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家具の物語

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工房へ届く修復される家具たちの物語。同じものがひとつもないアンティーク家具の世界は深い!
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#バルセロナ

家具が家具を呼ぶ

工房をオープンしてしばらくして気がついたんですけど
どうやら家具は家具を呼ぶらしい。
しかも同類を。笑

今年の夏でオープンから3年経って
今4年目ですけど

なんかね、ヤツらテレパシー交信してるんですよ。笑

例えば、キャビネットの修復の仕事がひとつ入ると、そっから
いらないキャビネット譲るわ、
とか
おじいちゃんのキャビネットペイントして使いたいの、
とかまそのペイントをみて娘さんも、
とか

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心震える時計の修復

心震える時計の修復

しばらく時計ブームが来ていて時計の修復が続いていた時の話。

工房へ問い合わせに現れたのは私よりちょっと若いくらいの女性。
古い時計を使い続けたいので修復をお願いしたい、と。

後日、旦那様が時計を持ってきて
実はこの時計、奥様の亡くなったお父様が愛用していたものなんです、と。
急なことだったようです。
奥様自身からエピソードが出てこなかったことがなんだか切ない。
お父様の身の回りのものを整理して

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籐でトゥネット・編み始める歓び

籐でトゥネット・編み始める歓び

籐で編まれた椅子の座面、時には背もたれや家具のドアにも使われますが。
こちらを手編みする技術を習得すべく
アカデミーの籐技術コースを申し込みました。

技術を学ぶことになったいきさつはこちら↓

これまで修復の技術はアカデミーの短期コースには行ったことがあるけれど、
ほぼすべて師匠・フリアの工房で実際のオーダーを通して学んで来ました。
大学のような場所で学位を出されるような職業ではないし
実際のニ

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トウのトゥネットに挑戦!

トウのトゥネットに挑戦!

曲木の椅子メーカー・トーネットの椅子は籐の座面がほとんどですが、これ痛むと直すの大変です。

曲木技術の椅子、トーネットやJJ・Kornの詳しいお話はこちら。

手作業で直せる人がどんどん減っているためです。
時間も手間もかかる作業なので経済的に割に合わない仕事になりがち。

最近では既に編み込まれて布のようになって売られているものを太めの籐ではめ込む形のものが主流です。でも本来オリジナルのスタイ

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停電したシャッター

停電したシャッター

久しぶりに工房日記らしい話です。

クリスマス休暇が始まった初日。
工房へ行くと
仕事熱心な角の肉屋のおっちゃんが外でタバコ吸ってる。
手前のカフェもなんか変。
バイク屋のチャビィが
「電気ないよ」って

ええぇ!?

停電!?

工房の前まで行くと隣のカーテン屋のおじさんがトウセンボして
「通行料金いただきます」
とか、また古典芸能なギャグをかましてきた。
「停電してるの?」って聞くと
「停電、

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アルメリアへ800km運んだガラスショーケース

アルメリアへ800km運んだガラスショーケース

また回帰録。
一昨年の夏の話。2021年。
ガラスショーケースはもっと遡って2017年くらいから始まるお話。

ボロボロで、飾りが欠けていたり、
引き出しの鍵がかかったままで開かなかったり、と
工房オープンより3年前、修復活動を再開した当時、なんだかハードルが高そうでなかなか手が出なかったショーケースです。

しかしながらガラスが完璧だったし虫喰いもそんなにひどくない。
マホガニーではないけれどマ

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60個のボタンに込めた姉妹愛

60個のボタンに込めた姉妹愛

ウベコ工房が気に入ってるアイデアの中に、縮緬端切れで作ったくるみボタンがあります。

チェスター風に椅子を張ったりする時のボタンにしようと思いつき、デニム地にこの色華やかなくるみボタンを合わせてみたりしてます。

ちりめんくるみボタンでデニム張ったチェアのエピソードはこちら↓

その時に余った素材で小さな額を作り、サンプル感覚で店に飾ってあります。

ある日、それを見たお客様が飛び込んできて、

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ルイス 神父のようなシンプソンズのような・・1824年 教会のキャビネット

ルイス 神父のようなシンプソンズのような・・1824年 教会のキャビネット

工房オープン時から1年が経ちましたが、すっかりリピーターになってくれたおじいちゃんがいます。
名前はルイス。
シンプソンズのバーンズ社長にちょっと似てる髪型と猫背で、
でも背が高くてバーンズ社長に足りない善人の部分だけでできたような人柄です。
70歳か80歳に近いかな、、と言う感じのおじいちゃんです。

最初は気に入っている椅子の虫喰い処理でした。
長い間悩まされていて、「自分で処理してもまた出て

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初仕事・ベビーベッド

初仕事・ベビーベッド

我が工房TallerUBEKOの記念すべき最初のお客様のお話です。

オープンする前からいろんな人が訪ねてきてくれましたが
正式に仕事を依頼してくれた初めてのお客様は
中学校で音楽の先生をしているモンセでした。

パッと見た時、あ、この人知ってる、って思ったくらい
わたしの親戚のおばさんに似ています。
日本人とスペイン人でも
あ、似てるって思う人いるんです。

親戚のおばさんは白髪混じりのショート

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馬の毛の上で眠る王様と祈りの椅子prie-dieu

馬の毛の上で眠る王様と祈りの椅子prie-dieu

今日は教会で祈る人がいる国ならではの家具の話。

教会へ行くと、長椅子に座ってミサを聞きますが、
前の長椅子の背の部分に、聖書を置いたり膝まづいてお祈りするときに肘を支える幅の狭いテーブルのような台が付いています。
そして前の長椅子の脚の部分から膝をつくための台も付いています。

この肘を置く場所と膝をつく場所をおひとり様用にまとめた椅子がReclinatorio、
フランス語でPrie-dieu

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