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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2022年9月の記事一覧

『他者と生きる』(磯野真穂・集英社新書)

『他者と生きる』(磯野真穂・集英社新書)

なにかと「他者」というキーワードには弱いので、手頃な値段で手に入る情況の中で、購入した。「リスク・病い・死をめぐる人類学」というサブタイトルが、もうひとつピンとこなかったので、最初はあまり期待していなかった。
 
序論から入る。本書は、医学に焦点を当てているという。それで病いと死なのだ。著者のプロフィールにも、医療人類学という、見慣れない文字が入っているではないか。私は、この「医療人類学」という言

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『「美味しい」とは何か』(源河亨・中公新書)

『「美味しい」とは何か』(源河亨・中公新書)

サブタイトルの「食からひもとく美学入門」は、まだよかった。帯に「ラーメンは芸術か?」と書いてある。これが一冊を貫いているところにまでは、読む前には気づかなかった。とにかく、ラーメンで話を押し通すのである。ラーメンに関心のない人は、読むのが辛かっただろうと思う。
 
議論は読みやすい。何が論点であるか、それに対して自分はどう思うか、これについて明確に打ち出していくからだ。新書もここまできたかと思わせ

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『すずめの戸締まり』(新海誠・KADOKAWA)

『すずめの戸締まり』(新海誠・KADOKAWA)

2016年の「君の名は。」で、アニメ映画界のトップに躍り出た新海誠監督。2019年の「天気の子」も、その地味なタイトルとは裏腹に、非常に高い評価を受けた。それから再び3年の期間を経て、2022年11月11日に「すずめの戸締まり」が公開されるはこびとなった。そう、11日である。
 
映画にはどれも、自身のノベライズが存在する。あるいは、小説を描いた後で、映像化をしている、と言った方がよいかもしれない

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『現代思想2022年8月 vol.50-10 特集・哲学のつくり方』(青土社)

『現代思想2022年8月 vol.50-10 特集・哲学のつくり方』(青土社)

面白かった。そもそも哲学とは何か。そんなベタなことを問う企画が、近年殆ど見られなかった。あるのは、100年前に生まれたような方々の、真面目な人生論が問いかけて、哲学とは、と語るようなものばかりだった。ポストモダンすら歴史的産物となったような中で、もはやかつての哲学などという姿とは無縁な思想状況となっているようだ。互いに通じない言語を用いてあれこれ論評するかのようなものが、なんだかファッショナブルに

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読書の契機と今後

読書の契機と今後

中学生のとき、数学が面白かった。それで、大学でも数学を学ぼうと漠然と考えていた。だが、勉強以外のことに熱を入れたこともあり、数学というものをそれほど真剣に考えていたわけではなかった。数学科を受験したが、かなわなかった。当然だったと言える。
 
その頃、哲学という分野があることを知った。いや、自分の関心のあることが、ひとつの学問として存在しているということを知った、と言ったほうがよかった。なんと知恵

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