ヶ月目のことだった。

妻の最期のその瞬間まで、ボクは彼女の手をずっとずっと握り続けていた。

世間一般的にいえばあまりにも短すぎる彼女の人生だった。

彼女はいつも強く想い描いてい

もっとみる