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世の中どうよ

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世の中、社会、不満もありましょう。憤りもありましょう。ほっとするニュースがあればいいですね。自分もその中に確かに存在する、その世の中。少しでも別の視点があれば、シェアしたいなと思…
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#本

本の遅配に思う

本の遅配に思う

近所に書店がない。少し離れたところに大きな書店がある。だが、願う本を置いているとはなかなか言えない。私の欲しがる本は、そこらに並ぶような本ではないからだ。そこで、Amazonで注文することが多い。それがまた、書店を減らす原因にもなっていることを心苦しく思うが、実際、入手には基本的にそれしかない。
 
業界では、配達員の問題もいろいろ起こっているが、とにかくここまで届けてもらうのはありがたいことであ

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温故知新というわけではないが

温故知新というわけではないが

京都にも、古本屋があった。東京の規模には劣るだろうが、大学生の街だから、あるいは古書マニアがいるから、けっこうな商売だったと思う。いまなら、売れ筋の本を集めたブックなんとかというお洒落なチェーン店しか知らないような人もいるかもしれないが、私の学生当時はやっぱり「古本屋」だった。
 
独自のあのにおいがぷーんとする。狭い通路の両側に、ぎっしりと本が詰まっている。岩波の専門書は地味な函入りが普通だった

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誰のために生きるのか

誰のために生きるのか

『ほんとはこわい「やさしさ社会」』(ちくまプリマー新書・森 真一) を読んでいた。この新書シリーズは、「岩波ジュニア新書」に近いコンセプトをもっている。ティーンズが読みやすいように配慮されている。が、もちろんアダルトが読んでも構うまい。一貫した姿勢で述べ、幾度も繰り返される口調で、誤解なく著者の主張は伝わるものと思われるし、それは大人にとっても分かりやすさという点で同じである。
 
もちろん、こう

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『精神現象学』(100分de名著)に学ぶ

『精神現象学』(100分de名著)に学ぶ

NHKEテレの「100分de名著」も、ずいぶん長く続いている。始まるときのこともよく覚えている。よい番組だ。よくつくりこんでいる。先月には、新約聖書の福音書が、若松英輔さんのよいリードで紹介された。聖書を、読んでみようという気持ちにさせる番組となった。制作者自身がそういう心になったし、世間の評判もよいようだ。これは特筆すべき現象である。
 
これをどうしてキリスト教界がもっとバックアップしようとし

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間違っているのは私のほうだろうか

間違っているのは私のほうだろうか

「サン・ジョルディの日」である。書店が瀕死の状態になっているというが、私もそれに加担している以上、聞こえのよいようなことを言うつもりはない。せめて本を買うことに関してだけでは、出版界に参与していると言わせてもらえれば、と願っている。
 
先日、あるキリスト教関係の出版社のサイトを訪ねて、ある本の紹介文を読んでいた。すると、文意が解せないところがあった。
 
その本がAという本だとしよう。その本は、

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『「神様」のいる家で育ちました』(菊池真理子・文藝春秋)

『「神様」のいる家で育ちました』(菊池真理子・文藝春秋)

2022年の流行語とすらなった「宗教2世」であるが、本書はサブタイトルに「宗教2世な私たち」という形で、その実態を訴えることとなった。この言葉が世間に知れ渡ったのは、2022年7月の、安倍元首相の殺害事件を通してである。その容疑者の身の上を表す言葉として、それが浮かび上がった。
 
本書は、その前に書き上げられている模様。だから、決して「ブーム」に乗って売ろうとしているわけではない。尤も、本来集英

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『死刑について』(平野啓一郎・岩波書店)

『死刑について』(平野啓一郎・岩波書店)

話題になっていた。真っ白な表紙のデザインがいい。真っ白な心で頁を開くとよいだろう。死刑については一般に、賛成と反対と意見がわりとはっきりしているように見えるが、どちらの考えの人も、まずはよく聞いてみよう、という意味だ。
 
本書では、賛成の立場を「存置派」、反対の立場を「廃止派」と称しているので、私もそれに倣って記すことにする。
 
2019年開催の、大阪弁護士会の講演会の記録をもとに、2021年

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