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テニス上達メモ029.「不安な気持ち」に押しつぶされそうなとき

 


▶ポジティブシンキングは「不安感の裏返し」。自己肯定感を損なう

 
これから始まるテニスを前に、不安を感じるのは人として当然の反応です。
 
それが仲間内ではなくたとえばテニスオフなど、初めて参加するグループに混じってテニスをプレーする場合などはなおさらでしょう。
 
オフィシャルな試合ではもちろんです。
 
「自分の実力がどこまで通用するのか?」
 
「そもそも実力を発揮できるだろうか?」などを考えると、どうなるか未来は分からないから、不安になるのは必然です。
 
こんなとき、「不安になんかならない!」「強気だ!」などのポジティブシンキングで鼓舞しようとすると、それは不安で弱気なイメージの裏返しですから、ありのままの自分ではいられなくなるため、ますます精神的に不安定になりかねません。
 
これが、自己肯定感を損なう苦しさです。
 

▶「当然の不安」にまずは「気づく」


これから始まるプレーが、どうなるか分からないから不安だとまずは認めると、逆説的に落ち着けます。
 
「この不安は感じて当然だ」と。
 
もちろんそのためには、「今自分は不安を感じている」と気づけることが第一歩。
 
気づきの力「念力」を発揮すれば、感情に振り回されず、必要以上に苦しまずにすみます
  
悲しみは内向きになって英気を回復するための大切な感情。
 
こんなときに友だちがよかれと思って「元気出せよ!」などと賑やかな場に連れ出すと、あとになって心にしこりを残すのでした。


悲しみは確かに気持ちのいい気分ではないけれど、「そう感じるのも当然だ」と認めれば「死にたくなる」ような苦しみには、さいなまれずにすみます。
 

▶「こう言っておけばよかった」をなくすコツ


不安だったり焦りだったり浮足立ったりしてその渦中にいると、案外自分の感情が自分で分からなくなります
 
渦中にいると、中に入り込んで波に飲み込まれているような状態ですから、外から客観視できないのです。
 
ですから「波に乗る」のは、その「上に」です。
 
「どうしてあんなこと言ってしまったのだろう」「こう言っておけばよかった」などと振り返れるのは、波の中から出て客観視できるようになってから。
 
なので気づく力「念力」を発揮すると、そのような「言った・言わなかった」後悔も少なくなります。

▶「一時にひとつ」が原理原則


さて不安感。
 
プレー前に感じるのは当然とはいえ、不安感が強まって長引き、いざプレーが始まっても悪影響をきたす場合もあるかもしれません。
 
まずフォームを意識すると、不安感は強まります。
 
なぜならフォームを意識しているとき、私たちはボールがよく見えなくなるからです。
 
認識できる対象は、「一時にひとつ」が原理原則
 
考えながら見たり聞いたり感じたりすることができると思い込むのは、錯覚です。
 
目で聞いたり、耳で見たり、口で嗅いだりできない以上、それぞれの感覚器官が認識できる対象は一時にひとつ。
 
そして脳は、それそれの感覚器官から受け取る情報を、ひとつずつしか逐次処理しません。
 

▶ほんの少し「時差」がある

 
見ながら聞ける、聞きながら見える、見ながら考えられるなどと、思い込みがちです。
 
たしかに、ぼんやりしていると「見る・聞く・考える」の時差に気づきにくいですから、まるで同時並行処理できているような気がします。
 
しかし今、鳴っていたとしても、この文章を読みながら空調の「音」は聞こえなかったのではないでしょうか?
 
そうして指摘されるとよく聞こえ出すのですけれども、その音をよく聞きながらこの文章を、先程までのようにスラスラと読み進めることは難しくなります。
 
これを突き詰めて短縮すると、瞬間の世界では「一時にひとつ」です。
 
見たり聞いたり考えたりを、行ったり来たりする間には、ほんの少し時差があるのです。
 
そしてテニスというのは、1000分の4秒の打球タイミングを合わせるスポーツです。
 
ですから考え事をしていると、ボールが見えなくなって打球タイミングが合わなくなります。
 

▶フォームを意識すると「はしごを外される」

 
フォームを意識すると不安になるのは、ボールがよく見えなくなるからです。
 
ボールがよく見えなければ、上手くプレーする拠り所となる情報の質が低く量が少ないのだから、不安感は一層強まります。
 
よく、「教わったとおりヒザをちゃんと曲げてプレーすれば大丈夫!」「下から上へスイングしてスピンをかければミスしない!」などとフォームに安心感の拠り所を求めるプレーヤーもいますけれども、それは偽物です。
 
プレーが始まると全然通用しないから、むしろハシゴを外されるようなもの。
 
不安感はより一層強まるのです。
 

▶フォームを意識しないと不安?

