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質問002:テニスにおいて「考える」ということは不必要??

テニスにおいて「考える」ということは不必要なのでしょうか??
自分は現在高校生でジュニアチームで週3〜4回のペースでテニスをしています。
クラスが実力順で上・中・下と3つのクラスがあり自分は中の一番下の位置にいます。
コーチによく「もっと力を抜いて柔らかく打て」、「もっと下から上のイメージを持ってスイングしろ」等と言われていますが、
それらを実践するとほんの一時的にはよくなるのですが少ししたらすぐに不調に陥ってしまい、スクールの中での試合でも勝つ時もあるのですが基本的に勝率が低く、中々気持ちよく打てません。
しかしコーチのアドバイスを実践しようとしてとことん不調に陥って打てなくなった時に、「もう適当でいいや」といった感じに開き直ると、自分の普段の実力を知ってる人達が見たらびっくりするぐらいに打てるようになり、最終的には一番上のクラスの選手とも互角に打ち合えるくらいになった、ということが今までに何度かありました。
テニスにおいて「考える」ということは不必要なのでしょうか??

回答


▶考えるとタイミングがズレる

 
事前に作戦立案の目的で「考える」のであれば、大丈夫です。
 
人生を幸せに生きる「戦略」を実行するための具体的な「戦術」

 
だけどいざプレーに入るときには、「考えない」ようにすると、テニスは上手くいきます。
 
テニスのミスは、打球タイミングを外す時間的なズレによってのみ、生じます。
 
頭の中で考え事をしてしまうと、コンマ数秒で合わせる必要のある打球タイミングの精度が落ちてしまうというのが、考え事が不必要である理由
 
不必要どころか、タイミング合わせに悪影響が及びます。
 

▶考えないための「お助けアイテム」がある

 
ちなみに、何もないところで考えずにいるのは至難の技。
 
修行を積んだ僧侶であっても、「呼吸」の助けを借りるから、坐禅中は考えずにいられるようになります。
 
テニスで考えないための「お助けアイテム」は、こちらなのでしたね。
 

▶「どうすればタイミングが合うか?」と考える


「どうすれば、タイミングが合うのだろうか?」
 
しかし考えれば、打球タイミングが合うわけではありません。
 
勝ちたいと考えたからといって勝てるわけではないのと同じです。
 
ならば考え事などせず、目の前のボールに集中。
 

▶「目の前」のボールに集中する

 
目の前というのは、近くであろうと遠くであろうと、文字どおり「目の前」です。
 
つまりボールを横目で見たり、上目遣いで見たり、見下したりすると、中心視野で鮮明に対象を捉えることのできる正面視にはならないから、近くであろうと遠くであろうと、上であろうと下であろうと、右であろうと左であろうと、顔ごとボールに向ける正面視となって「目の前」で見ます
 
たまにダブルスの前衛などでは、パートナーの後衛側に行ったボールは振り返らずに「横目で見ろ」などとも言われます。
 
あるいはもっとになると「振り返らずに相手を見ておけ」などとも言われますが、それでは「目の前のボールに集中」とはなりません。
 
たとえばこちらでご紹介した下の映像。

 
どちらのペアの前衛でも構わないのですけれども、「振り返るな」のスクールコーチによるアドバイスは、ちっとも守られていないのです。
 

▶ボールに集中する「条件反射」

 
考え事をしていても、タイミングが合う場合もありますが、安定はしません。
 
「ほんの一時的にはよくなるのですが少ししたらすぐに不調に陥って」とおっしゃるのは、こういう理由によります。
 
テニス上級者のプレーが安定している理由は、この逆です。
 
上級者は、ボールに集中する条件反射ができているので、プレーが始まると(いえ厳密にいうとプレーが始まる前から下の映像のように)、頭の中を空っぽにして考え事をせずに、無心でボールに集中します。


▶立てた作戦を考えながらプレーする必要はない

 
立てた作戦を実行するにあたっては、すでにイメージはできていますので、改めて考えながらプレーする必要はありません。
 
お昼ご飯は「中華にしよう」と作戦立案したあとには、「やっぱりフレンチがいい」などと作戦変更しない限り、意識しなくても馴染みの中華料理店へ足を運ぶのと同じです。
 
作戦立案したあとは、ボールに集中すれば、体はイメージの実現に向けて、自動的に動くのです。
 

▶「正しい思考」も邪魔になる

 
ご自身が「もう適当でいいや」という境地に至ったときに本来の実力が発揮されたのは、考え事の雑念がなくなるぶん、頭の中がクリアになるので無意識的な働きが強まり、目や耳などの情報収集感覚器官と、それに応じて連動する手足とのコーディネーションが、上手く機能したためと説明できます。
 
「ボールに集中しよう」「打球タイミングを合わせよう」なども、たとえそうするのが「正しい」としても、考えるのは雑念です。
 
それならいっそのこと「もう適当でいいや」の境地のほうが考えないから、ボールに集中できて、打球タイミングが合った。
 
その結果、「自分の普段の実力を知ってる人達が見たらびっくりするぐらいに打てるようになり、最終的には一番上のクラスの選手とも互角に打ち合えるくらいになった」というプロセスだったと顧みます。
 

