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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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2022年8月の記事一覧

『キリスト者として生きる』

『キリスト者として生きる』

(ローワン・ウィリアムズ・ネルソン橋本ジョシュア諒訳・西原廉太監訳・教文館)
 
ある方に強く薦められた。信頼している方なので、迷いなくすぐに注文した。訳者についてはそのあとがきで知ったが、若い方だった。しかし訳文は的確だろうと思われる。ひじょうに読みやすいし、内容もスムーズに伝わってきた。その訳の原稿を読むのを手伝った人の一人もまた若い人だったが、知っている人だったので、不思議なつながりを覚えた

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警告

警告

自分もまた、不愉快なことを言ったり、したりしているはずだ。悲しい哉、自分ではそれを、相手が感じるようには認知できないのが常なので、たとえ自ら気づいたにしても、相手が感じることとの温度差は否定できない。世にある加害者と被害者との理解の相違というものが、それを如実に表している。
 
だから、自分が嫌なことをされた、と意識したときにも、した側は悪いことをした、とは思っていないだろう、と考えるのが、ひとつ

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扉を開いて

扉を開いて

ちょうど『ジンメル・コレクション』(ちくま学芸文庫)を読み終わったところだった。ジンメルという哲学者については、好みが二分されるそうだ。鋭いところに目をつけた面白い思想だ、と評する人もいるし、底の浅い思想だと軽く見る人もいるという。いまでこそ、現象学的な手法で、様々な日常の出来事やそこでの心理に近づくということもよくあるが、ジンメルは19世紀の人である。なかなかの慧眼だったのではないだろうか。
 

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ゆっくりと読む本

ゆっくりと読む本

持ち歩き用の本と、家で読むための本とを、区別している。そして私は、並行読みをするタイプだ。一冊の本に熱中して、一日中そればかり読む、ということは、まずやらない。一冊について10頁以上をノルマとして、ちまちまと読むのである。
 
もちろん、その本のタイプや内容により、ノルマは様々である。なかなか簡単に読み進めない哲学書でも10頁以上を読もうという目標のようなものである。このコロナ禍のお陰で(という表

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『「神の王国」を求めて』(山口希生・ヨベル)

『「神の王国」を求めて』(山口希生・ヨベル)

新刊書が紹介されたときには一応チェックするが、諸事情で後回しにされ、ついに買わなくてもいいか、の世界に閉じ込められていたタイプの本。改めてその紹介を見ると、これは読みたいと思うようになり、発売後1年半してから手に入れた。
 
神の王国。それにカギ括弧がついている。元の語は分かる。いわゆる「神の国」と訳されている語であり、時に「神の支配」の意味だと説明される語である。サブタイトルに、「近代以降の研究

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聖書の語の捉え方についての一案

聖書の語の捉え方についての一案

聖書の中で、「信仰」や「信頼」などと訳されている「ピスティス」が、最新の聖書では「真実」とも訳されて、議論を呼んでいる。
 
どだい言語が違えば、指している概念も異なる。『ことばと文化』(鈴木孝夫)が、「lip」という英語が「唇」ではなく、lipからは毛が生えるのだ、と説いたのは非常に説得力があり、印象的だった。その概念が包摂しているものが、ぴったり重なるということは、あまり期待できないのである。

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世の終わりを

世の終わりを

聖書は、「世の終わり」について、しきりに叫ぶ。ユダヤ文化の時間概念の中には、直線的で、終末がある、という観点が確かにある。
 
日本史でも「末法思想」というものがあった。仏教思想に基づくもので、たとえば平安から鎌倉時代に大いに広まった。ブッダの思想が、衰える、あるいは滅びるというような考え方に基づいているのだという。
 
当時は、武士の台頭により、歴史が大きく変わる頃であった。世の乱れや変化を見て

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聖書を説かずして聖書が命となる

聖書を説かずして聖書が命となる

イエス・キリストだったら、何と言うだろうか。どうするだろうか。キリスト者は、しばしばそれを考える。答えが出るわけではない。それはこうだ、と決めつけてしまうことはできない。だが、そうすることが、信仰のひとつの原点であると言えるだろう、とは思う。
 
「十字架につけろ」と叫んだ人々のあの熱狂は、エルサレム入城から一週間と経たなかったときに燃え上がったが、現代の情報過多の中で、人の性がかつての時代と変わ

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医療崩壊を起こしたのはわたしだ

医療崩壊を起こしたのはわたしだ

いよいよ病院が機能しなくなってきている。自分が医療崩壊を起こしている、という自覚がない人が多いだろう。マスクなんか、と外したことは、医療崩壊の原因である。消毒を怠ったことは、医療崩壊の原因である。
 
だったらどんな小さなことでも、原因となるのか。おまえはどうなんだ。そう言われるかもしれない。はい。私も、医療崩壊を起こした当事者である。そういう意識でいる。
 
世の人は、そんな馬鹿な、と、こうした

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『死と命のメタファ』(浅野淳博・新教出版社)

『死と命のメタファ』(浅野淳博・新教出版社)

まるで教科書のように、適宜まとめ、練習問題を投げかけながら、進んでいく。学ぶにあたり、親切な構成となっていると言えるだろう。
 
サブタイトルがしっかり付いている。「キリスト教贖罪論とその批判への聖書学的応答」、これはなかなか本書の核心をよく示している。まさにそれが論じられている。また、帯には、このようにある。「「贖罪」とは何か? イエスの死と命の救済論的価値とは何か? キリスト教の核心的な問いに

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今週、生きていける

今週、生きていける

夏期講習が始まっている。ふだんの日曜日は仕事に出ないことにしているが、夏期講習となると、それを避けることは現実的に無理である。しかし理解して戴いているので、午後の礼拝があるというなら、その時間帯には授業を入れない、という配慮を受けている。
 
ところが、最近は、午前のリモート礼拝に命を受けている。困ったが、その午前の礼拝も、その週のうちには、数日内に、編集された説教映像が見られるようにしてくれる。

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