テニス上達メモ446.学習能力は諸刃の剣
▶「学習能力」というと、聞こえはいいかもしれないけれど
私たちには学習能力があります。
何度も唱えていると自分の電話番号を覚えてしまうのは、この学習能力のおかげです。
学習能力というと聞こえはいいかもしれませんけれども、望ましくない方向へも作用します。
今回は、テニスで「そうならないように」という具体的な対策の話です。
▶どうしても「忘れられなくなる怖さ」
たとえばテニススクールやテニスの実用書では、フォームを意識する指導が、一般的に行われています。
それらに習えば学習能力が働いて、フォームを意識する習慣ができます。
「意識」を「考える」と、言い換えてもよいでしょう。
嫌いな人・嫌な出来事について考えたくないのに考えてしまうのは、学習能力によって考えることが習慣化された「効果」です。
そうなると厄介です。
覚えた電話番号を忘れようとしても、どうしても忘れられないのと同じで、嫌いな人・嫌な出来事について、ことあるごとに考えてしまいます。
▶潜在意識は、「良いか悪いか」の評価はしない
それと同じようにフォームについて考えないようにしようとしても学習能力の効果により、それが忘れられず、考えずにいられなくなります。
潜在意識は、良いか悪いかの評価はしません。
潜在意識というのは、五感を通じて得られる情報に対する反応パターンを、良いか悪いかは別にして、強化してしまうのです。
初期仏教ではこの点に関してとても厳しくて、「身・口・意(しん・く・い=行動・言葉・思考)は、「1回行なうだけでパターン化するから気をつけなさい」と、注意を促します。
▶運動神経はいいのに、テニスはてんでダメ
今、常識的なテニス指導に習い、フォームについて意識しているプレーヤーは、私たちの意思とは関わりなしに働く学習能力の効果により、意識する習慣を強化していると言えます。
意識しないようにしようとしても、意識せずにいられなくなる怖さ。
こういう人は、ご自身の周囲にいませんか?
運動神経はそこそこいい。
子どものころは体育の授業で何でもトップクラスだったというのに、大人になって始めたテニスに限ってはてんでダメ、という人がよくいます。
そういう人はもともとの学習能力が高いがゆえに、フォームを意識する脳内回路が、しっかり形成されているのです。
「こういう人は、周囲にいませんか?」と問いかけたけれど、ご自身はいかがでしょうか?
ほかの誰でもない私が、「そういう人」でした。
▶「考えないようにしよう」とすると、考えてしまう
どうすればいいでしょうか?
朗報があります。
使わない電話番号は忘れるのと同じように、フォームについて意識しない習慣化もできるのです。
とはいえ考えないようにしようとすればするほど、やってみれば分かると思いますけれども「考えてしまう」わけですから、逆効果。
嫌いな人・嫌な出来事について「考えないようにしよう」とすればするほど、考えてしまう。
▶「ボールに集中」で脳内回路を上書きする
そこで「何か」によって、今ある脳内回路を上書きしなければなりません。
その何かというのが、テニスでいえば「ボールへの集中」というわけです。
私たちが意識を向けられる(集中できる)対象は、「無料ガイドブック『テニス上達のヒント』」に記したとおり「一時にひとつ」に限られています。
刹那(瞬間)のレベルでいえば、マルチタスクは成り立たないのですね。
明日に予定されているプレゼンテーションの心配をしながら、テレビを見つつ、友だちと会話をしていては、今の食事の「味」は決して分かりません。
(一説に65分の1秒とされる)刹那で成り立たないのですから、それが延長された1秒でも1分でも、「成り立たないものは成り立たない」のです。
▶テニスが「下手になる生き方」
多くのプレーヤーが今はまだ「フォームを意識して何が悪いの?」と勘繰っていらっしゃるかもしれません。
しかしフォームを意識すると「一時にひとつ」の原理原則に従い「ボールに集中できなくなる」から、やっぱりテニスの上達を志すうえで「悪い」のです。
「悪」にはもともと「下手」というニュアンスが含意されています。
ですから、悪い犯罪行為に手を染めるのは、捕まる・見つかる可能性が圧倒的に高いにも関わらず、向こう見ずの割に合わない生き方だから、「下手な生き方」と言えるのです。
「フォームを意識して何が悪いの?」
それは、テニスが「下手になる生き方」だからです。
▶ボールに集中すれば、フォームは意識できなくなる
マルチタスクは、「一時にひとつ」の寄せ集め。
シングルタスクが、時間の経過とともに順次処理されていくさまを一括りにして、まるでマルチタスクのように映るだけです。
しかし刹那で見ると、やはり「一時にひとつ」。
瞬間が延長されても「瞬間の積み重なり」なのですから、一つひとつの寄せ集めの事実は何も変わりません。
明日に予定されているプレゼンを心配しながら今の食事を味わうマルチタスクは成り立たない。
マルチタスクが成り立たないからこそ、ボールに集中すれば、フォームについて意識できなくなるその学習能力により、脳内回路を新たに上書き保存し直せるというわけです。
▶テニスを10年以上やっても「できるようにならない」人たち
学習能力は「諸刃の剣」です。
上手く使えば私たちに素晴らしい活躍をもたらしますが、下手に使うとてんで上手くいかなくなるようにも作用する。
学習指導要綱が、能力発揮に関して足を引っ張る内容だと、英語を3年3年4年の計10年以上勉強しても、「英会話ができない……」というふうになってしまうのと同じです。
留学経験でもなければ、大学を出たにも関わらずネイティブと日常会話が英語でできる日本人は、ほんの一握りでしょう。
テニスもまったく同じです。
能力発揮に関して足を引っ張る内容だと、10年以上練習しても、「テニスができない……」というふうになってしまうのです。
▶いちいち「カッコでくくる」人たち
「英語なんて言葉なんだ。こんなものやれば誰だってできるようになる!」
予備校の講師が言うのは、まったくそのとおりです。
だけどその「やり方」しだいで、学習能力の効果が、雲泥の差となるのです。
私たち日本人が、日本語を操るときにいちいち「フォーム(文法)」について意識しない。
それと同じです。
10年以上もテニスを続けているのにさっぱり上達しないという人は、その優れた学習能力により、英語でいえばいちいち「カッコでくくる」ネイティブもやらないような習慣が、がっちりと強化されているのかもしれません。
▶「何のため」に学ぶの?
だけど冷静にアセスメントしてみてください。
私たちが英語を勉強する目的は、外国人と(ときに日本人同士でも)英会話ができるようになるためではないのでしょうか?
頭のなかでカッコにくくりながら、相手の話を聞き、自分の意見を相手に伝えるスムーズな意思疎通は、できるのでしょうか?
「一時にひとつ」が原理原則です。
カッコにくくっているとき、英語を話している相手の声は聞こえません。
相手の声を聞いているとき、カッコにくくれないから、このやり方では自分の意見がまとまりません。
日本の英語教育は、もはや「英語教育」とはいえず、大学入試に合格するためだけの特殊な「受験クイズ」なのではないでしょうか?
テニスも同じです。
練習するのは、上達するためなのではないでしょうか?
「一時にひとつ」が原理原則です。
ボールに集中しているとき、自分のフォームは意識できません。
フォームを意識しているとき、ボールに集中できないから、このやり方ではテニスは上達しないのです。
常識的なテニス指導は、もはや「テニス指導」とはいえず、フォームを矯正するだけの特殊な「うわべレッスン」なのではないでしょうか?
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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