 
むしろフォームを意識していたプレーヤーがフォームを一切意識しなくなると、拠り所がなくなった気がして、不安を感じる場合があります。
 
しかしこれは、好ましい兆候の好転反応です。
 
フォームを意識することで誤魔化されていた不安があらわになると、確かな拠り所となるボールへ集中するようになるからです。
 

▶脳の性質を「逆手に取って利用」する


ボールがよく見えなければ、上手くプレーする拠り所となる情報の質・量ともに低下するから不安感が強まると説明しました。
 
そして不安になるから、ボールに集中できない相互作用です。
 
どうすればいいでしょうか?
 
これを逆手に取ります。
 
器用なのか不器用なのか、「一時にひとつ」の情報しか認識できない脳の性質を上手く利用するのです
 
プレーに入る前の不安はあったとしても、プレー中にさいなまれる不安感を払拭することができます。
 
頭で「どうなるだろう?」と、分からない未来を考えるから、不安になります。
 
具体的な対処としては、プレーに入ったらボールに集中する。
 
目で今、まさに事実として見る(光を感じる)ことのできるボールを拠り所とすれば、安心できます。
 
未来を考えることと、今を感じることは、「同時にはできない」からです。
 

▶「もう」と「まだ」の狭間で

 
いえ、プレーに入る前の不安さえ払拭できます。
 
考えることができるのは、0.1秒前でも後でも、必ず過去か未来について。
 
感じることができるのは、「今まさにこの一瞬」しかできません。
 
私たちは、1秒前の風景をもう見られないし、1秒後の音をまだ聞けません。
 
「もう」と「まだ」の狭間で、今を生きています。
 
見たり聞いたり感じたりできるのは、まさに「今」だけです。
 

▶「右足、左足、右足、左足……」


ですからテニスをプレーする前に不安な気持ちを何とかしたい場合は、たとえばコートへ向かう道中、歩きながら「右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足……」などと、歩行の着地タイミングや着地感触を感じます。
 
何となくタイミングを合わせるのではなくて、「今まさに地面に着いた」「今まさに地面から離れた」といった具合に、瞬間に限りなく肉薄すると、これから始まるテニスについて「考えられなくなる」から不安感も薄れます。
 
そしてこれが、とりも直さず「集中」です。
 

▶「集中の下ごしらえ」でボールに集中


「右足、左足、右足、左足、右足、左足、右足、左足……」
 
こうして集中する準備をしていると、実際にプレーが始まってからも、好影響が波及します。
 
思考は連想ゲームで、不安は伝染するのですけれども、「右足、左足、右足、左足……」の実践により、その連鎖が途絶えています。
 
「集中の下ごしらえ」が整っているので、いざプレーに入るときにも、ボールにも集中しやすくなるのです。
 

▶「眠れない夜」に


今まさにこの瞬間を感じていれば、思考の暴風雨は鎮まり、凪いだ状態に心は落ち着きます。
 
すると、感じることができるようになってきます。
 
目で光を感じ、耳で音を感じ、鼻で香りを感じ、肌で温もりを感じます
 
明日が試合で不安になり眠れない夜は、刺激の強い思考ではなく、刺激の淡い呼吸に集中します。
 
すると頭の中の騒がしさが鎮まるので、落ち着いて眠れるようになります。
 
ただしそのためには、淡い刺激の呼吸から認識対象をぶらさない集中力が試されます。
 

▶思考はコントロールできない「自動思考」


あるいは仕事や勉強などで「考える」ときには、意識で思考を感じます。
 
思考を感じる?
 
耳慣れない表現ではありますが、思考も、光や音や香りや温もりなどとまったく同じレベルの「認識される対象」です。
 
自分で作り出すのではありません。
 
自動思考
 
それが証拠に、私たちは思考をコントロールできないはずです。
 
「ポジティブシンキングをしよう!」などと思いつくかもしれませんけれども、文字どおり思いつきであり、「さぁ、これからポジティブシンキングをしようと考えよう」などと自分でひねり出せたのではなかったはずです。
 
この説明を読んで「そんな馬鹿な」などと考えたかもしれませんけれども、それも「これからそんなバカなと考えよう」と考えて、考えたわけではなかったはずです。
 

▶考え事をなくすと、考えられる


試験問題を解くときなどは、一貫して思考をほかにブレさせない集中力が鍵となります。
 
残り時間や合否の結果を考えている場合ではありません。
 
理路整然とした思考は、ほかの思考が静まると濾過されてにじみ出てきます
 
ですから、「考え事をなくすと、考えられる」のです。
 
アルキメデスはさんざん考え続けていた浮力の法則について、お風呂に入って考えるのをやめたら、ひらめきました。

「今まで何をやってたんや。アルキメデス~」(笑)。

▶視覚刺激を濾過してボールを浮かび上がらせる

 
ボールへの集中も同じです。
 
視界に広く映るボール以外のさまざまな情報刺激が鎮まると、純度の高いボール情報が濾過されて浮かび上がります
 
あとは目の前のボールをひっぱたけばいいだけです。
 
そうすると振り出しに戻って、不安を感じなくなります。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero