たまこんぶ

都内ワーママ34歳。趣味のエッセイ、小説、読書感想文を公開する場所

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  • たまこんぶのエッセイ

    ワーママの日常で感じた喜怒哀楽をエッセイにした記事をまとめています。たまに思い出話もします。

  • たまこんぶの読書感想文

    読んで印象的だった本の感想文です。

最近の記事

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保育園で忍者になり、息子を見守った話

「息子さんに気がつかれないようにしてください」 ある朝、変装用のバンダナとエプロン、マスクを手渡され、そう言われた。息子の保育参観である。いつもの自然に遊ぶ様子を見て欲しいとのことで、スタッフに化けて息子を見守ることになったのだが、決して本人にママと気が付かれない事がミッションのクリア条件だった。途中でバレてはいけない。まるで忍者だ。 祖母が伊賀忍者の末裔で、わずかだが自分にも伊賀忍者の血が流れている事を思い出す。祖父が亡くなった直後に、父と叔母が何気なく始めた先祖調査で

    • タンポポで4歳児が女の子を泣かせた話

      「これね、パパにあげるの」 タンポポを一輪、指先で摘みながら四歳の息子がそう言った。幼稚園の広いグランドで、十一月というのに日差しが強く、とても暖かい昼下がりだった。お迎えに来て、すぐに帰路にはつかず、真っ先にグラウンドでかけっこして、何周も走った先にタンポポを見つけた息子の笑顔は輝いていて、新しい宝物を慈しんでいるようだった。 タンポポを大事に摘みながら、パパにあげるんだと喜びながら自宅へ帰る道に歩むと、同じクラスのAちゃんが自転車の補助席に座り込む瞬間に立ち会った。Aち

      • 花火の夜に猫が消えた話

        猫が消えた。いつまでも猫は一緒にいるものだと思っていた。野良猫から保護して、一緒に住むようになって7年が経つ白い猫だった。家猫として、外に出さない猫として生活して長く、マンションの外を出たらうちの猫はとても生きていけない。だから、ベランダに出るリビングの窓の開閉にはいつも神経を使っていた。ただ、その日は花火の日だった。4年ぶりの花火の日。コロナが明けたというには憚られるかもしれないけれど、コロナの騒ぎが落ち着いて初めての花火だ。コロナの直前に生まれた我が家の3歳児にとって人生

        • マクドナルドで感じた幸せの形について

          「すみだ水族館に行きたい」 と3歳8ヶ月になる息子が言ったのは、午前10時が過ぎた頃だった。その日は息子のリクエストで図書館に行って大戸屋でお昼ご飯を食べる予定だったのだが、気が変わったらしい。我が家からすみだ水族館までは車で30分と少し。ソラマチの立体駐車場は10時を過ぎると満車になり、私たちが着くであろう11時近くに駐車するのは難しいと思われた。それでも息子が水族館に行きたいというのだから、まあ地下駐車場が空いてるだろうと思って行くことにした。すみだ水族館の大ファンで年パ

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        • たまこんぶのエッセイ
          26本
        • たまこんぶの読書感想文
          6本

        記事

          3歳児が悔しくて声も出さずに泣いた話〜ソーセージお化け爆誕〜

          「お話して」 3歳になったばかりの息子は、夜寝る前に決まってそう言う。寝室は豆電球で薄暗くなると、寝る前の儀式と言わんばかりに両親に即興のお話を求めるのだ。 「どんなお話がいいかな?」 と私は決まって聞くようになって、息子は「あおい鬼のお話」「〇〇ちゃんが××くんと恐竜がパトカーに追いかけられる話」など、要求が少しずつ具体的になっていく。毎夜毎夜、私と夫は童話のパロディから、オチのない話まで、とりあえず思いつたストーリーを息子に聞かせるのだ。 その夜はいつも通り、息子が求め

