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息子が真夜中に泣き出した理由

なんの夢を見ていたか覚えていないけれども、確かに私は何かの夢を見ていて、息子の泣き声で目を覚ました。息子は寝ぼけているようで、うなされながら泣いていた。一緒に起きた夫が「どうしたの?」と息子に話しかけたけれども、息子はただ泣き続けた。

私は寝ぼけて泣いているだけだから、放っておけばそのうち泣き止むと思って何もせず、睡眠欲に負けて自分の布団に寝そべりゴロゴロと夢の続きを見ようとした。夫がトイレに行こうと寝室のドアを開けて出て行くと、息子は一緒に起きて夫の後を追った。トイレに入ってしまったパパを見失ったのか、息子はリビングの奥で大声で泣いていた。流石に放っておいてはマズイと思って、私は眠い頭を起こしてリビングに歩いて行った。スマホを見ると一時半だった。

息子の泣き声は超音波攻撃というのか、高い音の領域で耳から脳天をつんざくようで攻撃力が高い。参ったな、というのがいつもの正直な感想で、特に真夜中に大声で泣かれるのは精神をゴリゴリに削ってくる。

息子はベビーゲートを突破してキッチンまで侵入し、ガスレンジの前で座り込んで泣いていた。私は息子を抱き上げて、背中をトントンしながら「大丈夫だよ。ママいるよ」と声をかけた。私の腕の中で泣き続ける息子を抱きしめながら、息子の体の緊張が少しほぐれたのを感じた。ママに抱っこされると声のトーンが低くなり、泣き声も一段と大人しくなった。もっと早く抱っこしてあげれば良かったと後悔するも、眠かったのだものと自分に言い訳をする。

寝室に戻って、抱っこしたまま寝っ転がると息子はうわごとのように「ブーブ」と繰り返した。何度も「ブーブ」と言ってブーブを探すので、ブーブを持たせないと泣き止まないのではと察した。ブーブを奪われたりする夢でも見たのかもしれない。「ブーブが見つからない」と私が呟きながら電気をつけてブーブを探して、心当たりのある玄関でトミカを一台見つけてくると、夫が他に二台のトミカを探し出していた。

息子にトミカを三台与えると、息子は「ブーブ」と言ってベソをかきながら、荒ぶる気持ちを徐々に鎮めてくれた。手元にブーブがあることを確かめて、安心したのだろう。

トミカを抱き抱えながら、「あっこ」と言って抱っこをせがむ息子は可愛らしく、私は自分が仰向けになって息子を自分の胸の上に乗っけて抱きしめた。背中をトントンして、「ねーむれー、ねーむれー、母の胸にー」と歌うと興奮していた息子が少しずつ落ち着いて、眠りの方へ意識が傾いて行くのがわかる。

線香花火が終わっていくように、あれだけバチバチと火花を散らばせていた泣き顔が今にも光が落ちそうな状態になって、背中を優しく叩くリズムと共に我が子の活動が安らかになっていく感覚は、母としての安らぎのような気がした。

どんな夢を見ていたのだろう。保育園でブーブで遊んでいたら、他のお友達にブーブを奪われてしまう夢でも見たのだろうか。それともママにブーブを片付けられる夢でも見たのだろうか。少なくとも、ブーブがあったのになくなってしまう夢だったのだろう。息子にとってブーブは生活の中心で、ときめきの中心なのだとブーブの悪夢の痕跡に思いを馳せた。

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