NTT都市開発 デザイン戦略室

新たな価値を生み出す街づくりについて考えるため、「デザイン」を軸に社会の変化を先読みす…

NTT都市開発 デザイン戦略室

新たな価値を生み出す街づくりについて考えるため、「デザイン」を軸に社会の変化を先読みする記事を展開していきます。HP:https://www.nttud.co.jp メディアポリシー:https://www.nttud.co.jp/socialmedia_policy.html

マガジン

  • ちいさなまちのつくりかた

    地元や現地を意味する「local」という言葉の語源の核は、「特定の場所」だといわれています。街を特定の場所たらしめるのは、文化、コミュニティ、風景、そして行き交う人々です。経済合理性の追求を超えた「特定の場所」をつくるにはどうすればいいのでしょうか。それは、既存の街のつくりかたではなく、プロセスからあたらしくした先にこそ生まれるものかもしれません。2024年のNTT都市開発 デザイン戦略室のZINEは、そうした仮説をもとに"街のあたらしいつくりかた"を考えます。

  • まちのテクスチャー

    「まちを読む」をテーマに、多様な視点のゲストを招いてお届けするデジタルZINE「まちのテクスチャー」。 今回のZINEのテーマは、コロナ禍を経た今、私たちはどんな「まちの読み解き方」を手に入れたのか? です。その考えに至ったきっかけは、NTT都市開発 デザイン戦略室メンバーのふとした気づきでした。身近な街から始まる、面白くも奥深い視点の冒険。さて、そろそろ、歩きはじめてみましょうか。

  • Field Research2019 #03原宿

  • Field Research2019 #02山梨

記事一覧

「目的のない言葉」を手放さないということ ── 歌人・伊藤 紺

歌人・伊藤紺さんが短歌を書き始めたのは、大学4年生の元日でした。きっかけは、俵万智さんの『サラダ記念日』。突発的に手にした本に影響されて始めた“趣味”は、大学卒…

「生き物好き」のスタートアップから学ぶ、複雑な社会との向き合い方 ── 社会起業家・高倉葉太

青い光が外に漏れ出すガラス張りのオフィス。奥に並ぶたくさんの巨大な水槽。そこには、サンゴ礁生態系や干潮と満潮を繰り返すマングローブの生態系、ゲンゴロウが生息する…

“欲望“がデザインする、あたらしい漁業と食文化のかたち ── 仲買人・長谷川大樹

魚の仲買人という職業は江戸時代に始まったといわれ、魚の鮮度を見分ける目利きとしての役割を担っています。大まかな仕事は、魚市場に持ち込まれた魚介類に値段をつけ、競…

From our Editors ── 「街のあたらしいつくりかた」をつくる

誰のためのまちづくり? まちづくりは誰のためのものでしょうか。 これまで、私たちNTT都市開発 デザイン戦略室のnoteを読んできてくれた方々はご存じかと思いますが、「…

From our Editors ── 今この瞬間も誰かが街をつくっている

【まちの読み方 1】 “街の気配”に想いを馳せる 朝吹真理子さんがエッセイで綴ってくれた「かつて生きていた、名前もわからないひとたちの気配」を感じる体験。あるいは…

Book Guide 3 ── 「まち」の、”まだ分配されていない”未来

『みんなが手話で話した島』 ノーラ・エレン・グロース 著 / 佐野正信 訳〈早川書房〉 20世紀初頭まで誰もがごく普通に手話を使って話していた ── アメリカ・ボストン…

ウーリツァの娘 ── 津久井五月

 ユリア・ウリツカヤ。  通りの真ん中に立って、わたしのもう一つの名を、小さく唱えてみる。山村優里亜ではなく、ユリア・ウリツカヤ。その音楽的な響きが少し勇気を与…

Book Guide 2 ── 「まち」は、オルタナティブを求めている

『第三次産業革命: 原発後の次代へ、経済・政治・教育をどう変えていくか』 ジェレミー・リフキン 著 / 田沢恭子 訳〈インターシフト〉 著者であるジェレミー・リフキンは…

