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#ミニコミ新聞
フリーライターはビジネス書を読まない(46)
試食品ドロボー惣菜売り場で試食品の出し方は、商品によって異なる。
サラダとかマリネは小さなカップに小分けして、使い捨てのスプーンかフォークをつける。トンカツや唐揚げなどの揚げ物は、小さく切って皿に乗せ、横に爪楊枝を置いておく。お客さんは自分で爪楊枝に刺して、味見をするというわけだ。
あくまで試食だから、1人1カップもしくは1カケラと考えるのが道理だろう。でも「タダで食える」と、前回みたいに、わざ
フリーライターはビジネス書を読まない(45)
スーパーの店員はこうして常連さんを憶える畑中の私家版を降りた後も、午前はスーパーでバイト、午後は原稿書きという生活を続けていた。生活費が減った繋ぎに、ほんの2~3カ月で辞めるつもりだったのに、気が付けば半年が過ぎ、年末年始の段取りをする時季に差しかかっていた。
すっかり仕事にも慣れ、あとから入ってきたバイトやパートのおばちゃんに仕事の段取りを教える立場としてチーフから頼りにもされ、なかなか辞めづら
フリーライターはビジネス書を読まない(42)
バイトが出勤してこないミニコミ新聞で一緒に外部ライターをやっていた相澤から誘われて、固定収入が魅力で始めたスーパーでのバイトも、気が付けば1か月が過ぎていた。周りの雰囲気にも慣れ、作業の流れも呑みこんで、パートのおばちゃん連中を敵にまわすことなく平穏に過ぎていた。
そんなある日、出勤日がよく一緒になる20歳のフリーターが、始業時間になっても出勤してこなかった。
彼は口数は少ないが仕事ぶりはまじめ
フリーライターはビジネス書を読まない(41)
スーパーで売られている惣菜の正体1週間くらい通ったら、まわりの様子が見えてきた。
惣菜売り場でもフライ担当と寿司担当がはっきり分かれていること、寿司以外は揚げ物はもちろんサラダや弁当などすべてフライ担当の仕事になっていること、寿司担当のおばちゃんたちは一見和気あいあいやっているように見えて、じつは足の引っ張り合いが凄まじいことなど。
もっとも、おばちゃんたちの派閥争いに巻き込まれたらロクなことに
フリーライターはビジネス書を読まない(40)
スーパーマーケットの裏側面接に通って、私が配属されたのは惣菜売り場だった。
初出勤の日、作業服と長靴を支給するからといわれていたので、指示された通り事務所に顔を出した。その場で、半そでの作業服2着と新品の白い長靴を1足受け取った。
「長袖は後日お渡しします」と、事務所のおばちゃんにいわれた。このおばちゃんもパートタイムで働いていて、ほかに1人正社員の若い女の子が事務所に詰めている。事務所のいちばん
フリーライターはビジネス書を読まない(38)
久々に相澤から連絡が来た1面の記事をシリーズ化して同じテーマを追いかける連載にしたことのメリットは、毎月新しいネタを考える手間が省けることと、数本分の取材を同じスケジュールで行えるようになるから、制作作業にも余裕ができることだ。
それでもギャラが大幅に増えるわけではないから、新規案件の獲得やクライアントの開拓も並行してやっていた。
そんな日々を送りながら1年ほど経ったある日、相澤から電話がかかっ
フリーライターはビジネス書を読まない(37)
置手紙を残して……「相澤さん、どこにいるか分かりませんか?」
居戸がすがるような目で見てくる。
訊かれても困る。ふだんは完全に別行動だし、頻繁に連絡を取り合っているわけでもない。
「アカン、出て来んわ」
社長が戻ってきた。びっしょりかいた汗を、いつも粗品で配っているタオルで拭きながら「相澤の自宅まで行ってみたけど、インターホン鳴らしても反応がないんや」といって、入り口からいちばん近い椅子にドスン
フリーライターはビジネス書を読まない(36)
相澤が消えた……ミニコミ新聞で書くようになって、数カ月が過ぎた。私は月に記事広告を2本と単発のインタビュー記事を1本書くのが固定になっていて、ほかゲリラ的に発生する記事があったら、それも書くことになっていた。
相澤はこれまでと変わらず、全体のレイアウトと1面の記事を担当していた。だが、レイアウトも記事も、いつも締め切り間際に滑り込みが続いていた。相澤のレイアウトが上がってこないと、デザイナーの仕
フリーライターはビジネス書を読まない(35)
ミニコミ新聞の制作現場その夜、相澤と名乗る女性から電話がかかってきた。昼間訪ねたミニコミ新聞のライターだ。社長から番号を聞いて、さっそく挨拶がてらかけてきてくれたのだった。
話を聞いてみると、相澤は私と同い年で、しかも独身という境遇も同じ。ただこのときは電話で話しただけの感じとはいえ、ちょっとせっかちで落ち着きのない性格じゃないかなという印象を受けた。しかも、よくしゃべる。言葉に切れ目がなく、こ