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さまざまな暮らしを許容することとは〜O Renovation Project〜

さまざまな暮らしや使い方を許容する建物とはどう言ったものか?そういった事をよく考える。

今日、リモートワークが増え、これまで住居としか使用していなかったところに「職」というものが突如入ってきた人たちは少なくないだろう。
ゆとりのある暮らしが確保できるような大きな空間をつくることがいい建築なのか?と疑問に思う。

確かに倉庫のような空間はなんでも許容できるかと思うがそれは設計者が決定を放棄したようにも感じる。用途によって考え方が変わってくるだろうが今回は「居住」という軸を持って考えていきたいと思いう。


これまでの住戸のあり方

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集合住宅は、戦後の昭和30年に日本住宅公団が設立され、都市圏近郊に急ピッチで供給された。51C型といった間取りから「食寝分離」「ダイニングテーブルの登場」「内風呂付・水洗トイレ」「ゆとりある敷地」などが“新しいライフスタイル”、“時代の最先端”といった一種の社会現象を巻き起こした。その後、昭和40年代、50年代まで、毎年、団地は量産されていき、時代にあわせて「より広く」「より便利に」とアップデートされていきますが、今の住まい、特にマンションの間取りをはじめ、骨格はすべてこの「団地」に源流があるといってもいいでしょう。

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このように戦後の住宅供給から現在に到るまで集合住宅の住戸はより人々のためにより良いものを作り出していく家庭で「人のための」といった考えがなくなってきたように感じる。仕上げがきらびやかになってく一方、リビングやダイニング、夫婦の部屋や子供部屋など部屋は細かく間仕切られている。それはまるでTシャツのS、M、Lサイズと言った規格品に人が合わせているかのようだと感じる。

住宅供給が落ち着き、空き家といった問題がある中、そういった空き家などの住戸は多様なライフスタイルを持つ現代社会の人々の要求に応えられずにいるようにも感じる。

未完成のままに

「建築」とは終了というものを持たない。つまり、いつ終わりにするかハッキリしていないと言える。いつ終えてもまた自由で、長く時間をかければ良いというものでもないが、しかしその価値観はしだいに研ぎすまされていく事になる。

建築が作られた段階で完結しないものがある。それは劇場の空間である。どんな演目にも対応可能になるよう余白があるように感じる。(劇場空間にも中身と建物が一体となっているような様々な形があるので一概に言えないが、、、)

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そういったフレキシビリティの高い空間を用意してあげることで住む人がその住戸を通して生活という演目を行えるのではないかと考えた。

フレキシビリティが高いとは、建築的にはある意味で決定を放棄するコトであるし、逆に、構築する建築は普通その苦労が見えるものです。

設計者という監督の演目に住まう人のアドリブがあることに魅力を感じる。

建築の不完全性・未完成についてはまた別の記事で書くこととします。

マンションのリノベーションで考えたこと
〜さまざまな暮らしを許容すること〜

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住まう人が自由選択しながら暮らせるような住戸を
半築(ハーフビルド)という考え方で
アドリブが可能な「未完成を残した空間」を計画した。

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一般的な集合住宅の住戸で現場を確認した際に一番最初に感じたのが玄関からバルコニーまでの奥行きが長いと感じた。
北側にある洋室1と洋室2がとても暗く湿気が多い部屋となってしまっていた。

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そこで部屋を住戸にとって必要な空間とそうでない空間を通路によって3分割する。それぞれ分割した空間に必要な部屋を配置していく。住戸にとって必要な空間には寝室や浴室やトイレなどの水廻りを配置する。
フリーなスペースは必要に応じて空間の大きさを変えることができるよう計画していく。
半築(ハーフビルド)という考え方でフリースペースを作っていく。
こうしてできた住空間は風通しが良く、湿気が多かった北側の部屋までひとつながりな空間が生まれる。

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フリーなスペースには木のフレームを組む。
木のフレームは住まう人のアドリブを許容するガイドとして機能する。
木のフレームがあることにより住まい方や使い方によってカーテンもしくは必要に応じて壁を立ち上げたりして空間を区切ったり広げたりすることが可能となる。

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また、床の素材や造作収納なども木のフレームとオーバーラップしてさまざまな暮らしを許容する住戸となります。

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こうして、フレキシビリティの高い空間を用意してあげることで住む人がその住戸を通して生活という演目を楽しく過ごせるのではないかと考える。

エピローグ

関東の郊外にある自己所有の物件で父が25年前に手がけた大規模マンションの一室である。なかなか売れなかった為、リノベーションして使用してしまおうと考え、設計を進めていた段階で運悪く?リノベーション前に買い手がついた為今回の案件は実現しませんでした。
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建築ユニット TAS

辻川巧(建築ユニット TAS)
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