          3歳児が悔しくて声も出さずに泣いた話〜ソーセージお化け爆誕〜

          2歳児に勝負を挑まれた話

          「ママ、いっしょにやろ!」と息子が誘うので、パズルを一緒にすることになった。夕飯を食べた後のプレイタイム、いつもはトミカで遊ぶかYoutubeを見せろと騒ぐのが、その日は違った。2歳9ヶ月になり、急速に頭が良くなっているのか、ほんの最近20ピースのパズルを一人で完成させたので、調子に乗った私が24ピースの新しいパズルを買ってあげたのだ。 ものの2、3日で新しい新幹線の24ピースのパズルを一人で完成できるようになった息子は、完成させると「できたよ!」と誇らしげで、その得意げな

          2歳児に勝負を挑まれた話

          虫嫌いの男の子が虫を克服?した話

          「むし、こわい!」と息子がはっきり言うようになったのは、2歳と半年くらいが経った頃。寒さが和らぎ、桜が咲き、虫がチラホラと出てきて、虫と遭遇するとギャッ!と叫ぶのだ。玄関から出て、外に虫が飛んでいると体が硬直してしまい、「こわい」と動けなくなってしまう。 虫が嫌いになってしまったのには心当たりがある。昨年の夏、群馬の実家に帰った時のことだ。実家の目の前は大きな畑で、肥料にする牛糞で嫌な臭いがして大量のハエが発生していた。楽しい夏休みを終えて、さあ車に乗り込もうと言う時だった

          虫嫌いの男の子が虫を克服?した話

          2歳の息子と仏の座の蜜を吸ってみた話

          子供の頃、道端に咲いていた花の蜜を吸ったことがあった。確か、同じ幼稚園に通っていた同級生が仏の座の花が甘いことを教えてくれたのだった。その同級生と一緒に、幼稚園の庭に咲いていた仏の座の蜜を吸い散らかしたことを覚えている。春の暖かな日差しの下で、紫色の小さな花を積んでは口の中に入れて、少しの冷たさの後に甘みを楽しんだ、平和な思い出。 そんなことを2歳の息子を連れて夫と義母と公園を散歩している時に思い出した。足元に仏の座が咲いていたのだ。アスファルトの隙間から力強く、十本ほどの

          2歳の息子と仏の座の蜜を吸ってみた話

          珠川こおり著「檸檬先生」から発せられるLGBTの叫び*ネタバレあり

          第15回小説現代長編新人賞の受賞作、珠川こおりさんが書かれた「檸檬先生」を読んだ。飛び降り自殺したヒロインの遺体を眺めるシーンから始まる物語で、主人公とヒロインとの交流とヒロインが自殺するまでの経緯が描かれている。 主人公とヒロインは音が色に、色が音に、数字が色に感じられる共感覚という独特な感覚を持つ者同士として引き寄せられる。出会った当初は小学3年生であった主人公と中学3年生のヒロインは同じ小中一貫校で出会う。共感覚について教えてくれたヒロインに対して、主人公は年の差もあ

          珠川こおり著「檸檬先生」から発せられるLGBTの叫び*ネタバレあり

          水族館デビューに成功した話

          息子が2歳児なって3ヶ月が経った頃、言葉が突然爆発した。3語文が繋がるようになって、コミュニケーションが驚くほど円滑になったのだ。何か要求があって、それを少ない語彙でなんとか伝えようとするのが何とも可愛らしい。 水族館に行きたいような要求も、息子なりの伝え方で私たちにプレゼンされた。私のダイエット用のトレーニングゴムチューブを引っ張り出し、お風呂に浮かべ、「おさかな!」と言ってはしゃぎ、「おっきい、おさかな、見たいねえ」と言ったのだ。息子が無垢な微笑みを浮かべながらおねだり

