質問080:スピンサーブのトスについて確認したい
回答
▶意図的に調整するから、ボールに集中できない
ボールを打つときに、身体動作は意図的に調整しないというのが原則です。
イメージしたショットを遂行しようとする過程で、自然な身体動作が自然に現われます。
「自然」とは書いて字のとおり「自らにふさわしい」のです。
ですから、トスする左腕の上げ方を意図的に(人工的に)変えるのはお勧めではありません。
「カスあたりになり持ち上がらない」から調整しても、上手くいかないから「確認したく」思われるのではないでしょうか?
トスする左腕の上げ方を意図的に調整すると、ボールに集中しにくくなってしまいます。
逆に言えばそのような意図的な調整をしなければ、ボールに集中しやすくなるのです。
▶「ボールバウンシング」で集中する
「左腕(トス)の上げ方を調整したのち、インパクトに集中すれば大丈夫では?」と思われるかもしれません。
確かに、トスの動作から、ボールを打つインパクトの瞬間までには時差がありますけれども、インパクトだけボールに集中しようとしても、できるものではないのです。
インパクトでボールに集中するには(タイミングよくボールを捕えるには)、トスの段階から、いえもっと言えば構えの段階から、ボールバウンシング(ボール突き)の段階から、ボールに集中しておく必要があるのです。
ですから、ノバク・ジョコビッチに代表されるボールバウンシングの回数が多いテニスプレーヤーが少なからずいるのです。
▶プロも1stと2ndで意図的にフォームを変えていない
左腕の上げ方を意図的に調整するというのは、ボールから集中を逸らす行為になるのでNG。
もちろんプロも、球種を打ち分けるにあたって、左腕の上げ方を意図的に調整しているわけではありません。
これは余談ですが、ある大学のテニス部監督が、1stと2ndの連続写真を見比べてみたとき、フォトグラファーが現地で控えておかなければ、どちらがどっちか、フォームからは違いは見分けられなかったそうです。
これは、プロが1stと2ndで、意図的にフォームを隠しているからというわけではありません。
ではプロは、1stと2ndを、つまりフラットと、スピンやスライスを、どうやって打ち分けているかというと、身も蓋もないように聞こえるかもしれませんけれども、「感覚」なのです(その身につけ方は後述します)。
ラケット面の角度とか、振り抜く方向とか、体の開き方とか閉じ具合とか、そういう諸要素は、狙うコースにより、デュースorアドバンテージのどちらサイドから打つかにより、あるいはフォトグラファーがカメラを構える位置により、見え方が変わってくるのであり、それに応じたフォーム解説のキャプションが、連続写真に「後づけ」で添えられます。
プレーヤーが球種を打ち分けるにあたって意図的にフォームを調整しているわけではないのです。
▶まずは「少しの回転」を感じ取る
さて具体的に球種を、どうやって打ち分けるか?
フォームではなく、「感覚」で球種を打ち分けるとはどういうことかというと、自分が打ったサーブの回転を、感じられるようにする。
自分が打ったサーブの回転を、自分で感じられるようになると、球種を打ち分けられるようになるのです。
最初は回転を、「少しかける」程度で構いません。
少しかけた回転が、自分で認識できる感受性が大切。
少しの回転を感じられるようになると、あとは回転数を増やすことは簡単なのです。
スモールステップから入り、ステップバイステップで大きな課題へレベルアップしていくと無理がありません。
スライスサーブのための「バナナスライス」や、スピンサーブのための「ポジションダウン」は、そのための工夫です。
だけどみんな、逆をやる。
最初からたくさん回転をかけようとするものだから、つい力が入ったり、雑な打ち方になったり、極端な振り上げ方になったり、ガシャッと打ったりして、回転がかかっている感じがつかめないのです。
▶「噛み合う感覚」をつかむ
たとえば「ハサミ」です。
「バカとハサミは使いよう」
これは、能力のない人をバカにしたことわざではなく、使うユーザー側のスキルの巧拙を問うています。
刃をカシャカシャ開閉するだけで紙が切れない「空振り」になった経験は、ないでしょうか?
そのとき、開閉のスピードを速くしたり、力を入れたりしても、切れないものは切れません。
しかし、刃と、切ろうとする紙とが、噛み合うような「感覚」ってありますよね。
テニスのサーブでスピンやスライスの回転をかけるとは、この「感覚」をつかむようなものです。
ボールとストリング面とが、噛み合う感覚。
それに応じて「切れのある回転」が生じます。
フォームはそれに応じて自然と現れるだけ。
感覚がつかめると、たとえば厚紙や、逆の薄い半紙、切りにくいビニールや湿布なども、上手く切れるようになります。
フォームを工夫するのではなく、この切れる「感覚」をつかむのです。
▶回転はすでに、かかっている
回転をかけるには、ご質問にいただいたように、左腕の上げ方を含め「フォーム」を意図的に調整する必要があると考えてしまいがちです。
そうではなくてまずは少しだけでも、回転がかかっているかどうかを感じてみてください。
フラットとの違いがあるか、わずかに回転が生じているか、という差異を感じるのです。
そもそも「無回転のフラット」というのはほとんど存在せず、回転をかけようとしなくても、ボールには何らかの回転がかかっています。
打つボールには、かけようとしなくても回転がかかってしまっている。
他人に見てもらって、回転がかかっているかどうかを判断してもらっても、意味はありません。
その回転を、自分自身が「感じ取れる」かどうかが、回転系のサーブを習得するにあたって大切なのです。
また、感じられれば、より多く回転をかけようとするときには「トスはこっちがいい」「左手の動かし方はこんな感じ」といったことを頭で考えるまでもなく、合理的なフォームや自分に合った打ち方が、自然と現れます。
▶「公文式」のブレイクダウンを取り入れる
「感じる」というのは、何も「手応え」だけに頼る必要はありません。
目で見るのも、耳で聞くのも、「感覚」です。
ですから打ったサーブにどんな回転がかかっているかを、目で見て「感じる」ようにする。
そのためには視認しやすいように、ボールにマジックで十文字のラインを描き入れたり、「PLAY & STAY(プレイアンドステイ)」のような2色のボールを使ったりするのも有効です。
柔らかくて回転をかけやすい「PLAY & STAY」を大人が使うというのも、スモールステップ化する工夫となるでしょう。
できるレベルまでブレイクダウンするのが「公文式」の優れた特徴です。
上へ上へと昇るばかりが、学習ではありません。
下へ降りる学びもあるのです。
あるいは、打ったサーブのインパクト音を、耳で「感じる」ようにする。
回転がかかった場合とかかっていない場合とでは、どんなインパクト音の違いがあるでしょうか?
ところがフォームを意図的に調整しようとすると、いちばん間近で聞いているはずの自分でさえ、インパクト音が「聞こえない」から、いつまで経っても「感覚」がつかめないのです。
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