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#048.一番最初にすべきこと(ウォームアップ)その1


一番最初に何をしていますか?

レッスンで「毎回の練習時、最初の音出し(ウォームアップ)はどんなことをしていますか?」とお聞きすると、多くの方はマウスピースで音を出す、低い音を伸ばす、音階を吹いてみるとおっしゃいます。

マウスピースで音を出すとか、低音域を出すなど具体的な方法を答えてくださった方に、なぜそうしているのかを質問すると、習っている先生や部活の先輩に「それをやりなさい」「みんなやってるから」と言われた、雑誌やネットで情報を得た、誰かから「それが良いらしいよ」と聞いたからなど、情報源はいろいろです。
しかし、それを行う理由や意味などを質問すると、明確に答えられる方はとても少ないです。

「方法」の情報だけでなく「理由」や「原理」「根拠」がセットになっていることが大切です。

原理を明確にする

では、ウォームアップの目的を考えてみましょう。自分の言い回しですがウォームアップは「自分の持っている実力を最大限に発揮するため」に行うことです。そして一番最初にすべきことは、「最低限の要素で音を発生させること」。したがって「最低限の要素」とは具体的に何かを明確にしておく必要があります。

不要なものを一切持ち込まず、『音が発生する原理』に基づき、その目的を達成するために必要な体の部分を最低限に使う。超低燃費状態のスタートが目的です。

この考え方はウォームアップに限ったことではなく、スキル(テクニック)を手に入れる時や、クオリティを上げる時にも同様に鍵になります。

例えば、タンギングのクオリティを上げるにはどうしたらよいでしょうか。まず考えたいのは「タンギングとは何か」です。本題とずれてしまうので簡単に書きますが、タンギングとは「空気の流れの遮断と開放」「空気圧のコントロール」です。タンギングは音の出だしを明確にすることが表向きな目的です。そのため、破裂音(子音)を発生させることが最も一般的です。では破裂音はどこでどのようにして発生させるのか。必要な部分や要素とは何かを明確にするわけです。
タンギングをハッキリさせたいから舌に力を入れても、かえって不明瞭で不安定な音しか出せません。

できないことは不足しているから?

ハッキリしたタンギングをしたいからと舌や体に力を込めても変なピッチの爆発音が出たり、持続できない状態になったりと散々です。しかし、人間の思考のひとつに、できないことがあると「不足している」と捉える傾向があります。確かにそういった場面は世の中に多いです。重いものが持てなければ力が足りないと思うでしょうし、成績が悪ければ勉強量が足りないと考えるでしょう。

しかしトランペットの場合は足せば足すほど求めている結果から遠のいていくことがほとんどです。そこで最初にお話しした「最低限の要素」とそのバランスを見つけることが大切になるのです。

レールの上に車両を乗せる

ウォームアップに話を戻します。

私はウォームアップについて、このように例えることが多いです。

「レールの上にきちんと車両を乗せる行為」

もしも電車がレールの上に正しく乗っていなかったら、当然進むことができません。それでもなお進ませようとするなら、本来必要のない力が必要になりますし、近い将来脱線する可能性もあります。この状態が良い結果につながるとは到底思えません。

一方で、丁寧にきちんとレールに乗せることさえ成功すれば、その後はとてもスムーズにいくつもの目的地に向かうことができます。

レールに車両を乗せるために必要な行為は、そう複雑なものではありません。大切なのは正しい理論、明確な目的、シンプルで最低限の体の使い方と頭の中にある音楽です。

次回の記事では、ウォームアップの最初に何をすべきか、具体的に解説してまいりますので、引き続きご覧ください。

ということで今回はここまで。
それではまた次回!


荻原明(おぎわらあきら)

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荻原明(おぎわらあきら):トランペット
荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。