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本の感想

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本の感想をまとめています。
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中溝康隆「巨人軍vs.落合博満」

中溝康隆「巨人軍vs.落合博満」

本書の概要

落合博満は1993年12月21日に読売巨人軍への入団会見を行い、1996年11月28日に読売巨人軍からの対談会見を行います。
巨人の落合が誕生した理由と、在籍した3シーズンと、退団することになった理由を描いたノンフィクションが本書「巨人軍vs.落合博満」。
本書のために落合博満や長嶋茂雄や原辰徳、松井秀喜らにインタビューしたわけではなく、当時の資料を整理して構成されています。
当時の

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杉本貴司「ユニクロ」

杉本貴司「ユニクロ」

ユニクロの正史であり、社史

ユニクロといえば創設者の柳井正ですが、本書は柳井正の伝記ではなく、「ユニクロ」についての作品。
公式や社史とは書いてないけれど、柳井正や社員、関係者の証言があり、なにより本書の装丁はユニクロのロゴを手がけた佐藤可士和で、ユニクロのロゴがそのまま使用されています。
「ユニクロがどこまで明かしたか?」と「杉本貴司はどこまで迫ったか?」の両方を意識しながら読む必要があります

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かんそう「書けないんじゃない、考えてないだけ。」

かんそう「書けないんじゃない、考えてないだけ。」

「かんそう」という「はてなブログ」を主戦場とするブロガーによる文章指南書「書けないんじゃない、考えてないだけ。」。

「はてなブログ」にアクセスしてブログ「kansou」のエントリを何本か読んで面白いと思った人は読めば良いと思います。

「かんそう」氏の好きなものと私の好きなものは、Mr.Childrenと星野源くらいしか重ならないのですが、私は文章そのものよりも、この題材をこう落とし込むのか、と

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日記には何が書かれているか(坪内祐三「日記から」を読んで考えた)

坪内祐三『日記から』(本の雑誌社)を読み、取り上げられている事柄を分類しながら、「日記には何が書かれているか」考えました。

『日記から』がどういった内容であるかは、以下を参照してください。

日記は「日々の記録」として世に出ます。
このnoteも、あなたのSNSのポストもそう。

「日々の記録」として書いたものが、時を経ると「歴史の証言」、「時代の空気」、「本音」の3種類に変化すると仮定しました

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坪内祐三『日記から 50人、50の「その時」』

坪内祐三の新刊「日記から」は、2005年4月からの1年間、毎週日曜日の毎日新聞での連載をまとめたものです。
どういう連載かは著者自身が書いているとおりです。
ルールの内容は明快ですが、一朝一夕で出来ることではありません。

まず、最低でも50冊の日記を集め、読まなくてはいけません。
本書で紹介される日附けの範囲は、明治22年(1889年)2月1日(依田學海)から昭和55年(1980年)10月4日(

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菅付雅信「インプット・ルーティン」

本書が主張していることは以下。

アウトプットの質と量は、インプットの質と量が決める。
足りないものは、圧倒的にインプットである。

新しいアイデアは、「A×B/C」(既存のアイデア×既存のアイデア/大量のインプット)によって生まれる。

「インプットの質と量」ということに重きをおいた本書には、「クリエイションを学ぶための100冊」、映画ベスト100、アート・写真ベスト100、音楽アルバムベスト1

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宮部みゆき「杉村三郎シリーズ」感想篇

杉村三郎シリーズに手を出した経過は別で書きましたので、今回は読んだ順番で感想をまとめます。

1.「希望荘」

前半の3作「誰か」、「名もなき毒」、「ペテロの葬列」は長篇作品ですが、後半の2作は短編小説集です。「希望荘」に収録されているのは、「聖域」、「希望荘」、「砂男」、「二重身」の4篇。

「聖域」は、私立探偵をはじめた杉村三郎が近所の人から、急にアパートから退去した人を見かけたので探してほし

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宮部みゆき「杉村三郎シリーズ」



1 杉村三郎シリーズとは?

一作目「誰か」の刊行が2003年11月で、現時点での最新作である五作目「昨日がなければ明日もない」の刊行が2018年11月。足かけ15年にわたり書き継がれている、私立探偵が主人公の連作が「杉村三郎シリーズ」と呼ばれています。

 刊行されているのは、以下の五作品。

1「誰か Somebody」
2「名もなき毒」
3「ペテロの葬列」
4「希望荘」
5「昨日がなけれ

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「もう明日が待っている」鈴木おさむ

「もう明日が待っている」鈴木おさむ

帯には以下のように書かれている。

(1)本書の概要
SMAPのブレーンとして「SMAP×SMAP」だけでなくラジオ、コンサートにも関わっていた鈴木おさむが書いているのだから、帯には「小説SMAP」とあるけれど、限りなくノンフィクションに近い。
関わりが深いことは知っていたけれど、メンバーが記者会見で話した内容も、メンバー自身が話したことをもとに鈴木氏がをまとめていたとあり、私の見積もりより深く関

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安野モヨコ「還暦不行届」

安野モヨコ「還暦不行届」

本作「還暦不行届」は2021年1月から2023年2月にかけて「note」にアップされた文章やTwitterに載せた1コママンガ、スタジオカラー10周年記念作品「おおきなカブ(株)」(2016年)などをまとめたエッセイ集。

帯には「お待たせしました!「監督不行届」のその後」とあります。

2002年3月に安野モヨコは庵野秀明と結婚し、新婚生活を題材としたエッセイマンガ「監督不行届」が発行されたのは

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