道がおぼえていること ── 朝吹真理子

 じぶんは忘れていても、道のほうが覚えていてくれることがたくさんある。通っていた小学校の手前の歩道橋をひさしぶりに登ったとき、十歳ごろの歩幅を急に思い出したこと…

Book Guide 1 ── 「まち」を、読み替える

『既にそこにあるもの』 大竹伸朗 著〈筑摩書房〉 始めから美を追求しては決して表れず、多分に偶然が絡む世界。〈そんな徹底して人間の行為に対峙した「美の領域」〉を、…

番匠カンナ/鈴木綜真/竹村泰紀 ── 都市を見つめる変化の兆し

01 都市の隙間への巣食い、あるいは救い ── 番匠カンナ(バーチャル建築家)ギャル雑誌『egg』の編集長は、もう聖地はなくなったと言った。都市がより快適により洗練され…

和田夏実/牧原依里/西脇将伍 ── 手話が街を”ハック”する

(7つの質問)手話の身体感覚で「まちを読む」試み Q.1 手話をしながらの街歩きを通して、気づいたことや感じた点があれば教えてください。 西脇将伍 道や周りの状況に合…

平野紗季子 ── 勝どきはケンタウロス

(7つの質問) 街とお店の「そこにしかない物語」 Q.1 勝どきの街歩きをご一緒させていただきましたが、この街に心惹かれた理由は何でしょうか? 古い時間と新しい時間が…

井上 聡 ── 沖縄・読谷村で拾った“スポークン・ワーズ”

“この沖縄そばをぜひ、みんなに食べてもらいたくて(笑)” 「この沖縄そばをぜひ、みんなに食べてもらいたくて(笑)。やちむん(焼き物)や琉球ガラスのお店もあるから…

井上 聡 ── 沖縄・読谷村の“まれびと”

(7つの質問)「まちを読む」ことは「人を読む」こと Q.1 読谷村へ移住した理由、心惹かれた点は? 僕自身、日系デンマーク人として生まれ育ってきて、白人社会の中で常…

From our Editors ── 二つとない地図を描く

止まることなんて想像もしていなかった「まちの機能」が停止した2020年3月 ──。COVID-19のパンデミックは、あらゆる生活様式を飲み込み、私たちが暮らす世界の様相を一変…

「目的のない言葉」を手放さないということ ── 歌人・伊藤 紺

「目的のない言葉」を手放さないということ ── 歌人・伊藤 紺

歌人・伊藤紺さんが短歌を書き始めたのは、大学4年生の元日でした。きっかけは、俵万智さんの『サラダ記念日』。突発的に手にした本に影響されて始めた“趣味”は、大学卒業や就職、フリーランスになっても続き、いつしか歌人として生きることになりました。

「しゃべるのは下手なんです。思っている強い気持ちを乗せるのに、なんだか短歌の枠(スタイル)がすごくハマって、ずっと書いていられました。散文だと自由なので、ゴ

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「生き物好き」のスタートアップから学ぶ、複雑な社会との向き合い方 ── 社会起業家・高倉葉太

「生き物好き」のスタートアップから学ぶ、複雑な社会との向き合い方 ── 社会起業家・高倉葉太

青い光が外に漏れ出すガラス張りのオフィス。奥に並ぶたくさんの巨大な水槽。そこには、サンゴ礁生態系や干潮と満潮を繰り返すマングローブの生態系、ゲンゴロウが生息する沼地などが再現されていました。さながら小さな水族館のような空間の主は、高倉葉太さんが代表を務めるサンゴ礁生態系の研究を中心とする環境移送ベンチャーのイノカです。

研究の中心にあるサンゴ礁は、“生命のゆりかご”とも呼ばれています。地球の全表

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“欲望“がデザインする、あたらしい漁業と食文化のかたち ── 仲買人・長谷川大樹

“欲望“がデザインする、あたらしい漁業と食文化のかたち ── 仲買人・長谷川大樹

魚の仲買人という職業は江戸時代に始まったといわれ、魚の鮮度を見分ける目利きとしての役割を担っています。大まかな仕事は、魚市場に持ち込まれた魚介類に値段をつけ、競りや入札を経て漁師たちから買い取り、飲食店や小売店に卸すこと。漁業という第一次産業と、飲食店・小売店という第三次産業を取り次ぎ、落札額にマージンを乗せて取引することで利益を得るのが一般的です。

神奈川県横須賀市にある長井漁港で、週の大半を

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From our Editors ── 「街のあたらしいつくりかた」をつくる

From our Editors ── 「街のあたらしいつくりかた」をつくる

誰のためのまちづくり?

