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2019年11月の記事一覧
バッティングセンター
身体は嘘をつかない。
年齢に勝てないという事実が
打席の後ろにあるキャッチマットに
軟球がぶつかる音によって自覚的になる。
あの頃、当たり前に打っていた
速度のボールが当たらない。
気を取り直して、構える。
マシンから放たれる山なりの
ボールを見据え、コースを読む。
ここだ。バットを振り出す。
イメージでは真芯に当たり
勢いよく飛んでいくはずだった。
でも現実はあまりにも残酷だ。
弱々しい打球が転
休日の日差しは優しくて
日曜日の昼下がり、駅前は賑やかな声が響く。
深夜には聞こえない子ども達の
明るく無邪気な高音が聴覚を刺激する。
いつも見ているはずの風景なのに
なんだか普段とは色が違う。
「ねぇ、何食べる?」
僕の横を歩く彼女が不意に言う。
「そうだな……何食べたい?」
質問に対して質問で返すあたり
女性、いや人との関わりに
難ありだなと自嘲してしまう。
「質問に質問で返さないでよ」
至極当然な返しに、苦笑いを浮
放課後の夕暮れは優しくて
学校の雰囲気が少し変わりつつあった。
大学受験や就職活動などによって
染められていく雰囲気は少し殺伐としている。
部活も引退しちゃったし、文化祭も終わった。
今までの時間で注いでいた力が
宙に浮いてしまって埋めるために
バイトに精を出す友達もいたけれど少数派だった。
多くは将来の為に、勉強をするようになった。
学校と予備校と自宅のトライアングルの中心で
息苦しい生活を余儀なくされた。
放課後のチャ
夏休みの終わり、彼はいなくなった
「Kが自殺した」
そのメッセージがクラスに流れたのは
夏休みが終わる9月2日の夜だった。
あまりに突然のことで部屋の椅子の上で
全ての回路が止まってしまったように
僕は何もできずに、ただ座っていた。
送信相手に確認のメッセージを送ることで
精一杯だった。でも涙の一つも出てこない。
恐ろしく感情が乏しいのだろうか。
それとも現実を受け入れられないのか。
正直、この瞬間は分からなかった。
ただ大事な友