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2歳児に勝負を挑まれた話

「ママ、いっしょにやろ!」と息子が誘うので、パズルを一緒にすることになった。夕飯を食べた後のプレイタイム、いつもはトミカで遊ぶかYoutubeを見せろと騒ぐのが、その日は違った。2歳9ヶ月になり、急速に頭が良くなっているのか、ほんの最近20ピースのパズルを一人で完成させたので、調子に乗った私が24ピースの新しいパズルを買ってあげたのだ。

ものの2、3日で新しい新幹線の24ピースのパズルを一人で完成できるようになった息子は、完成させると「できたよ!」と誇らしげで、その得意げな笑顔が可愛らしかった。息子は20ピースの働く乗り物パズルと、24ピースのパズルを二つ持ち出して、「いっしょにやろう!」と私を誘うので、一ずつ一緒に共同作業でパズルをするのかと思ったが、息子の意図は少し違った。

私に24ピースのパズルを押し付け、僕は20ピースをやると、言葉では説明できないが、身振り手振りで、それぞれ別のパズルをやろうと誘っているらしい。意図は理解したので、私が24ピースのパズルを淡々とやって完成させると、息子は私の進捗状況を見て、「僕の勝ち!、ママの負け!」と嬉しそうに言ってくるのである。状況的には私の方が先に完成させており、息子は後2ピースほどで完成というところであった。私は「えー、ママの勝ちだよ?」と言うも、息子は悪戯っぽく笑ってパズルを完成させて、すぐにまたパズルをバラし、「もっかいやろ?」と言うのであった。ここで、私は息子にパズル勝負を挑まれていた事を知ったのである。

勝負を挑む、という人間的な社会活動というのか、ゲームを楽しむことができるよになったという息子の知能の発達に感動し、ちょっと嬉しくなった。息子を喜ばせたくなったので、今度はハンデをつけてパズルに取り掛かると、息子が先に完成させた。パズルの裏とパズル台には、それぞれ数字が一致するように数字を手書きしており、数字と数字を合わせればパズルなんて瞬殺なのだが、あえてパズルを全て表にした状態で、ゆっくり取り掛かったのだ。

息子は慣れた20ピースのパズルを完成させ、「僕の勝ち!」と大喜びである。私がまだ完成させてないのを見て、キャッキャ騒いでいる。天真爛漫ではあるけども、どこか小悪魔的な邪気を含んだ笑顔が印象的で、とても可愛かった。「息子ちゃんはすごいな。早かったね、ママ負けちゃったよ」と言うと、さらに嬉しそうであった。

「もっかい!」と息子が嬉しそうだったので、今度は私の中に悪戯心が芽生え、次は本気で勝とうと挑んでみた。猛スピードでパズルを仕上げていく私の様子を察したのか、息子はチラチラと私の進捗状況を後ろ目に確認しながら、一眼見ては動揺して、さらに振り向いては動揺して、「うわあん」と涙目になっていく。焦ってパズルが上手くはめられず、私が先に完成させるのを目の当たりにすると声を上げて泣いてしまった。息子は後3ピースで完成だった。私は「ほら、とりあえず完成させな」と声をかけ、「負けることもあるんだよ」とにこやかに息子に言った。息子は負けた事実を受け入れられず、パズルを完成させることなく、その場でパズル台をひっくり返し、バラバラにしてしまった。

悲しそうに、悔しそうに、シクシクと泣いている息子を見て、ちょっと大人気なかったかなと反省するも、泣いている息子がまた可愛らしくもあって、自分はちょっと悪い母なのだろうかなんて考えたりもした。

「もう一回やろっか」と息子に声をかけると、涙をぽろりと落としている息子が小さな声で「うん」と言った。またハンデをつけてあげて、2回、3回と息子が連勝すると、息子もすっかり機嫌を直し、「僕の勝ちー!」とニコニコ笑っていた。

今度は36ピースのパズルを買ってあげようかなんて思いながら、まさか2歳児に勝負を挑まれるなんて、と驚きが心の中で反響していた。パズルで競争なんて、よく発想できたものだと。こうやって少しずつ賢くなっていて、その内息子から教わる時がやって来るのだろう。

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