▶そのイメージは「偽物」です

 
ちなみにコーチの言う「もっと下から上のイメージを持ってスイングしろ」は、イメージではありません。
 
それは、下から上へのスイングを「考えさせる」指摘です。
 
私のいうイメージというのは、普段はあまり意識されずに私たちの行動や思考や感情を司る力です。
 
たとえば山道で足元にとぐろを巻いたロープを踏みつけそうになったら、サッと(思わず=考えず)、飛びよけるかもしれません。
 
それは、「とぐろを巻いた細長い対象=蛇」というイメージがあるからです。
 
つまりイメージが現実に対してズレていると、体は(本来は飛びよけなくてもいいのに)誤った動き方を無意識でしてしまう
 

▶思わず上手くできてしまう

 
これとまったく同じエラーが、テニスコートでは頻出しています。
 
思わず、飛んで来るボールに突っ込んでしまう(そのせいで打球タイミングが合わなくなる)。
 
思わず、直線的なボールを打ってしまう(そのせいでネットミスやバックアウトが多くなる)。
 
それは、私たちの行動や思考や感情を司るイメージに、現実に対するズレがあるのが原因です。
 
これが改まれば、思わず(考えず)テニスを上手くプレーできてしまうのです。
 

▶自己肯定感は「自己肯定イメージ」


ちなみに、自己肯定感も、「自己肯定イメージ」なのだと思います。
 
普段はあまり意識していないけど、その力は私たちのありとあらゆる言動を司っています
 
なぜ、いい人のフリをしてしまうのか?
なぜ、気遣いすぎて疲れるのか?
なぜ、イライラするのか?
なぜ、不安が止まらないのか?
なぜ、完璧じゃないと気がすまないのか?
なぜ、人と親しくなれないのか?
なぜ、人目が気になるのか?
なぜ、なぜ、なぜ……?
 
自己肯定イメージが、私たちの言動を支配しているからです。
 

▶イメージに意識は抗えない


「イメージがすべて」といったのは、テニス界のレジェンドであるアンドレ・アガシでした。
 
そして、私たちはイメージには、抗えないのです。
 
誤ったイメージがあると、突っ込まないようにしようと意識しても、体は突っ込みます。
 
それと同じように自己肯定感を高めるために、「しっかり自己主張しよう」と意識したところで、「あんなことを言ってしまった。どう思われるだろうか……」などと不安になり、かえって自己肯定感を損ねるのです。
  

▶「自分を好きになる」に仕掛けられた罠

 
あるいは一般的には、自分を好きになって自己肯定感を高めようと提唱するアプローチは、よく紹介されています。
 
しかし「自分を好きになって自己肯定感を高めよう」としても、これから「好き」になろうとするのだから、今の自分は「嫌い」の裏返し
 
「嫌い」のマイナスにいくら好きの「プラス」を掛け合わせても、いえ掛け合わせれば掛け合わせるほど、マイナスの自己否定感は強まるばかりです。
  

▶「自己肯定イメージ」を高めるために

 
自己肯定感を高めるには、普段私たちが意識する表面的な立ち居振る舞いを変えるのではなくて、その背景で私たちの言動を司るイメージを書き換える必要があるのです。
 
そうすれば、結果的に無理なく、必要な場面では自己主張するし、自分を好きになったりします。
 
その機能を果たすと不安はやみ完璧主義に囚われて苦しくならずイライラせずに、質の高い交際も、ごく自然な流れでできるようになってきます。
 
自分の好みを優先できるため、自己否定していたために閉ざされていた才能も、開花するのです。
 

▶小脳の回路を配線・整理する「あみだくじ理論」

 
改めて「考えない」につきまして。
 
運動を体で学習する小脳の脳内回路は、集中している状態で最も能率よく配線される(無駄な回り道の回路を整理する)ようにできています。
 
「あみだくじ」の横棒を取っ払って、ストーンと当たりくじまで一直線のイメージです。
 
回り道をしないから、脳内電気信号が素早く正確に伝達されます。
 

▶「運動音痴」が生まれる原因


しかし考え事をしているとその回路が整理されにくくなるので、練習はしているのになかなか運動が上達しないというのが、いわゆる「運動音痴」の原因に。
 
そして上達しないからますます考えてしまう、という悪循環の悩みにさいなまれます。
 
よかれと思って頑張ってやっていたフォームを意識する(考える)練習は、実は運動を司る小脳の脳内回路を配線するうえで妨げだったという皮肉な事実です。
 
配線が整理されていない横棒がいっぱい残っている「あみだくじ理論」によれば、回り道を行くから遅いし、ハズレくじを引く可能性も高くなります。
 

▶ぐんぐん上達してしまう「スポーツ万能」の正体

 
まとめますと、「考えない」には2つの目的を達成する狙いがあります。
 
ひとつは、プレーそのものを上手く遂行するため(具体的にテニスでいうとボールに集中するため)。
 
そしてもうひとつは、運動を司る回路を小脳内に配線・整理するため。
 
この2つが相乗効果でぐるぐる回り始めると、ぐんぐん上達してしまうという「スポーツ万能」になる好循環が生じます。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero