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とある農協の渉外

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#外回り

靴ずみを使わない。固く絞った布で拭く

仕事で服装と身だしなみは口を酸っぱくして言われる。

スーツで回るから、革靴を履いている。

革靴はいつも磨いておくのが常識だけれど、農協の外回りは、田んぼや畑の畔を歩くことも多い。

最初の頃は、手のひらサイズのスポンジの靴磨きを常備して磨いていた。

でも、ピカピカになっているのは磨いた直後だけ。

ワックスの水分なのか、それとも静電気とかなのか、原因は分からないけど直ぐに革靴の表面がホコリま

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髪は染めるべき

小学生の頃から白髪混じりだった。

髪型もだいだい短髪で、スポーツ刈りだった。

集金先の金井ダイカストで働いている砂原広さんは、30歳独身の方で、本人曰く、「合コンのプロ」だそうだ。

金井さんは支店の地区外にお住まいだけど、仕事場の「金井ダイカスト」が僕の担当地区内にあるため、いつもこちらでの集金。

職場で積み立て貯金をしてくれているお客さんも多い。

自動車整備工場とか幼稚園とか出張所とか

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手洗い後は水けを拭き取らないと荒れる

乾燥する季節、夜の外回りは風が吹いていれば、寒さも感じる。

支店に戻るたび、手洗いをする。

手を振って水を切って、おしまい。

そんなことを繰り返していた。

真冬でもないのにアカギレになった。

庄田係長が

「江藤、おまえ 手を洗った後にちゃんと拭いてないだろ」

と、図星を刺された。

どうしても、他の人が手を拭いたタオルで、自分の手を拭くことに抵抗がある。

でも、この手のコンディショ

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営業本の読書も気分転換になる。

手帳は2冊持ちなさいという本を読んだ。

手帳を2冊持ってみた。

お客さんとの約束を一方にしか書かなかったりして、約束が被ってしまったり、約束をうっかり忘れてしまったりと、謝罪が増えた。

持ち歩く荷物も増えて、余計な仕事も増えて、ストレスも増えてしまった。

僕は、1冊がキャパシティ(容量)の限界みたいだ。

内向型営業マンの売り方にはコツがあるという本を読んだとき、たびたび目にした言葉、「あ

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時間が有ればお茶を飲んで話す

まさか1時間もお話しに捕まるとは思わなかった。

林出ひさえさんの家に年金友の会のグランドゴルフ大会の手紙を届けて、用件は直ぐに終わった。

けど、次の時間での約束は無かったから、出してもらった冷たいお茶をいただきながら、昔の農協のお話を聞いていた。

最近は日帰りの行事じゃないと参加者は少ないけれど、平成の一桁くらいまでの頃(小山支店長さんの頃と言っていたからその頃)は、農協の旅行はバスで2台か

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住宅ローンのお客様の新築完成で、写真

農協の住宅ローンは、大手の都市銀行で審査が通らなかった人が、他にもいくつか金融機関を回って、終盤に行きつくところ。と、以前は言われることがあったそうだ。

今は、インターネットで金利の比較をして、ネットバンク以外で、近所にある金融機関で金利の低い所を探すお客様が、農協の住宅ローン商品を見つけて相談に来店され、借り入れ申し込みをされることが多い。

一番低い金利を、お客様は希望される。

その代わり

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お子さんに冗談は禁句。マイナスしか生じない

いつも午後5時以降のご集金の原木宣隆さんの家は、4人家族。

ご主人は1度しかお会いしてないけれど、普段のお取引先の年代層から比べると1世代は若い。

30歳半ばくらいか、40歳くらい。やや細身で、お会いしたときは表情はかたい感じだった。

奥さんは30そこそこの歳で、いつも明るく応対してくれて、貯金のキャンペーンとかの話しも気にしてくれている。

パートを終えて帰ってくる時間が夕方5時くらいだか

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健康診断書の写真撮影

42歳の鹿山信夫さんの養老生命共済の満期が来た。

幸いなことに、今まで入院共済金や手術共済金を請求したのは虫垂炎と骨折だけで、現在はいたって健康な方だ。

元農協理事のお父さん、定信さんが掛けた共済だった。

ほとんど営業も掛けない内に、すんなり、次の共済に加入していただけることになった。

健康状態に問題が無いお客さんには、終身共済の1型や1.5型くらいのタイプで、それに医療共済の日額5,00

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ズボンのポッケにサイフはマズイ

「江藤さんって、サイフっていつも、ケツのポケットに入れてるんですか?」

運転しながら、オンアード桜の町田さんが言った。

もともとはスーツのメーカーだったオンアード桜という会社は、農協と提携している。

初期に比べ、宝石の取扱いが多くなり、現在は指輪やネックレス、ピアスなどのジュエリーのブランドが有名になっている。

宝石の営業マン、町田さんと、今日は2人で訪問営業をしている。

町田さんの営業

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小学生に負けてる。ハンカチ携帯の習慣化

「農協さんは信金さんと違って、バイクじゃなくて車だから、エアコンが効いてるから良かったなぁ?」

白髪のスポーツ刈りで、濃い緑色のTシャツにステテコっぽいズボンを履いた金渕喜三郎さんは、玄関にあぐらをかいて座り、僕の集金の作業が終わるのを見ながら言った。

「それが、支店から近い所を回ってますんで、エアコンが効いてくる前に、すぐ止まっちゃうんですよ。だから、営業車に乗ると中はサウナ状態です(苦笑)

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初対面の犬は手の甲、猫は指先、馬は?

多呂精支店は北と南にそれぞれ川が流れている。

南の小喜良川(こきらがわ)は数百メートルは川幅があり、土手周辺の平地も広い。

その広い敷地に、ハンプティ牧場がある。

牧場と言っても、学校の校庭くらいの広さ。

そこにいるのは、馬だ。

いつも4~5頭くらいを見かける。

集金に伺うタイミングによって、柵の中を悠々と闊歩していたり、馬屋に入ってしまっていたりする。

ハンプティ牧場は観光として、

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「営業車のオイル交換いつした?」

来週、監査課が回ってくるらしい。

渉外は、日報と組織のファイルだけ、前もって準備する。

受取書や証憑綴り(ショウヒョウツヅリ)とか、融資や共済、経済関連の書類は、窓口職員と役席が当日に合わせて徐々にチェックしながら揃えていく。

監査は、「外部の監査」と「内部の監査」の2タイプある。

同じ農協の職員で構成される監査課が行うものと、うちの農協以外の組織(連合会や金融庁とか)の外部から来た人たち

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ちょっと聞いてもいい?扇風機が

農協の外回りは平日。

大体が平日で、共済の提案・契約とか相続対応とかの休日出勤は渉外次第。

平日の日中に訪問する先は、自営業のお客さんを除いてはほとんど高齢者の方だ。

大久保ときさんはご主人の清さんと2人暮らしだったけど、去年あたりからご主人が入院してしまっていて、今は一人暮らしの状態だそうだ。

ご夫婦それぞれのお名前で定期積金(通称:定積/ていつみ)を毎月掛けてもらっていて、今月も2人分

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提案書は生ものだから、すぐ持っていけ

JAバンクの商品案内はチラシやリーフレットで十分に足りる。

だけど、JA共済の商品案内は、オススメするお客さんの性別や年齢で掛金が変わるし、保障内容も特約を含めて金額を細かく設定する必要がある。

だから、保障設計書っていう提案書を一人一人、さらに金額違いでそれぞれ複数の冊子を作って持っていく。

共済の保障設計書は、作成した日付が自動印字される。

おススメしに行ったけど、お客さんが留守だった

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