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紅の言の葉

14
四角に収める言葉遊戯
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2020年4月の記事一覧

純白の見返り

純白の見返り

純白のドレスは完膚なきまでに美しく
其の有り余る美しさこそが作る距離感
そこに落とされた唯一点の染みこそが
人々の視線を誘い世間を振り向かせる
清きものの澄みを世は美しいとするが
其清きは遠くから眺めるからこその美
その中に棲み続けるには難く息苦しい
潔癖な部屋は騒めきを齎し安は得難い
純白の衣服は心配を齎し気を遠ざける
穢れ染みを避けるからこその清廉潔白
その純潔を守るために捧げる人生如何
染み

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リコリタ

リコリタ

世の為に献げる血も涙もありゃしません
他が為に此の命を献上するなど罰当たり
人の役に立ちたいなど微塵も思いません
他人を幸せにしたいなどお為倒しも上等
他が為より我が為に生きる此の人生です
其の様にして世間が幸福を得る結果顛末
其れを信じられぬのなら其の道を不乱に
我が身を削り歯を擦り美麗な骨粉を墓に

賊塞の祝祭

賊塞の祝祭

煙草は唯の害悪と云うが
悪を悪としか映せぬなら
毒もただ罪と罰の生産物
唯一つの眼鏡しか持たぬ
それ以外は全て悪と評す
その眼鏡が剥奪する微酔
嗜みの粋も貫禄も哀歓も
君の清さには讃歌を贈る

セヴンスターを握り締め
夜の歓楽街で酒瓶を割る
其れは宛ら往年の名男優
特別な夜には葉巻を咥え
攻めを崩さず勝ちを抜き
短かい望みをモノにした
古い男が重ねた生の歴史
時代の趨勢を生で見た瞳
君が世に生を受

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屹立礼賛

屹立礼賛

君を勃たせる琴を探せ
その線を成す物を弄れ
自分を勃たせた世界で
身を震わせ血を巡らせ
快感に溺れて痙攣せよ
自分に萎えている内は
世界も小さく萎んだ侭

わたしには出来ませぬ
わたしには解りませぬ
なんて恥ずべきこと哉
其は奥ゆかしきご尤も
是ぞ清楚で可憐な乙女
君の美しき衣よ侭あれ
その下の柔肌に幸あれ

君に奉る

君に奉る

白が混ざった顎髭
手に刻まれた年輪
横幅を擁した肩幅
抱擁するような目
琥珀がかった瞳孔
気持ちを語る背中
わたしを慈愛する
欠片たちの存在や
わたしに奉納する
その集合体こそが
自愛を支える支柱
その柱が立つお社
その社を参拝して
この身を奉り捧ぐ
それが即ち私の業

Sorry, we are closed

Sorry, we are closed

女であり雌である
不可抗力完全降伏
女の肉体の感度の
余すことない享受
この柔い感受性は
その中で守られて
まるごと導かれし
温く湿った小部屋
ここにいれば安心
誰も入ってこない
外の世界の現実は
夢幻の外のはなし

ラットの視点盲点

ラットの視点盲点

檻の中のラットは延々と
回し車の中を走り続ける
そうやって走っていれば
餌が貰えるから我慢する
錠も鍵も存在していない
最初からそうだった檻だ
扉の施錠を確認するなど
今のラットには想像の外
ましてや逃げるも論の外

バイバイ時間売買

バイバイ時間売買

時間売買の切符は完売
この人生の目的地まで
必ずわたしが嚮導する
乗客だった時の過去は
根こそぎ燃料に変えた
君の電車には乗らない
進む路線は自分で創る
行先の心配など御無用

嘘と本音の真実

嘘と本音の真実

嘘だから複雑にする
嘘だから美麗にする
嘘だから言いやすい
本音こそがシンプル
本音こそが穢らしい
本音こそが言い難い

影と光

影と光

人気が欲しいのなら無視を
裕福が欲しいのなら貧困を
人脈が欲しいのなら孤独を
突き抜けたいのなら批判を
勝ちを得たいのなら負けを
飛び抜けたいのなら嫉妬を
影を受け入れる覚悟なしに
光を手に入れることは不可

自由の国の不自由

自由の国の不自由

本心では違うことを思っていても
みんなと同じことを言っておけば
誰も攻撃してこない花咲く世間話
こんな自由な国に生まれておいて
自らの手で自らの言動を奪う搾取
世間を見張り自分をも見張る監視
正しさスゴさを見せたいのは保身
みんなを幸せにしたいなんて傲慢
他人を幸せにするよりまずは自分