まちづくりは誰のためのものでしょうか。

これまで、私たちNTT都市開発 デザイン戦略室のnoteを読んできてくれた方々はご存じかと思いますが、「NTT都市開発(NTT UD)」はデベロッパーと呼ばれる企業です。全国のさまざまな街で、まちづくりを進めてきました。あたらしい商業施設や駅前の開発は、人々の話題になることもあります。しかし、私たちはふと足を止めて考えます。目まぐ

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From our Editors ── 今この瞬間も誰かが街をつくっている

From our Editors ── 今この瞬間も誰かが街をつくっている

【まちの読み方 1】 “街の気配”に想いを馳せる

朝吹真理子さんがエッセイで綴ってくれた「かつて生きていた、名前もわからないひとたちの気配」を感じる体験。あるいは、井上聡さんが教えてくれた「沖縄戦の悲しい歴史が刻まれたガマ(洞窟)で遺骨収集に参加した移住者を、地元の人たちが仲間として迎え入れてくれた」というエピソード。

そうして街の歴史をたどり、文化を学びながら、その場所を形づくってきたものや

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Book Guide 3 ── 「まち」の、”まだ分配されていない”未来

Book Guide 3 ── 「まち」の、”まだ分配されていない”未来

『みんなが手話で話した島』 ノーラ・エレン・グロース 著 / 佐野正信 訳〈早川書房〉

20世紀初頭まで誰もがごく普通に手話を使って話していた ── アメリカ・ボストンの南にあるマーサズ・ヴィンヤード島の当時を知る人たちの証言を集めながらその島の社会文化を追った本書には、(音の届かないくらい)遠くの船乗りたち同士で手で会話をすることや、郵便局に集まり手話で話す際の身体の使い方など、〈言語からな

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ウーリツァの娘 ── 津久井五月

ウーリツァの娘 ── 津久井五月

 ユリア・ウリツカヤ。
 通りの真ん中に立って、わたしのもう一つの名を、小さく唱えてみる。山村優里亜ではなく、ユリア・ウリツカヤ。その音楽的な響きが少し勇気を与えてくれる。
 ウリツカヤというのは母の姓だ。わたしが行ったこともない国の、聴き取れも話せもしない言語体系の中にある、一つの名前だ。
 ここ東京では、わたしは山村であってウリツカヤではない。わたしがウリツカヤだったことは一度もない。それでも

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Book Guide 2 ── 「まち」は、オルタナティブを求めている

Book Guide 2 ── 「まち」は、オルタナティブを求めている

『第三次産業革命: 原発後の次代へ、経済・政治・教育をどう変えていくか』 ジェレミー・リフキン 著 / 田沢恭子 訳〈インターシフト〉

著者であるジェレミー・リフキンは経済学者として世界的に高い評価を受けています。副題のとおり、経済・政治・教育を変えていくためのヒントになる、興味深い本です。リフキンは特にこの数年、経済学の世界で最もインスピレーションを与えてくれる学者の一人で、中国やドイツ、EU

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道がおぼえていること ── 朝吹真理子

道がおぼえていること ── 朝吹真理子

 じぶんは忘れていても、道のほうが覚えていてくれることがたくさんある。通っていた小学校の手前の歩道橋をひさしぶりに登ったとき、十歳ごろの歩幅を急に思い出したことがあった。体の感覚と同時に地下鉄の排気口から吹いてくるなまあたたかいにおいを、大きな獣のため息のように思って嗅いでいたのも思い出す。歩道橋が残っていなかったら永遠に忘れていたかもしれない。
 道に流れている時間は、歴史を辿ったり、地質をたし

