和菓子のアン

季節を味わう楽しみを

季節の移ろいを知って、感じて、旬のものを味わうことってすごく贅沢だなと思う。

日本が特に四季が豊かだから、それぞれの楽しみ方があるんだって昔教えてもらったことを思い出す。

本当は何にもなくても自分で違いを感じ取れたらいいんだけど、そこまで繊細でも余裕たっぷりの生活ができているわけでもないから、カレンダーに頼っているような気もする。

旧暦だから微妙なズレは仕方ないけど、二十四節気や七十二候がすきなのも小さな変化を毎日知りたいからなのかなと思う。

そんな小さな変化をもっと楽しく教えてくれる存在として「和菓子」があるじゃないかと気づいたのは『和菓子のアン』(坂木司)を読んだから。

【あらすじ】
デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(うめもときょうこ)(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの18歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは?(Amazonより)

この物語のなかで和菓子と洋菓子の違いついて聞かれた椿店長はこう答える。

この国の気候や温度に合わせ、この国で採れる物を使い、この国の冠婚葬祭を彩る。それが和菓子の役目。

色とりどりの綺麗な和菓子は月代わりで目にも楽しませてくれる、食べられる季節だ。

クリームよりはアンコ派だなと思っているわたしだけど、和菓子にはあまり詳しくなかった。

だけど、この物語を読み進めているうちに季節ごとに優美な名前のついた和菓子や、いわゆるいつでも食べられるお団子や大福もどれもこだわりがぎゅうううっと詰まったものなんだと気付かせてくれた。

特に素敵だなと思ったのが「おはぎ」の呼び方について。

春に食べるのが「ぼた餅」で、秋だと「おはぎ」に呼び名が変わることは知っていたが、他にも「月知らず」「北窓」「着き知らず」「夜舟」「隣知らず」とも呼ばれているんだとか。

それぞれの理由についてはぜひこの物語の『萩と牡丹』を読んでほしいのだけど、どれも繋がっていて、ストーリー性があって読みながら感動してしまった。

和菓子の名前一つとっても、物語があって、それを知ることは日本の文化を知ることにも繋がるってとってもとっても素敵だ。

例えば、月初に和菓子を一ついただく…なんてことが習慣にできたらおいしく季節を味わうことができるかもしれない。

今まで知らなかった和菓子の世界に少しふれることができる、新しい出合いの一冊でした。



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