          水族館デビューに成功した話

          優しい気持ちになりたくて読んだ本の話

          読書をする目的は、優しい気持ちになりたいとか、感動したいとか、何かしら自分の感情を揺らしたい衝動にあると思う。あふれるコンテンツの中から、自分の時間を削って読もうとするには理由があるのだ。 寺地はるな著の「ガラスの海を渡る舟」を読もうと思ったのは、優しい気持ちになれるというネットの評判がきっかけだった。育児と仕事の両立の疲れた日常の中で、読書することで優しい世界に浸りたいと思ったのだった。 ガラス工房を営む兄と妹のお話で、性格がまるで違う二人の成長物語のように感じられた。

          優しい気持ちになりたくて読んだ本の話

          2歳児がおしゃれに目覚めた話

          「あか! あか!」 息子に青いパジャマを着せようとした時だった。パジャマを鷲掴みして投げ捨てながら、赤い服が良いと息子が主張したのだ。右手にズボン、左手に上着を掴んで、ワンツーのリズムで思い切り床に投げ捨てる。俺が着たいのはこれじゃないんだと、不機嫌さを分かりやすく表現している。 色の名前を覚えたのは、もう半年くらい前だったのに、突然色にこだわり始めた瞬間である。「パジャマ買ったばかりなんだから着てよ」と息子に着せようとするも、ギャン泣きで逃げ回り体の全てを使って拒否する

          2歳児がおしゃれに目覚めた話

          息子が初めてバスに乗った話

          我が家の2歳の息子が1日で一番繰り返す言葉は「バス」である。うまく発音できず、時々「バシュ」になるのがまた可愛らしい。車が大好きな息子は次々と車の種類を覚えていき、ブーブから始まり、バス、ピーポ(緊急車両)、アック(トラック)、しーしーしゃ(ゴミ収集車)と車の語彙を増やしている。その中でもとりわけ発言率が高いのがバスだ。 保育園までの送り迎えはマイカーなのだが、車の窓からバスを一生懸命探して、毎朝、毎晩「バス!バス!」と喜んでいる。オレンジ色のバスを見つければ、「ジンジン(

          息子が初めてバスに乗った話

          動物園デビューに失敗した話

          息子が2歳になり、そういえば動物園に一度も連れて行ったことがないことに気がついた。というよりも、動物園だけでなく、水族館とか、遊園地とか、いわゆる大型娯楽施設に連れて行ったことがない。息子が生まれてすぐに新型コロナウイルスの感染拡大の影響がなんとやらで、人が多く集まりそうな所は行かないようにしていたからだ。 2021年も10月に入り、そろそろ動物園にでも連れて行きたいと思った頃合いで、ふとネットを見ていると、上野動物公園の予約入場が大変だという話を見つけた。上野動物公園まで

          動物園デビューに失敗した話

          【読書感想文】ミシンと金魚/永井みみ

          第45回すばる文学賞を受賞した永井みみ氏の「ミシンと金魚」を読んだ。一人暮らしをしている認知症のお婆さん、カケイさんの一人称視点で、彼女の哀愁に満ちた人生をめぐる物語だった。 一人称の語りが素晴らしく、目の前に等身大のお婆さんがいるようで、むしろ自分自身が主人公の老婆に乗り移ったような臨場感があった。混濁した意識での会話が、鉤括弧を一切使わないことで表現されているように感じた。 独特の語りで小説の世界に引き込まれ、一気に読ませる魅力があり、主人公がお嫁さんに粗末に扱われる

          【読書感想文】ミシンと金魚/永井みみ

          息子が真夜中に泣き出した理由

          なんの夢を見ていたか覚えていないけれども、確かに私は何かの夢を見ていて、息子の泣き声で目を覚ました。息子は寝ぼけているようで、うなされながら泣いていた。一緒に起きた夫が「どうしたの?」と息子に話しかけたけれども、息子はただ泣き続けた。 私は寝ぼけて泣いているだけだから、放っておけばそのうち泣き止むと思って何もせず、睡眠欲に負けて自分の布団に寝そべりゴロゴロと夢の続きを見ようとした。夫がトイレに行こうと寝室のドアを開けて出て行くと、息子は一緒に起きて夫の後を追った。トイレに入

          息子が真夜中に泣き出した理由