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たまこんぶのエッセイ

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ワーママの日常で感じた喜怒哀楽をエッセイにした記事をまとめています。たまに思い出話もします。
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#日記

タンポポで4歳児が女の子を泣かせた話

タンポポで4歳児が女の子を泣かせた話

「これね、パパにあげるの」
タンポポを一輪、指先で摘みながら四歳の息子がそう言った。幼稚園の広いグランドで、十一月というのに日差しが強く、とても暖かい昼下がりだった。お迎えに来て、すぐに帰路にはつかず、真っ先にグラウンドでかけっこして、何周も走った先にタンポポを見つけた息子の笑顔は輝いていて、新しい宝物を慈しんでいるようだった。

タンポポを大事に摘みながら、パパにあげるんだと喜びながら自宅へ帰る

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動物園デビューに失敗した話

動物園デビューに失敗した話

息子が2歳になり、そういえば動物園に一度も連れて行ったことがないことに気がついた。というよりも、動物園だけでなく、水族館とか、遊園地とか、いわゆる大型娯楽施設に連れて行ったことがない。息子が生まれてすぐに新型コロナウイルスの感染拡大の影響がなんとやらで、人が多く集まりそうな所は行かないようにしていたからだ。

2021年も10月に入り、そろそろ動物園にでも連れて行きたいと思った頃合いで、ふとネット

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猫と赤ちゃんが一緒に暮らすこと

猫と赤ちゃんが一緒に暮らすこと

我が家には7歳の白猫がいる。とにかく大人しく優しい性格をした女のコである。猫なのに一度も「シャー!」と全身の毛を立たせて威嚇をしたこともなければ、爪を立てて人間を引っ掻いたこともない。1階のアパートに住んでいた時、野良猫が庭にやってきて窓越しに挑発された時だって、うちの猫は「にゃあ!にゃあ!」となんとも情けない声で屁っ放り腰で対抗していた。どちらかと言うと人間の我々に助けを求めていた声だったかもし

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魔法の言葉「あっち」を覚えた息子の話

魔法の言葉「あっち」を覚えた息子の話

息子が一歳十ヶ月になった。子供を産む前は、ひと月ごとに子供の成長の節目を感じるとは思わなかった。ひと月の節目を迎えると、深呼吸を一つして天井を仰ぎ、今月も良く頑張ったと自分を褒めてあげたい気持ちになる。そして子供の成長の早さに毎月驚いている。

一歳九ヶ月と一歳十ヶ月の何が違うのか。コミュニケーションの引き出しが明らかに増えてきた。言葉の数が飛躍的に増えたわけではない。抱っこの事は相変わらず舌った

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母乳をやめた話

母乳をやめた話

疲れている、という実感はなかった。母乳か、ミルクか。できることなら母乳で育てたいと思っていた。母乳は母親の免疫を渡すことができるし、哺乳瓶の消毒の手間もないし、子供とのスキンシップで愛情形成もできるという。母乳はミルクより良いものだという神話が知らず知らずに頭に刷り込まれ、ついには「母乳で育てられないのは子供が可哀想だ」と謎の考えに支配されていた。

しかし息子が生まれて1ヶ月の頃、私は息子に搾乳

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一歳児が車のオーナーになった話

一歳児が車のオーナーになった話

「お土産買ってきたわよ」

と義母が我が家に着くなり言った。ばあばが大好きな1歳9ヶ月の息子は、ばあばの膝にちょこなんと乗っかり、鞄から出てくる手のひらサイズの小さな箱に目を見張った。SUBARUのフォレスターである。非売品のキャンペーン商品だ。悪路走行を演出する紙製の坂道コースまでついている。箱には「登る!止まる!」と誇らしげに書いてあった。

「チョロQですか、ありがとうございます」と義母にお

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保育園で忍者になり、息子を見守った話

保育園で忍者になり、息子を見守った話

「息子さんに気がつかれないようにしてください」

ある朝、変装用のバンダナとエプロン、マスクを手渡され、そう言われた。息子の保育参観である。いつもの自然に遊ぶ様子を見て欲しいとのことで、スタッフに化けて息子を見守ることになったのだが、決して本人にママと気が付かれない事がミッションのクリア条件だった。途中でバレてはいけない。まるで忍者だ。

祖母が伊賀忍者の末裔で、わずかだが自分にも伊賀忍者の血が流

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子供の発熱、母としての働き方

子供の発熱、母としての働き方

ゴトリ、と鈍い音がして夜中に目が覚めた。息子が布団からはみ出して、フローリングに頭を打ちつけた音だった。我が家は7畳のフローリングの部屋に直にマットレスを敷いて巣作りをしているのだが、寝相があまりにもひどく、縦横無尽にゴロつき回る息子はしょっちゅう場外に落っこちている。その度に起きて、ふかふかのお布団に乗っけてやるのが親の役目だ。頭を打っているくせに、スヤスヤと平和に眠っている。大した衝撃ではない

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幸せを感じる時

その日はとにかく疲れて、夕飯を作る気がなかった。冷蔵庫には玉ねぎとニンニク、卵、豆腐くらいしかなく、ご飯さえも炊いていない。息子の保育園のお迎えの帰りに買い出しをすべきだったのに、子連れの買い物は大変疲れるので、とんとスルーしてしまったのである。

「夕飯なんにする?」

と冷蔵庫事情をよく知っているはずの夫が聞いてくる。家事は何でも自発的にできる。正直言って主婦スキルは私より断然上の彼である。そ

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ジャンクパーティーで迎える新年

ジャンクパーティーで迎える新年

コロナの影響で帰省を自粛したので、今年の年越しはジャンクパーティーを開く予定だった。ちゃんとしたお節料理や季節を感じられるメニューを用意する体力も気力もなかったのだ。それでも普段は夫婦で自炊しているので、ジャンク尽くしを食べるのは久しぶりである。

ただコンビニで体に悪そうなものを好き勝手買ってくるだけなのに、何だか心がときめくのは不思議だ。年越しにはカップうどん。緑のたぬきより赤いきつね派だ。あ

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