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哲学のかけら

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哲学も少しはかじっています。なにもそんなこと考えなくてもいいんじゃない、と言われるところも、でもさ、と考えてみる、それが哲学。独断と懐疑に終わらずに常に自分の至らなさを認めるあた…
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2021年10月の記事一覧

「護られなかった者たちへ」

「護られなかった者たちへ」

妻がどうしても見たいと言ったのは、佐藤健さんの故であったが、ようやく機会ができて、貴重な午後をこの長い映画で満たした。
 
もちろんネタバレは御法度である。映画のストーリーや見所をお伝えするのはよろしくない。ただ、東日本大震災を踏まえた話であること、保健福祉センターが舞台であり、その生活保護というデリケートな事柄について深い問題意識をもたらすこと、これくらいは触れてもよいものと判断する。
 
震災

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本当にそれでいいのか

本当にそれでいいのか

「民主主義」は絶対的な善である。
「分断」は悪である。
 
本当にそれがすべてなのか。そこから何か間違った道に水が流れていくようなことにはならないか。こうした眼差しで、世を見張ることにも、キリスト者は神から期待されているものだと考えている。
 
たとえば「民主主義」は、古代ギリシアのプラトンからみれば、衆愚政治であり、人間社会を滅ぼすものと見られていた。もちろん時代背景や政治状況がいまとは異なる。

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『ポストコロナの生命哲学』(福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史)

『ポストコロナの生命哲学』(福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史)

2021年9月発行の集英社新書。ポストコロナを冠する類書はたくさんあるが、これはたぶん抜群のものであると思う。尤も、経済の動向にしか関心がない方にとっては落胆するだろう。人類文明の行く先を、冷静な眼差しで見つめる、現代的な哲学の観点から学びたい人にとって、抜群だということだ。
 
かつて『生物と無生物のあいだ』が広く読まれた福岡伸一氏。そこで直接扱う暇はなかったが、扱うことも可能であったと思われる

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