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書と生き方研究(これまで)※限定無料公開

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朱紅が主宰する「書道塾tane」、旅する書道「すみあそび」、いろいろな場所でいろいろな人と書くことで見えてきたたくさんの「生涯発達理論」を発信していきます。
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#書道

線とかたち展を終えて

線とかたち展を終えて

6/4~6/9まで仙台のギャラリー「SARP」で行われた斉藤文春さん企画の展示に21名のうちの一人として参加させていただいた。実はわたし自身の「作品」というものをこれまでほとんど発表したことがなく、書道展や公募展では書の作品を書いてきたとはいえ、今回のように本当に自由に、書なのか、絵なのか、なども本当にこだわらずに「やりたいこと」を表現した、というのは初めてに近い。

わたしはそもそもなぜ書くのか

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書くと「見える」世界がある

書くと「見える」世界がある

あっという間に1月も終わります。

そうそう、あっという間、といえば「すみあそび」の時間も体験された方はわかると思うのですが、書くまでは悩んだりしている方も、書き始めるとあっという間、という感覚を味わえます。 時間は平等に刻まれているはずなのに、なぜ「長い」「短い」などと感じるのでしょう。それは、わたしたちの感覚は常に「主観的」だからなんですね。自分の感じたことを基本に、さまざまな事柄を覚え、生き

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「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑥

「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑥

「そもそも前衛芸術とは何かというと、芸術という言葉で代表される美の思考や観念といったものをダイレクトに日常感覚につなげようという試みである」

赤瀬川源平著、「千利休 無言の前衛」を久しぶりに読み返した。買った時にはそれほどひっかかることもなかったのだが、あらためて今読んだら次から次へと唸りたくなる言葉たちが並んでいた。

「ズレたもの、歪んだもの、欠けたもの、見捨てられたもの、そういう人々の意識

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「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑤

「生涯発達」と「書」の関係性を考える⑤

わたしが書道塾を始めるきっかけになったのは、浅野敬志くんが高等部を卒業したとき、母、浅野雅子さんの一言がきっかけだった。アドベンチャークラブで5歳から一緒にいる敬志くんは、浅野さん曰く「重度の知的障害と自閉症」であり、言葉を話さず、自己主張も少なめなタイプである。それゆえに、与えられた指示は淡々とこなすが、「敬がほんとうになにをしたいのか分からない」ということはよく呟いていた。生活介護の事業所に就

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「生涯発達」と「書」の関係性を考える④

「生涯発達」と「書」の関係性を考える④

「沈黙の中身は、すべて言葉」(谷川俊太郎)

 「詩を書き始めようとする時、一枚の白い紙を前にして私はいつも途方に暮れます。何をどうやって書けばいいのか、見当もつかないのです。白い紙がまるで荒野のように思えます。私にできることと言えば、ただじっと待つことだけです。いったい何を待つと言うのでしょうか。」谷川はこう語っています。(谷川俊太郎詩選集1あとがきより)

自分自身のなかにある「言葉」とは何か

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「生涯発達」と「書」の関係を考える②

「生涯発達」と「書」の関係を考える②

独特の空間配置と、字のバランス。ひとつひとつの文字の向きや並び方のおもしろさ。この作品は、どうがんばっても彼にしか生み出せない。彼は、言葉を話さない。自分の名前は書ける。日常的なやりとりはある程度可能である。でも複雑で難しい指示は理解できない。小さい時は、もっと自分の世界があって、その中で泣き、喚き、葛藤し、固まり、動かなくなり、それでも発信する言葉が出てこないということに彼の母親は悩んでいた。

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「生涯発達」と「書」の関係性を考える

「生涯発達」と「書」の関係性を考える

「全世界と匹敵するものとなった紙切れ一枚に、どのような世界を繰り広げるのか。いわば自分が創造主の立場に立たされたその畏れに、作者はおののくのです。」(石川九楊)

「人は生涯にわたって発達し続ける」と言ったのは発達心理学者のエリクソンでした。そもそも人間の成長とは、いわゆる体や脳については15歳くらいをピークに衰えていくものだと言われてきました。しかし、精神というもの、経験値というもの、そのような

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