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「絵画音楽」の景色 Download vr.

20世紀の抽象絵画を手掛かりに、21世紀に瞑想体験と抽象絵画をブリッジしたメディテーションフィールドを開始、その可能性を追う画家の美術論考。

抽象絵画再考」4
「絵画音楽」の景色 Download vr.

VR、AR等のメディアが登場し、視覚表現が拡大される現代において、あえて「絵画と音楽」という古典的な芸術を合成した、芸術概念「絵画音楽」の意味を考えてみる。

あえてというのは、より過剰になりがちなメディアやエンターテインメントを求める風潮に一石を投じる意味もある。

何が特殊なのか言葉にするのが難しい
「絵画音楽」

「絵と音楽を同時観賞する完成形の作品」は、歴史的にも珍しいコラボレーションアートだ。

双方がインスピレーションを片方から得てテーマやモチーフに使う例は過去現在で沢山ある。

音楽からインスピレーションを得た絵画

マチス JAZZ

絵画からインスピレーションを得た音楽

ドビュッシー  交響曲 「海」

instagramで#PaintingMUSIC で検索すると
この手の作品が現在も大量に出てくる。

「絵画音楽」がこれ等と明確に異なるのは
「絵と音楽を同時観賞する完成形の作品」で、どちらが鑑賞に欠けても成立しない事が特徴でもある。

「絵画音楽」推敲の前に、ビジュアルと音楽のコラボレーションについて考えてみよう。比較において「絵画音楽」の輪郭が観えて来るだろう。

先ず思い浮かぶのはレコードジャケットやCDのカバーアート。

これ等はパッケージ、音楽家や音楽のイメージ補完的な役割を持ち、広告も兼ねたグラフィックデザイン領域。

これ等のアートWORKは音楽と切り離せ無いが、音楽を聴いている間、じっと鑑賞する様なものでは無い。音楽の世界観を広げる為の補完的な視覚演出、音楽世界への導入の役割を持つ。

主従関係性は明らかに音楽にある。
映像化されたプロモーションビデオも同様だ。

映画は映像と音楽で出来ていると言っても良いぐらい音楽と相性が良いメディア。
映像も音楽も時間軸のあるメディア=メディウムだからこそ、相性はいい。

だが、やはり主従関係があり映像に比重がある。音楽は物語の進行を助ける心理的効果に主に使われる。

映像では無いが、ゲームも独特の空間や時間を作る為の演出的な役割を音楽が担うが、主従関係は先の例と同じラインにある。

映像や映像素材のメディアアートは近い領域だ。「絵画音楽」はここに入りそうだが、違和感もある。

音楽と絵があれば出来る「絵画音楽」は極端に言えばテクノロジーは必要ない。誰かが絵の前で歌を歌えばそれは「絵画音楽」かもしれない。

では「絵画音楽」とは何か。

相互に主従関係が無い、一つのメディアアートとして拡がりを持つ、コラボレーションアートと捉えれる。

鑑賞の印象はアクロバティックで、独特の鑑賞感がある。映像的だが動かず、絵画的だが流れ、音楽的だが静止している。

動きと静止の齟齬、引っ掛かりが観る人の中に何かを産み落としていくような感覚。

2010年頃、絵と音楽を合わせて制作観賞する様式を思いついた。曲に合わせて絵を、絵に合わせて曲を作る。片方からのインスピレーションで、もう片方を作り出し同時鑑賞で成立する「絵画音楽」が生まれた。
※前回連載「絵画音楽」

今回のコラボレーションは、相互の共鳴する要素を拡大していく感覚があり、一人で作る「絵画音楽」とは異なった広がりが感じられる。

既存の絵画と曲の組み合わせ、コラージュ。
簡単に出来そうだが、いざやってみると広がりや強度を持つ作品はなかなか作れない。

ある種の奇跡的な組み合わせが必要な事に気付く。

※今回リリースされた「絵画音楽」を下記よりDownload鑑賞出来ます。

「Encounter 」 Download version
http://duenn.bandcamp.com/track/collaboration-work-by-tartaros-japan-duenn-2020-across


Artwork version解説は次回にするとして、
Download versionの特徴をまとめると、

11枚の画像を再生機器のスクリーンセーバー、スライドショー等の機能を使いスマートフォン、テレビモニター、プロジェクター等に表示して観賞する。

観賞環境を再生機器によって変える事で様々なシーンや観賞スタイルを提供出来る特徴がある。

プロジェクターを使えば自宅でインスタレーションを観賞してる感覚。

スマートフォンを机の脇において眺めているとスマートフォン自体がアートになった様な不思議な存在感を放つ。

絵画と音楽、何方でもあり、何方にも無い何かがある。時間軸の無い「絵画」と時間軸のある「音楽」が重なる、この落差に特徴がある。

duennの感想で、
「画像を見ながら、音を聴いているだけですが、とにかく音と絵の相性は良いように感じます。また音と絵は別々のベクトルで進行しながらも、時々共鳴しあうというのが、個人的には1番しっくり来る形だったりします」

絵の進行というのは、スクリーンセーバーの設定で絵が変わっていく「Encounter 」の特徴。
元々はギリシャ数字をモチーフにした「NumberPainting1」という作品だが今回のコラボレーションで「絵画音楽」に生まれ変わった。

NumberPainting1(Ⅰ / Ⅱ / Ⅲ / Ⅳ / Ⅴ / Ⅵ / Ⅶ / Ⅷ / Ⅸ / Ⅹ)

カウントする様に絵の印象が変わって行き、数字が循環する様に絵が循環し、音はそれとは別に進行し、再び遭遇して新たな感覚を作り出す。

絵だけ観ても、音楽だけ聴いても、起こらない感覚。時々共鳴という感覚。
映像の様に常にシンクロする感覚も無い。
絵画と音楽の狭間に出来る余韻と景色。

今まで気付かなかった鑑賞の在り方、
鑑賞者がどの瞬間に何を感じ取るかは様々だ。

「絵画音楽」の窓は開き始めた。


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