クローディアの秘密のコピーのコピー

頭の中でキャラクターが動く/『ムーミン谷の夏まつり』

キャラクター自体はかわいくてすきでも、原作を知らないと容易にすきだと言ってはいけないと思っていた。

日本発のドラえもんやキティちゃんはそれなりに嗜んで大人になったし、ピカチュウに至ってはブームをど直球に受けた世代だったので妙な誇らしささえあるくらいだ。

ミッキーの作品はあんまりわからないからちょっとだけ腰が引けるのが本音だけど、他のディズニー作品はそれそこ知っているからまだなんとか許される気がする。

ところが、ムーミンやスヌーピーはよく見かけるキャラクターなのに、アニメを観た記憶がないのだ。名前と顔はなんとなく一致しても性格がわからない。ビジュアルだけですきになることもあっても、性格がわからないから愛しきれない。

なんかそれってすごくさみしいし、もったいないないなと思って本で彼らを知ろうと思った。

ところがスヌーピーは英語しか書いてないし、あっても名言集しかないし、ムーミンはカタカナが多くてやたらと読みづらい。

そんなこんなであっさり挫折して、ただの顔ファンであることを選んでいたのだけど、やっぱりこの二つのキャラクターのことをずっと気にしている自分がいた。

特にスナフキンの名言まとめが大人になったからか妙に沁みる。どんな話の流れなのか気になる。

おまけに今年は埼玉にムーミンバレーパークができてしまって、興味がどんどん増していく。それならやっぱり、と気を取り直して、最近ようやくムーミンを始めました。

前置きが長くなってしまった。

手に取ったのは『ムーミン谷の夏まつり』。

【あらすじ】
夏まつりの美しい季節に、大水に流されたムーミン一家。やはり流れされてきた劇場に移り住んで、やがてはお芝居をすることに。「劇場」がなんなのか、だれもまったく知らないのに! 脚本はもちろん、ムーミンパパ。ムーミンママや、ミムラねえさん、ミーサとホムサが出演者。入場料は「たべられるものなら、なんでもよろしい。」(Amazonより)

今の季節にぴったり!と思って選んだのだけど、夏を満喫するのかと思いきや、いきなり大洪水に巻き込まれてしまっていてなんだか涼しげな始まりだった。

水漏れがひどすぎて元の家に住めなくなってしまったムーミン一家が移り住んだのは劇場なんだけど、初めて劇場を知った一家が小道具部屋や衣装部屋を見て動揺したり、舞台の回転装置にびっくりする様子が奇妙で面白かった。

特にスノークのおじょうさんが衣装部屋にある何百もあるドレスに囲まれて最初こそうっとりしてしまうのに、結局こわくなって逃げ出してしまうシーンはぐっときた。

「そうよ。へんでしょ? でも、ドレスがたくさんありすぎたのよ。あれを、ぜんぶ着てみることは、とってもできないし、どれがいちばんきれいかも、わたしには、きめられなかったの。ドレスがこわくなったくらいよ。もし、あそこに二着だけあったのならだったら、どっちがきれいだか、すぐにきまったでしょうけどね」

幸せって大きすぎるとこわくなってしまうのかもしれない。たぶん。

その後、水の流れに巻き込まれて、ムーミントロールとスノークのおじょうさん、ちびのミイはそれぞれ一家からはぐれてしまうのだけど、ちびのミイがたまたまスナフキンを出会って一緒に行動することになる。

二人はほぼ初対面なのでお互い誰だろうと思いながら接しているのだけど、眠くなっちたミイがポケットの中がいちばんよく眠れるの、と話すとスナフキンがすぐに自分のポケットにするりといれてあげるところにキュンとしてしまった。

しかもそのときのセリフが「そうかい。たいせつなのは、自分のしたいことを、自分で知ってるってことだよ。」

あ、これ名言集でみたやつ!!!って思いました。こう繋がるのね、そりゃ男前だわと。

なんとなく知っていた言葉やキャラクターがやっとわたしの頭のなかで繋がって動き出していくのがすごく面白くてあっというまに読んでしまった。

ムーミンは子ども向けの作品かもしれないけど、大人になってからやっと読めるようになってすごく嬉しい。

他の作品も読んでみたいし、スヌーピーも読んで愛していけるようになったらいいな。



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