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テニス上達メモ043.コートを「横長」に使って、バナナスライスサーブをマスター。「曲がる&滑る率」がアップ!

スライスサーブの習得に役立ちそうなポイントを、ふたつ取り上げます。

極端に曲がって横滑りする「バナナスライスサーブ」の実装法。

まずひとつ目として、スライスサーブは「横曲がりしながら落ちる」イメージを装備する。
 
特に、「落ちる」という点が、見落とされがちではないでしょうか。
 
スピンサーブは「落ちる」と一般的に認識されていますが(※注1)、スライスサーブも、回転量にもよりますけれども、落ちる性質の球種です。
 
たとえば 右利きの場合、サイドスピンをかけて打つとボールには左へ曲がる揚力が働くため、直線的に飛ぶ推進力の強いフラットサーブに比べて、スライスサーブは落ちやすくなる、などとご説明できそうです。

先に、回転による弾道変化のメカニズムについてさらっておくと、テニスプレーヤーにとってなじみ深いのはトップスピンでしょう。

進行方向に対して順回転するボールを打った場合、ボールの上側は回転方向に対して空気の流れが逆らうぶん(アゲンスト)、流速が遅くなるから気圧が高くなります

一方ボールの下側は、回転方向と空気の流れが沿うぶん(フォロー)、流速が速くなるから気圧が低くなります

空気は流れが遅いと圧力が高くなり、速いと圧力が低くなります。

そして力は圧力の高い方向から小さい方向へ働くから(ベルヌーイの定理)、トップスピンは下向きの揚力を得て落ちやすくなると説明できます(マグヌス効果)。

ではスライスサーブに話を戻すと、プレーヤーから見た場合、ボールの右側は進行方向に対して回転による空気の流れが逆らうぶん(アゲンスト)、流速が遅くなって気圧が高くなる一方、ボールの左側には進行方向に対して回転による空気の流れが沿うぶん(フォロー)、流速が速くなって気圧が低くなるため、マグヌス効果により左へ引っ張られる揚力が働いて、弾道がカーブするのだとご説明できます。

うーん、ややこしい。

自分で書いておきながら、ちゃんと説明できているのか、かなり疑わしいものです(笑)。

では要するにここでは、一体何が言いたいのか?

カーブするぶん、直線的に飛ぶ推進力の強いフラットサーブに比べて、スライスサーブは落ちやすいとご説明しました。

ですから高い打点から打つサーブだからといって、打ち下ろすイメージで臨むのは危険という、シンプルかつ周知の事実です。
 
打ち下ろすイメージだと下にいきすぎて、ネットミスを犯します。
 
スライスサーブに限らず、打点の高さからネットの上端、そして相手コート側のサービスラインまでを結ぶラインをトレースすると、どんな球種であってもサーブはご存知のとおり、2メートルを遥かに越える身長がないと、打ち下ろすと入りませんよね。
  
ですから、ネット上端からギリギリの弾道ではなく、余裕を持ってたとえば50センチ上くらいの高さを通過するイメージで打つと、いつも申し上げているストロークと同様にネットミスもしにくく、なおかつスライスサーブは落ちるから、オーバーフォールトもしにくいのです。
 
サーブの入る確率が低いプレーヤーは、特にネット上端ギリギリを狙いすぎるきらいがある。
 
そうしないと、対戦相手コート側のサービスラインを越えてオーバーフォールトしてしまうイメージがあるからです。
 
しかしそれは「思い込み」
 
実際は、ネット上端以上の高さを通さなければ、サーブは絶対に成功しないのであり、なおかつネット上を通過する高さにはある程度の余裕がないと、入るパーセンテージはどうしても下がるというのが確率論的な提案と言えます。
 
まとめますと、スライスサーブは落ちやすい。

だから余裕を持ってたとえばネットの上端から50センチ上くらいの高さを通過するイメージで打つ、というのが、身につけるうえでひとつ目のご提案です。

次にスライスサーブ習得に関するもうひとつの工夫として、「ポジション」について取り上げます。
 
サーブでポジションの話題というのは、些か意外かもしれません。
 
対戦相手から打たれたランダムなボールに対応するわけではなく、サーブは自分から打ち出すショットなのだから、規定のポジションがある程度定まっていると、「決めつけ」がちです。
 
しかし、特にスライスサーブをマスターする初歩段階においては、この「ポジションの工夫」が、案外役立つのです。
 
どこに立てばいいかというと、ワイドより(コートの端側)にポジショニングする。
 
もちろん試合では、サイドラインの仮想延長線上の外側へ踏み越えてはならない定めがあるので、その範囲内でポジションを調整しますが、練習であればそのルールを取っ払い、もっと端から打つのもアリでしょう。
 
ワイドから打ったほうが、コートを「横長」に使って大きく曲げる感覚をつかみやすいというのがその理由。
 
センターから打つと、つい直線的な「縦長」の弾道範囲をイメージしてしまい、フラットサーブに近い中途半端なスライスしか打てず、横回転をかけながら左に曲がる揚力を利用して打つバナナスライス感覚を、イマイチつかみにくいのです。
 
ダブルスではもちろんですが、シングルスでも初めのうちは、ワイドよりのポジションから打つ、コートを「横長」に使った実験をお試しいただければと思います。
 
曲がるイメージを、つかみやすいですからね。
 
そしてスピンサーブの話で触れたのと同様、「落ちる」以上に、バウンド後に「横滑りする」イメージを、ワイドからスライスサーブを打つポジションの工夫により、装備しやすくもなるのもメリットです。
 
練習としてのみならず、実戦的な観点から言っても、横曲がり・横滑りするバナナスライスの「クセ球」は、対戦相手にとって対応しにくいものです。
 
逆にどれだけ速くても、素直な球筋のサーブだと、対戦相手に間もなく対応されてしまいます。
 
なのでひとまずスピードは、それほど求めなくて構わない取り組み方をおすすめ。
 
むしろスピードを求めすぎると「曲がる&滑る率」は減少し、なおかつシングルスでは特にワイドよりから打った場合、自コート側にできたオープンスペースへ対戦相手からリターンを打ち込まれると、時間的にカバーしきれなくなるリスクもありますので。
 
ですから、いたずらにスピードを求めず、「曲がる&滑る率」を高めたバナナスライスのクセ球で対戦相手を追い込み、その間に、オープンスペースを埋めるポジションの回復を図ります。

ぜひ、スライスサーブを身につけるための「練習」として、そして実戦でも対戦相手を追い込む「武器」として、お楽しみただければと思います。

※注1
スピンサーブは本編で述べたとおり「落ちる」認識が広まっていますけれども、落とそうとするイメージで臨むのは得策ではありません。
 
むしろバウンドしたら「弾み上がる」イメージ。
 
「落ちる」と「弾み上がる」とでは、ベクトルが真逆です。
 
そして体は、「落ちる」イメージに従うと萎縮したスイングを行ない、「弾み上がる」イメージに従えば、ダイナミックなスイングを行ないます。
 
それはそうですよね。
 
ピンポン球でも、地面に落とそうとする場合と、高く弾ませようとする場合とでは、腕の振り方が全然違ってくるはずです。
 
落とそうとすれば、「置きにいく動き」になるし、弾ませようとすれば、「叩きつける動き」になります。

体はイメージに従って動くという原則を、どうぞお忘れなく。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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