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フリーライターはビジネス書を読まない(42)

バイトが出勤してこない

ミニコミ新聞で一緒に外部ライターをやっていた相澤から誘われて、固定収入が魅力で始めたスーパーでのバイトも、気が付けば1か月が過ぎていた。周りの雰囲気にも慣れ、作業の流れも呑みこんで、パートのおばちゃん連中を敵にまわすことなく平穏に過ぎていた。

そんなある日、出勤日がよく一緒になる20歳のフリーターが、始業時間になっても出勤してこなかった。
彼は口数は少ないが仕事ぶりはまじめで、私が初日にパック詰めの手際よさに感心したのは、彼の仕事だった。

チーフが自宅に電話をかけてみたが、誰も出ないという。仕方がないのでその日は、彼がいつもやっている揚げ物のパック詰めを私がやることになった。もっとも、私のいつもの作業、ほうれん草の胡麻和えとかポテトサラダ、10種類もある弁当を10パックずつつくる、その他揚げ物以外の作業も並行してやらないといけないから、めちゃくちゃ忙しい。
とくに1パック当たりの重量が決まっていて値段が固定している商品は、パック詰めに少々時間がかかる。

例えばトリの唐揚げは、120グラムで298円の値段が付いている。もし120グラムより少なかったらクレームの原因になる。意地の悪いお客さんだと、自宅に持ち帰ってから計りなおすのだそうだ。だから、わざわざ少し多めにパック詰めすることが、暗黙の了解になっていた。

そういう商品がある一方で、エビのチリソース煮とか肉団子、ミンチカツなどは決められた個数を数えてパック詰めするだけ。さらに「適量」という商品もあって、重量当たりで値段をつける商品は、多くもなく少なくもないように目分量でパック詰めすればいいから、楽に手早く作業できた。

フリーター君は結局、数日間にわたって姿を消したまま、自然消滅で退職という扱いになった。
そうなると、作業割が正式に組み替えられた。私は揚げ物のパック詰めをやることになり、寿司の担当から応援を1人もらって、私がやっていた作業を引き継いでもらった。バイトの募集をかけることになって、新しいバイトが決まり次第、寿司担当からの応援は元に戻ってもらうことになっていた。

バイトのほうでアクシデントに見舞われながら、本業のライター業では新規でオファーがあった。
宴会コンパニオンの派遣をやっているプロダクションの女性経営者が「自伝を出すから、原稿をお願いしたい」と、出版社も制作会社も通さず直接連絡してきた。
私のバイトは午前中で終わるので、午後から時間をとってもらって、詳しい話を聞きに行くことになった。

(つづく)

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