マガジンのカバー画像

読書暮らし

94
本を読んで、暮らしています📚
運営しているクリエイター

#毎日更新

短編びいき

最近、短編集がすきです。

前は長ければ長いほどいいじゃんって思って分厚い本ばかりを探していました。

そのほうがより世界感が構築されているし、登場人物に感情移入できるから。

だけど、このところは短いなかでも頭の中に情景が浮かんで、結末まできちんと持っていけるのってすごい……!!と今更ながらに思うようになったのです。

まだまだいろいろなお気に入りを探して読む日々だけど、最近のいちばんよかったの

もっとみる
そこはあたたかくてほっとする場所/『古道具 中野商店』

そこはあたたかくてほっとする場所/『古道具 中野商店』

岡山県を訪れたときに古道具屋さんを見つけた。

骨董屋さんと古道具屋さんの違いはわからないけど、どことなくくすんだモヤのかかったような店内や、黄ばんだ古い本独特の香りが妙に懐かしくて落ち着く店。

店内では、店員さんたちが売り物でもあるソファーに腰掛けて雑談をしていた。サボってる、という感じではなく、どこまでもラフな感じでなんだかそのゆるい空気感も相まって、心置きなく品物を手にとっては見ては歩いた

もっとみる
河のほとりで

河のほとりで

一度「だいすき」って思うと、結構一途になっちゃうタイプだ。

こまめに情報はチェックするし、舞台になった場所や登場アイテムも検索するし、自分であれこれ考えるだけじゃなくて、他の人も感想も気になるし、ハマりたての少しずつ自分のなかに愛したコンテンツの知見が貯まってゆくのが何より嬉しくて、好きになったらとことんの気質でよかったなあと思う。

もう完結してしまったものをあとから知って、ぜんぶ溢れていると

もっとみる

わたしと柚木麻子さん

料理が出てきてとびきり元気が出る本で何かおすすめあるかな?と聞かれたときに絶対に名前をあげる本があります。

柚木麻子さんの『ランチのアッコちゃん』。

ビタミン小説とも呼ばれるくらい読後には元気になれるこの小説は、わたしが初めて柚木麻子さんの作品に触れた出合いの物語でもありました。

【あらすじ】
屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれ

もっとみる
大人になんかなりたくない/ピーター・パン

大人になんかなりたくない/ピーター・パン

ちゃんと見たのはいつが最後だったかもう覚えていないけど、なんて夢のある話なんだろうとわくわくしたことは覚えている。

夜中に突然大人にならない少年とキラキラ光るきれいな妖精が訪れて、そのまま夢の島に空を飛んで連れて行ってくれる。

インディアンと一緒に踊ったり、ご飯を食べたり、みんなで毎日おしゃべりして、海賊はちょっとこわいけど、ひたすらに楽しそう。

最後は危ない目にも逢うけど、必ずピーターパン

もっとみる
自分を見るための方法は/『男ともだち』

自分を見るための方法は/『男ともだち』

フリーランスという形態で働いていると「すごいね」「強いね」と言われることが多い。

言われたことのない人はむしろいるのだろうか、と思うレベルで周りの人たちも経験があると言う。

何時に起きてもいい。満員電車に乗らなくてもいい。ふらりと旅に出たっていい。すっぴんパジャマのメガネスタイルだって何にも言われない。仕事さえしていれば。

なりたい、と熱望してなったフリーランスではないけれど、それでも選んだ

もっとみる
余韻に浸っていたくなる恋愛/『センセイの鞄』

余韻に浸っていたくなる恋愛/『センセイの鞄』

こんな恋愛がいつかできるのならば、大人になるのも悪くないなって思いました。

不器用で意地っ張りだから、出会ってすぐに恋に落ちて…なんてうまくはいかないけど、一緒にいることがすごく自然でどうしようもなく安らぐ。

そんなひとにもし出会えるのなら「大人の恋愛」も悪くないのかもしれないなって思います。

川上弘美さんの『センセイの鞄』を読みました。

【あらすじ】
駅前の居酒屋で高校の恩師・松本春綱先

もっとみる
まるで舞台を観ていたような、/『メルカトル』

まるで舞台を観ていたような、/『メルカトル』

京都を訪れたときのこと、1週間ほど滞在していたこともあって早々に手持ちの本を読み終えてしまったわたしは本屋を見かけるたびにふらりと入っては物色していた。

そこで見つけたのが『メルカトル』(長野まゆみ)だ。

絵本のようなイラストと「地図収集館」なる場所で働く主人公に惹かれて、よくあらすじも読まずにレジに向かったのだけど、読み終わってから「これは手元に置いておきたい本だったな」と思えたので出合い運

