マガジンのカバー画像

アコークロー【エッセイ】

4
ぼくの過去の思い出たちです。
運営しているクリエイター

記事一覧

すべての武器を楽器に【エッセイ】

すべての武器を楽器に【エッセイ】

 さて、どうしようか。

 ぼくは、うちなーんちゅだ。今まで沖縄の置かれている現状や思想、文化、を〝小説〟というフィクションの世界で表現してきた。現実と理想の物語のなかで、導いていきたかった。沖縄の抱える問題へと。
 しかし、政治を小説で語りすぎないようにもしていた。あくまで過去の事例をあげる程度におさめていた。それは、この島にある腐った権力構造のパワーバランスを崩さないためだ。
 とりあえずこの

もっとみる
すずらん通りでまたあいましょう。【エッセイ】

すずらん通りでまたあいましょう。【エッセイ】

 この街は夜になると染み入る雨のように暗闇がひろがり、それをさけて通るために蛾のようにネオンに狂気する。

 赤線ーー。あの時代の残り香は昭和の色香ただよわせ、今はスナック街だ。伝説の店。名物ママ。酒とすこしの肴で寝つけない夜をともに酔い、過ごす。近くのカラオケ喫茶からはうまくもないへたでもない歌謡曲が聴こえる。

 ぼくがその街に出入りするようになったのは、志なかばで大学を中退してからだ。いつで

もっとみる
雨に打たれたあのころ。【エッセイ】

雨に打たれたあのころ。【エッセイ】

 クラスに馴染めないぼくたちは、修学旅行なんて蹴って、自転車であの岬を目指した。天気は雲の多い晴れ。気温は20度前後だったと思う。
 高校生活は楽しかった。けど、それは学校外だった。悪さばかりしていた。わけでもないけど、野宿したり立ち入り禁止区域に入ったり、すこしだけクレイジーな仲間と過ごす放課後が、なぜか無性に楽しかった。
 ぼくとKはその日、岬にあるホテルを目指した。目的は、岬から見える絶景だ

もっとみる
統合失調と小説と刺青と【エッセイ】

統合失調と小説と刺青と【エッセイ】

 ぼくは周囲にも隠していないが、統合失調症をもつ小説家であり、入れ墨をいれている。

 まず、ぼくは妄想型統合失調症である。今症状は落ち着いているが、一時期はすべての思考が他人に漏れていると思っていた。24時間。365日。LINEのパスワードから銀行の暗証番号から、ぼくがアメリカに対している感情まですべて他人は知っていて、読みとられていて、ぼくをなにかに陥れようとしているのだと考えていた。それをし

もっとみる