見出し画像

フリーライターはビジネス書を読まない(38)

久々に相澤から連絡が来た

1面の記事をシリーズ化して同じテーマを追いかける連載にしたことのメリットは、毎月新しいネタを考える手間が省けることと、数本分の取材を同じスケジュールで行えるようになるから、制作作業にも余裕ができることだ。
それでもギャラが大幅に増えるわけではないから、新規案件の獲得やクライアントの開拓も並行してやっていた。

そんな日々を送りながら1年ほど経ったある日、相澤から電話がかかってきた。1面記事に穴をあけて失踪して以来、約1年ぶりだ。もっとも、その年の正月に年賀状が届いていたから、まだ同じ区内に住んでいることは知っていた。
相澤はミニコミ新聞へは謝るつもりはないけれど、私へは申し訳ないことをしたといった。今どうしているのかと尋ねると、この夏にオープンしたスーパーでバイトしているという。
じつは電話の用件がそのことで、人手が足りないから一緒にやらないかというお誘いだった。

「週一からでもできるし、仕事のない日に来るようにしたら、ちょっとでも固定収入になるから助かるよ」という。
その通りだが、バイトとはいえいったんシフトが決まったら、急な変更がしづらいだろう。「明日、取材行ってくれますか」というオファーが少なくないのだ。
「そこは、前もって話をしておけば、聞いてくれる雰囲気はある」という。
たしかに、わずかでも固定収入は魅力だ。店の場所は、我が家から自転車で15分くらいの距離だった。
「ちょっと考えさせて」といって電話を切った。

相澤から電話があったことは、ミニコミ新聞の社長はもちろん社長の娘と同級生たちにはいわなかった。
ということは、相澤の誘いを受けたら、ミニコミ新聞の取材日時を決めるときも、勤務シフトとかぶらないように調整しないといけないのか。
これは、かなりめんどくさいな。

相澤の知り合いで、コンビニでバイトしているカメラマンもいると聞いたことがある。仕事のスケジュールを調整して、ヒマな時間をなるべくまとめる。その時間をバイトに充てれば効率的なのだそうだ。

家賃だけでも稼げたら、ずいぶん楽になる。
ためしに2~3カ月やってみようか。スーパーの裏側をじっくり見られる機会だし、後々なにかのネタにできるかもしれない。

相澤に連絡すると、店の次長に話を通しておくといった。そして面接日が決まって、私は久々に履歴書を書いた。

(つづく)

―――――――――――――――――――――――――――

◆最近の記事/まいどなニュース

知っていますか「模擬原爆」のこと…広島・長崎の前に、日本各地で投下訓練 大阪に今も残る被害の跡

列車の座席予約で→「アメリカ、ボストン、チャイナ、OKです」って何のこと? <旅行会社編>

きょうの運行は→「イチエム」「エムツー」「MMG」!?「ヨコ乗り」もあるよ…<バス業界編>

「この温泉には『ワニ』が出ます」「ワニ対策にお水をお持ちください」…!?<銭湯・温泉編>

◆電子出版

ガードマンあるある日記

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?