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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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2022年5月の記事一覧

『説教 十字架上の七つの言葉』(平野克己・キリスト新聞社)

『説教 十字架上の七つの言葉』(平野克己・キリスト新聞社)

ようやく手に入ったのが、5月。3月の発行以来、待ち焦がれていた。
 
副題に「イエスの叫びに教会は建つ」とあるが、すべて看板に偽りなしであった。加藤常昭先生の弟子として、日本の説教をいま背負っているような人の、実に意外なことだが、初の説教集である。これを期待しないで、何を期待すればよいのであろうか。
 
時は2020年、イースターを前にした2か月の間。覚えておいでだろうか、新型コロナウイルス感染症

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大学と問い

大学と問い

私は不良高校生だった。社会悪をしていたという意味ではなく、勉強に不誠実だった、という意味だ。しかし、優等高校生も世の中にはたくさんいる。ストイックに受験勉強に向かい、目的を達成して、花の大学生活が始まった人も多いだろう。
 
そこへ待っている魔の手がコミカルに表現されたのが、「四畳半神話大系」で、いま福岡ではそのアニメが放映されている。再放送らしいが、私は初めて見たので、新鮮に喜んでいる。実にクリ

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最後の提言

最後の提言

最近、私の中の常識ががたがたと揺さぶられ、崩されることがよくある。私だけがおかしくなったのだろうか、と暗い気持ちにもなる。以下、純粋に分からないこと、なんとかそれを理解しようとした末の、勝手な推測と意見を含めた内容を述べることとする。とはいえ、事実を踏まえたものであることは、当然である。
 
まずは私の偏見めいた感想から。取り上げた聖書箇所が全く言っていないようなことを結論とする「説教」。それは、

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私の4630万円

私の4630万円

世間は、4630万円の話題でもちきりである。「山口県阿武町が新型コロナ対策の臨時特別給付金4630万円を誤送金したと知りながら、別口座に移し替え不法に利益を得た」若い男に対して、ついに逮捕状が出たのである。
 
ある日、通帳に数千万円が振り込んであるのを知った。これは儲けものだ。もう自分のものだ。好きに使っていいはず。間違いだったとしても、振り込んだほうが悪い。
 
報道も捜査もよく分からない。全

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祈りと説教

祈りと説教

ほかの人のために祈ることを、「執り成し」という。京都の教会にいたときは、私もずいぶん若かったから、お年寄りの教会での祈りを、しみじみ聞いていた。Nさんというおばあちゃんがいて、もう礼拝にもあまり出てくることができませんでしたから、牧師がそのNさんをよく訪ねていたので、礼拝説教の中でも触れることがあった。
 
祈りの課題を、もはやなかなか覚えていられない。そこで考えたNさんは、紙に書くことにした。こ

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聞くに堪えない

聞くに堪えない

隠退(引退)牧師たる加藤常昭氏へのインタビューが、NHKラジオR2で2週にわたって放送された。私の場合は録音させてもらったが、6月半ばまで、ウェブサイトで聞くことができるので、関心をもたれた方は、直接アクセスできる。加藤氏は哲学を学んだ方でもあり、その話は、明快で、筋が通っている。評価はいろいろあるかもしれないが、今日の日本の教会の説教に多大な影響を与えた人の声を、一度受け止めるとよろしいかと思う

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『ここが変わった!「聖書協会共同訳 旧約編」』

『ここが変わった!「聖書協会共同訳 旧約編」』

(大島力・小友聡・島崎克臣編 日本キリスト教団出版局)
 
2018年末に出版された、日本聖書協会の新しい聖書。30年を経ての言葉の変化を背景としているとも言えるけれども、新しい研究や見解を踏まえていることが、今回非常に目立っている。これまでの教義や神学を変えねばならないほどにまで、その変更が及ぶことがあるとなると、教会もすぐに全面的にこの聖書を取り入れることは難しいかもしれなかった。
 
比較的

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偽物について

偽物について

キリスト教のいわゆる「福音派」が、あまりにも純朴に「聖書は誤りなき神の言葉」であると主張することについて、抵抗を覚える人がいる。そんなはずはないじゃないか、と。歴史的に、あるいは論理的に、時には人道的に、聖書が真理だけを述べているということについて抵抗を覚えるのであろう。
 
哲学者カントもそうであった。当時は、聖書を批判的に口にすることは、社会的に生きていけないような環境にあったから、それなりに

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