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ショートの小部屋

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#猫

野良猫と私

私は人間

目の前の野良猫に餌を与えている

可愛そうに

お腹を空かせて鳴いていた

人間に生まれた私

そして

野良猫に生まれたお前

お気に入りの服を着て

ご飯をお腹一杯食べて

好きな音楽を聴いて

何不自由無く暮らしている私と

お腹を空かせ

道ばたで鳴いているお前

時には心無い人間に石を投げられ

冬の冷たい雨に震え

短い生涯を終えるお前

朝早くから夜遅くまで働き

下げた

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蜘蛛の糸

その糸に絡め取られた私は

逃れようと必死にもがいた

だがまとわり付く糸は

さらに体の自由を奪ってゆく

私の体の数倍はあろうかというほどの

巨大な蜘蛛がゆっくりと近づいてくる

私はとうとう動けなくなり

観念して目を閉じた

そんな時現れたのは

私を襲おうとしている蜘蛛の

何倍も大きなカラスだった

カラスは蜘蛛を飲み込み

さらに私を飲み込もうとした

そこへやって来たのは

私の

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新政府

誰がこの国を治めても

国民の暮らしは少しも良くならない

それで新しい政府が出来た

動物たちの

動物たちによる

動物たちのための政治

総理大臣

いぬ

決して嘘をつかない

官房長官

ねこ

みんなの心を癒す

外務大臣

くま

近隣諸国からなめられない

文部大臣

いるか

頭良さそう

そして

人間も動物の仲間だと認めよう

そんな

動物たちの寛大な計らいで新設された

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案山子

僕は案山子

一本足の案山子

僕の役目は

カラスなどの害鳥が

作物を荒らすのを防ぐこと

でもカラスたちは頭が良くて

僕が一歩も動けない事を良く知っている

だから彼らは僕の側までやって来て

僕の目の前で作物をついばんでゆく

僕を作った人間たちは

僕の事を能無しの役立たずと罵る

そしていつしか

僕とカラスたちは友だちになった

僕はいつも彼らが来るのを待つ

そしておしゃべりをし

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日差し

強い日ざしが照りつけている

また夏がやってくる

僕は暑さには強い

でも今の僕にはそんな事は関係ない

僕は眩しさに顔をしかめる

したたる汗が僕の目に流れ込む

太陽の直径はおよそ

139万キロメートル

それに対して地球の直径は

わずか1万2千キロメートル

そしてその距離は

1億5千万キロメートル

そして

約100メートル

それが今の僕と太陽との距離

いくら暑さに強い僕でも

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