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Book Guide 1 ── 「まち」を、読み替える

Book Guide 1 ── 「まち」を、読み替える

『既にそこにあるもの』 大竹伸朗 著〈筑摩書房〉

始めから美を追求しては決して表れず、多分に偶然が絡む世界。〈そんな徹底して人間の行為に対峙した「美の領域」〉を、現代美術家の大竹伸朗氏は本書の中で「雑の領域」と定義する。その領域は〈この地球上にはいつの時代にもある一定量存在し、それはこれだけ人間に侵略しつくされた都市の中にも、堂々と人間の目の意識に幕を張りそこに在る様な気がする〉という。大竹氏は

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番匠カンナ/鈴木綜真/竹村泰紀 ── 都市を見つめる変化の兆し

番匠カンナ/鈴木綜真/竹村泰紀 ── 都市を見つめる変化の兆し

01 都市の隙間への巣食い、あるいは救い ── 番匠カンナ(バーチャル建築家)ギャル雑誌『egg』の編集長は、もう聖地はなくなったと言った。都市がより快適により洗練されるほど、熱は都市空間を求めなくなった。代わりに匿名掲示板、動画サイト、SNSが路上になり、現実の地名はカルチャーの表舞台から消えた。
この半壊した雑居ビルは、反計画とも呼べる空間の質を提供する。ここにある理想の隙間は、人間の熱を受け

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和田夏実/牧原依里/西脇将伍 ── 手話が街を”ハック”する

和田夏実/牧原依里/西脇将伍 ── 手話が街を”ハック”する

(7つの質問)手話の身体感覚で「まちを読む」試み
Q.1 手話をしながらの街歩きを通して、気づいたことや感じた点があれば教えてください。

西脇将伍 道や周りの状況に合わせて、身体の使い方が変わることに気づかされました。キャットストリートは人通りが多いけどクルマが少なくて道幅が広いから、手話をしながらでも歩きやすかった。

和田夏実 街を相手に「コンタクト・インプロビゼーション」(相手の身体や空間

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平野紗季子 ── 勝どきはケンタウロス

平野紗季子 ── 勝どきはケンタウロス

(7つの質問) 街とお店の「そこにしかない物語」
Q.1 勝どきの街歩きをご一緒させていただきましたが、この街に心惹かれた理由は何でしょうか?

古い時間と新しい時間が隣り合う場所を、歩いてまたぐことのできる街が好きなんです。リノベーション途中の旅館のような……ロビーは改装してピカピカなのに、別館へ足を踏み入れたら昭和そのものだった感じのような(笑)。ギリシア神話に出てくる半人半馬「ケンタウロス

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井上 聡 ── 沖縄・読谷村で拾った“スポークン・ワーズ”

井上 聡 ── 沖縄・読谷村で拾った“スポークン・ワーズ”

“この沖縄そばをぜひ、みんなに食べてもらいたくて(笑)”

「この沖縄そばをぜひ、みんなに食べてもらいたくて(笑)。やちむん(焼き物)や琉球ガラスのお店もあるから、観光客が楽しみながら地元作家たちの作品に触れられる、大切な接点になっていると思う」

“単に『好き』でもいい。エコでありエゴでもある”

「食品といえば、デンマークはオーガクニック食品でも世界をリードしているんだ。日本は認証こそ厳しいけ

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井上 聡 ── 沖縄・読谷村の“まれびと”

井上 聡 ── 沖縄・読谷村の“まれびと”

(7つの質問)「まちを読む」ことは「人を読む」こと
Q.1 読谷村へ移住した理由、心惹かれた点は?

僕自身、日系デンマーク人として生まれ育ってきて、白人社会の中で常にフラストレーションを抱えてきたから、いずれ家族と一緒に海外に住みたい、だったらスペインのバレンシアがいいなと考えていたんだ。でもコロナ禍でスペイン政府の対応がスムーズじゃなくて、諦めざるを得なかった。その時に娘が「日本の高校に行っ

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From our Editors ── 二つとない地図を描く

From our Editors ── 二つとない地図を描く

止まることなんて想像もしていなかった「まちの機能」が停止した2020年3月 ──。COVID-19のパンデミックは、あらゆる生活様式を飲み込み、私たちが暮らす世界の様相を一変させました。

もちろん、ネガティブな変化は数知れず。しかし、私たちは引き換えに、新たな街の「読み解き方」を手にしたともいえるかもしれません。

例えば、今まで素通りしていた路地に足を踏み入れたり、「もう都会にいる意味ってない

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