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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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#説教

『加藤常昭説教全集24 ペテロの第一の手紙・ヨハネの手紙一』(加藤常昭・教文館)

『加藤常昭説教全集24 ペテロの第一の手紙・ヨハネの手紙一』(加藤常昭・教文館)

加藤常昭先生の本は、振り返ってみると、ずいぶん読んでいる。代表作はもちろんのこと、聖書講話シリーズや、道シリーズなどもある。翻訳ものを含めると、個人別にして一番多く持っているだろう。だが、「説教全集」は、一冊も持っていなかった。なにしろ高いのだ。そして、きりがないからだ。
 
しかし、D教会で一年間説教を続けた2003年度のものが入った巻があるという。D教会のH牧師から聞いたので、「これは」と思っ

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語る者のことば

語る者のことば

説教塾ブックレット。21世紀になってから、「説教塾紀要」の一部を一般に広く知ってもらうために、というような形で発行されたシリーズがある。その第11弾として、2012年に『まことの説教を求めて』が発行された。副題に「加藤常昭の説教論」と付いており、著者は藤原導夫牧師である。説教塾の一員であり、要でもある。
 
今回は、その書評のようなことをするつもりはない。ただ、そのごく一部から励まされた点を証しし

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『説教25 説教塾紀要』(教文館)

『説教25 説教塾紀要』(教文館)

自分の手の届く世界ではなかった。説教のプロたちの営みは、遠い雲の上の世界だった。「説教塾紀要」の存在は知っていたが、自分が読むようなものではない、と思っていた。
 
だが、主宰の加藤常昭先生の最後の説教が掲載されていると聞き、迷わず購入の手続きをとった。2024年3月発行の最新版である。
 
2023年10月8日のその礼拝の末席を私は汚していた。加藤先生と時を共有してその説教を聴くのは、初めてだっ

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『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

(トマス・H・トロウガー;レオノラ・タブス・ティスデール・吉村和雄訳・日本キリスト教団出版局)
 
私にとって3000円+税とは高価な本だ。だが、気になっていた。キリスト教の礼拝説教というものに執着のある私だから、テーマが気になる、というのも事実だ。だが、この共著の一人が、トロウガーであるという点が、どうしても見逃せなかった。『豊かな説教へ 想像力の働き』を読んだからだ。日本の説教塾でも、説教と想

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逆説と説教

逆説と説教

「逆説」として自分が発案して説を出すとき、世間の人が騙されているのに自分だけは真理を見出した、のような心理を含んでいることがある。
 
はたして逆説とは何か。こういうときに、昔は決まって「広辞苑」によると……と言っていた。広辞苑信仰があった世代に染みついた性であるのかもしれない。少なくとも、それだけを権威にして寄りかかろうとはしないほうがよいだろう。
 
因みに、旧い広辞苑では、「逆説」について、

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リスナーあっての完成

リスナーあっての完成

NHKが昨年から、ラジオ百年を迎えるにあたり、ラジオ放送の意義を振り返るような企画を次々と送っている。単発的な特集もあるが、毎週日曜日に放送されている「伊集院光の百年ラヂオ」が、私のお気に入りである。
 
伊集院光とアナウンサーの礒野佑子とが二人で送る番組で、ちょうど礼拝の時刻に放送されるため、私は後から聞いている。貴重なラジオ音源から、ラジオの歴史を繙くものである。
 
すでに「100分de名著

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説教と聖書

説教と聖書

礼拝説教を重んじるボーレンは、聖書朗読はどうしても必要であるわけではない、とその『説教学Ⅰ』でしきりに主張している。他方、聖書そのものが神の言葉であるから、その朗読こそが命である、と言う人もいる。ボーレンは、説教がその都度神の言葉となる、という方向で説教を見ている。それは、語る者がどうであれ、という辺りも考察しているから、必ずしも理想的な説教者を想定しているわけではないようだ。
 
それを読んでい

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『主イエスの背を見つめて 加藤常昭説教全集26』(教文館)

