クローディアの秘密

夜の美術館の過ごし方/『クローディアの秘密』

遊園地が楽しいのも、映画館にわくわくするのも、デパートのそわそわするのも「非現実」を味わうことができるからだと思う。

そういう場所にいるとき、わたしはほんの少しだけ背伸びをする。背が低い方ではないけど、そのほうがより多くのわくわくを見逃さないような気がするからだ。

非現実な場所には終わりの時間がある。

閉園時間があるし、上映時間は決まってるし、夜になったら閉店する。

それは当たり前のことだし、「また来たいな」と思わせてくれるのがそういう場所の良いところだ。

だけど、一度は思ったことがないだろうか。

誰もいない場所で独り占めできたらいいのに。
もっともっと味わうためにいっそ住めたらいいのに。

今回読んだ『クローディアの秘密』は美術館に住むお話。それも場所はニューヨークのメトロポリタン美術館。

【あらすじ】
少女クローディアが弟を誘ってメトロポリタン美術館に家出する。美術館内でこっそり生活するうちに、ふたりはミケランジェロが作ったとされる天使の像に引き付けられて…。

クローディアは何も考えずに美術館に飛び込んだわけではない。

大きくて、気持ちの良い場所で、屋内で、できれば美しいところはどこだろう、とよく考えられた結論だった。

家出するためにお小遣いを貯めて、弟を味方につけ、美術館のパンフレットで研究した。

そこまでしてクローディアが家出したかった理由は冒頭で「不公平だから」だそうが、なんだか理由としては弱いような気がしていた。

全財産を投げ出して、家から遥か遠く移動して。しかも、クローディアは歩くのも好きじゃないし、清潔好きだ。家出中なのに下着を毎日替えることにこだわる女の子が長い間、家出なんかできるだろうか。

そんな風に思いながら読んでいると、わたしが気になっていた理由の答えはタイトルにあったことがわかった。『クローディアの秘密』。最後まで、読んで「なるほどな」の気持ちとともにクローディアへの愛しさがぐっと増す。

そうだ、わたしもクローディアと同じ12才くらいのときはこんな風に思っていた、と。

美術館のなかで夜をやり過ごす方法も(朝、見つからないようにすることがいちばんドキドキするのだ)、噴水を使って身体を洗うところも、団体客に混じって美術館内を歩き回るところもわくわくする。

さらに、ミケランジェロが作ったかもしれない像の秘密を解こうだなんて美術ミステリー好き的にもわくわくする。

わくわくとわくわくが重なって、読んでいるときの体感時間の短さたるや…!

こんなにわくわくする物語があっただなんて知らなかった。良い出合いができました。

ちなみに2日前にもつぶやいたのだけど(noteのつぶやきは貼り付けられないみたい)、こういう突飛な場所に住んじゃう系が好きな方には『魔法があるなら』」(アレックス・シアラー)がおすすめ。

こちらは夜のデパートに母姉妹の3人で住み着くお話です。

ちなみにちなみに、この物語を元に作られたのが「みんなのうた」でも聞いたことのある『メトロポリタンミュージアム』。

行ったことのないメトロポリタン美術館。最初に場所の名前を見たときに何よりもまず、この曲が先に頭に浮かんでくるので、やっぱり音楽の印象深さって凄いんだなあと思います。

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