もっとみる
頭の中でキャラクターが動く/『ムーミン谷の夏まつり』

頭の中でキャラクターが動く/『ムーミン谷の夏まつり』

キャラクター自体はかわいくてすきでも、原作を知らないと容易にすきだと言ってはいけないと思っていた。

日本発のドラえもんやキティちゃんはそれなりに嗜んで大人になったし、ピカチュウに至ってはブームをど直球に受けた世代だったので妙な誇らしささえあるくらいだ。

ミッキーの作品はあんまりわからないからちょっとだけ腰が引けるのが本音だけど、他のディズニー作品はそれそこ知っているからまだなんとか許される気が

もっとみる
だって「旅人さん」だから/『すきまのおともだちたち』

だって「旅人さん」だから/『すきまのおともだちたち』

ふとした瞬間に違う世界に入り込んでしまう。

そんな異世界系の展開なんてよくある話なのに、この物語に無性に惹かれてしまうのはなんでなんだろう。

登場人物も極めて少なく、基本的には「私」と「おんなのこ」と「お皿」だけだ。

お皿はしゃべるし、店員さんはネズミだし、おんなのこは生まれたときからおんなのこだったのだそう。両親はおらず、ある日いきなり「おんなのこ」として生まれてそれを受け入れて生きている

もっとみる
夜の美術館の過ごし方/『クローディアの秘密』

夜の美術館の過ごし方/『クローディアの秘密』

遊園地が楽しいのも、映画館にわくわくするのも、デパートのそわそわするのも「非現実」を味わうことができるからだと思う。

そういう場所にいるとき、わたしはほんの少しだけ背伸びをする。背が低い方ではないけど、そのほうがより多くのわくわくを見逃さないような気がするからだ。

非現実な場所には終わりの時間がある。

閉園時間があるし、上映時間は決まってるし、夜になったら閉店する。

それは当たり前のことだ

もっとみる
季節を味わう楽しみを

季節を味わう楽しみを

季節の移ろいを知って、感じて、旬のものを味わうことってすごく贅沢だなと思う。

日本が特に四季が豊かだから、それぞれの楽しみ方があるんだって昔教えてもらったことを思い出す。

本当は何にもなくても自分で違いを感じ取れたらいいんだけど、そこまで繊細でも余裕たっぷりの生活ができているわけでもないから、カレンダーに頼っているような気もする。

旧暦だから微妙なズレは仕方ないけど、二十四節気や七十二候がす

もっとみる
フランスをすきになったのはこの出合いから/『紅はこべ』

フランスをすきになったのはこの出合いから/『紅はこべ』

本から得た影響のみで構成されていると言っても過言ではないくらいに影響を受けやすいわたしなのですが、記憶力もざるなので基本的に読んだ本のことはどんどん忘れてしまいます。

記憶の彼方にある本からじわじわ影響されて今のわたしがあるというのもちょっとこわいな…と冷静に考えると思うのですが、ずっとすきでいるものに影響を与えた本はさすがに覚えているものもいくつか。

今後いつ忘れてしまうかもわからないので、

もっとみる
愛すべきおばかな住人/『クマのプーさん』

愛すべきおばかな住人/『クマのプーさん』

家庭によってジブリ派かディズニー派か、とある程度分かれていると思うのだけど、わたしの家族はジブリ派だったと記憶している。

『となりのトトロ』はテープが擦り切れるくらい観たし、映画もテレビで放送されるたびに律儀に家族集合したし、ジブリ美術館にも通った。

それでも何かひとつのキャラクターにハマることはなくて、わたしがなぜか唯一ハマったのはディズニー作品の『くまのプーさん』に出てくる『ティガー』だっ

もっとみる