『主イエスの背を見つめて 加藤常昭説教全集26』(教文館)

副題が「福音の真髄」と書かれているが、これについては「あとがき」に触れられている。たぶん、全編読み終えて、最後にそれを味わうとよいだろうと思う。
 
加藤常昭説教全集は、教文館より、2004年に発刊開始、2021年に完結した。全37巻の見事な全集である。かつてヨルダン社で20巻ものとしてあったが、それに17巻を加えた形で完結した。
 
すでに高齢で、視力に支障を生じていた加藤氏のおもな説教は、その

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『イエスの降誕物語 クリスマス説教集』(及川信・教文館)

『イエスの降誕物語 クリスマス説教集』(及川信・教文館)

日本基督教団の牧師である。その説教集が何冊か出版されている。私は好きだ。
 
神の言葉を自分における出来事として聴く。それを語る。また、安易にキリスト教を弁護しない。むしろ、キリスト教世界や教会の中に、とんでもない罠が潜んでいることを感じており、それを告げるのに憚らない。
 
私がもし牧師だったら、きっとこの人のように語るだろう。考えるだろう。だから好きだ。非常に共感できる、ということだ。
 

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『神の国 説教』(及川信・一麦出版社)

『神の国 説教』(及川信・一麦出版社)

体を壊しての中で、教会で説教を語り続ける。偶々その教会から転任してゆく頃に、ルカによる福音書から講解説教を展開した。今回、その中から特に「神の国」を含む聖書箇所から語られた説教だけが集められた。ユニークな編集である。
 
神の国。それは、神の支配を意味する語である。教会で説教を聞く者は誰でも知っている。土地のことを指す言葉ではない。そして、一般にしばしば「天国」と呼ばれているものがそれであることも

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説教を読む

説教を読む

礼拝説教は、語りの中にこそ意味がある。それが本筋であろう。その時、その場で語りを聞く。そこに、神の力が働く。古来、文字を読むというのは特別な能力であり特権であったのだから、言葉は本来聞くものであった、というのは本当だろう。
 
礼拝説教は、ユダヤ教がエルサレム神殿詣でがままならぬ事態になってからは、あるいは広い世界に散っていった民族の礼拝においてだからこそ、地域の会堂における礼拝の中で、浮かび上が

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『聖書的説教とは?』(渡辺善太・日本基督教団出版局)

『聖書的説教とは?』(渡辺善太・日本基督教団出版局)

加藤常昭先生のお薦めであった。1968年発行の本である。探すと入手可能だった。半世紀以上前の本である。届いた本は日焼けしていたが、線引きなどなく、気持ちよく読めた。
 
渡辺善太(ぜんだ)は、牧師も務めたことがあるが、印象としては説教者である。神学校で教えることも長かったと思う。とにかく「説教」について極めようと努めた方である。本書には、その説教への熱い思いがふんだんにこめられている。
 
自分の

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『わが主よ、わが神よ』(竹森満佐一・ヨルダン社)

『わが主よ、わが神よ』(竹森満佐一・ヨルダン社)

発行年は、実は2冊の分冊版の発行時である。手許にあるものは、1977年に一巻本となったものである。450頁を超える厚みのあるものになったが、これは1冊になってよかったのではないか、と私は思う。かつてはかなり高価な感覚があったのかもしれない。
 
発行から半世紀を経てようやくお会いできた。伝説の本である。2016年に新装復刊しているが、私は旧いほうで入手した。説教に生涯を賭けた加藤常昭氏が「日本説教

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心の温度が上がる

心の温度が上がる

「心の温度がちょっと上がるような、そんな音楽との出会いはありましたか?」
 
TOKYO FMの「Memories & Discoveries」のエンディングで毎回アナウンスされる言葉が心地よい。今をときめく早見沙織さんの、上品な言葉と人を癒やす声とに、火・水・木の朝は支えられている。朝4時から5時半までなので、私は当然radikoのタイムフリー機能を利用している。
 
「心の温度」。もちろん一種

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