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明けない夜の喫茶店(ショートショート)

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森の奥に佇む、疲れを癒したい人たちがやってくる喫茶店のお話です。
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お知らせ(BOOTH販売)

お知らせ(BOOTH販売)

 お知らせです~。
 BOOTHにて明けない夜の喫茶店で使用したペン画を使ったマグカップの販売を開始しました~!
 もしよろしければ、ご覧いただけると嬉しいです。

このURLより販売ページに飛べます。
kuusouno-akichi - BOOTH

スターオイルコーヒー

スターオイルコーヒー

「いらっしゃい」
 店主は穏やかに落ち着いた声で言った。
「こんばんは」僕はその空間の雰囲気にのまれて、いつもより声のトーンが二つほど低くなる。いつものことだけれど。
 その喫茶店は森の中にある。どうやってそこに辿り着いたのか、正直思い出せない。けれど、仕事で疲れた日や、今日は癒されたいな、と思った日はいつも、いつの間にかここにやって来ている。
「今日もお疲れみたいですね」店主はふふ、と笑って言う

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星屑コーンポタージュ

星屑コーンポタージュ

 土砂降りの中、帰宅する。折り畳み傘をさしても意味がないほどの大雨に滅入りながらも、なんとか玄関の扉を閉めてため息をつく。
 ぽたぽたと傘の先から落ちる水滴の音を聞きながら、手探りで玄関の照明スイッチを探す。
 傘はしばらく乾かしておこう。バンドで束ねず、そのまま傘立てに挿す。
 天気予報が外れていきなりの大雨。ツイていない。とりあえずスーツはハンガーにかけて水気とか取っておかないと。夕飯は少し前

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「これを使って紅茶を混ぜると面白いですよ」
 喫茶店の店主がティースプーンをくれた。受け取る。
 それを使って紅茶を混ぜると、赤色だったのが徐々に紺青色に変化していき、ティーカップの中に小さな夜空が出来上がる。
 仕上げに夜光糖を散りばめれば、まるで星が瞬いているみたいに綺麗だ。

スズムシコーラフロート

スズムシコーラフロート

「まだ夜でもちょっと暑い日あるじゃないですか?」
 店内のカウンター席に座るや否や、男は話し始めた。
「そうですね」
 答えたのはこの喫茶店の店主。優しく微笑んだ顔が印象的だ。店主に目配せした彼はさらに続ける。
「で、ここ数日は特にそうだから、睡眠不足になることが多くて。眠れても、睡眠の質が悪い気がするんですよね」
「なるほど」
「だから、何かこう、体の熱を冷ますようなものって何かないですか?」

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 喫茶店のメニューで「缶コーヒーの実」というものを注文してみた。出てきたのは、缶コーヒーだった。普通の缶コーヒーとどう違うんです? と聞くと、缶ごと食べられるんです、と返ってきた。
 それを頭から齧ってみると、確かに食べられた。ただ、普通に缶コーヒー飲む方がいいかも、とも思った。

 この喫茶店のコーヒーは夜空を使ったものがある。煎り具合によって薄暮、小夜、深夜と分けられ、まだ他にも種類があるらしい。
 私はいつも深夜を頼む。三つの中でも一番深煎り。この夜がいつまでも続いてくれたらいいのに、という想いから。ついでに今日は何かスイーツでも注文してみようかな。

ある喫茶店の砂糖事情について

ある喫茶店の砂糖事情について

 この世界と、別の世界が偶然ぶつかったときに発生したエネルギーが、消滅することなくその場所に残り続けると、その時のエネルギーが凝固して結晶化するらしい。
 エネルギー量や衝突角度によって結晶の結びつき方が変化し、食べられるくらい柔らかかったり、ガラス玉ぐらい硬くなったりする。
 ガラス玉、と書いた通り、形は球状になっている。
 ちなみに食べると甘いので、とある喫茶店では、これを専門の業者から仕入れ

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ダンベルエクレール

ダンベルエクレール

「最近、筋トレしてるんですけどね、全然うまくいかなくて」
 男は喫茶店の店主に愚痴っている。
「この時間まで起きていたら、それは体も休まらないのでは?」
 店主の至極全うな返答に、男は返す。
「そうなんですけどね、筋肉がつかないー、とか考え出すと、余計に眠れなくなってしまって。それで結局、遅い時間に色々食べちゃったりして……」
「あらあら、それはなんとも」店主は、困りましたね、と笑う。
「だから、

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朝焼けのクリームチーズ

朝焼けのクリームチーズ

「こんばんは~」
 喫茶店の扉が開く。カウベルの音が少し軽やかに響いた。
「いらっしゃいませ。今日はどうされました?」
 店主はグラスを磨きながら、軽やかに入店してきた人物に質問する。彼女は、口角をく、と上げて答える。
「明日休みなんですよね。ちょっと長めの連勤が終わって、一息つけるんです」
「それはよかった。お疲れでしょうし、ゆっくりしていって下さい」
「ありがとうございます~」
 彼女はカウン

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AIエイリアンどら焼き

AIエイリアンどら焼き

 人工知能(AI)が世の中に浸透し、あらゆるものにAIが埋め込まれるようになった。
 人々はAIの存在を徐々に受け入れながら、その進歩に日々驚かされている。
 それは食べ物にまで起こり、食べ物が学習する、というよくわからない現象が起こり始めた。

 ***

「人工知能を埋め込んだどら焼き、ですか?」
 男は大層驚きながら、店主に聞いた。カウンター席から身を乗り出しながら、とても信じられないといっ

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あわのうみ

あわのうみ

 男がいつもの通り、ひとり喫茶店でしっぽりやっていると、カウベルが静かに鳴った。
「いらっしゃいませ」
 店主もいつも通りの声色で言う。
 店内に入ってきたのは、一人の少女だった。女子高生くらいだろうか。制服を着ているけれど、あまりこの辺では見かけないものだ、と男は思った。
 少女は、椅子二つ分、男から離れた場所に腰掛け、メニューを捲り始めた。
 しばしの沈黙の後、少女は店主を呼んだ。
「あわのう

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 どんな出来事も強制的に夢オチにできるナッツを、夢見ナッツという。ひと齧りすると、任意の時間を夢だったことにできる。
 ある男は自分の人生全て夢オチだったことにしようとしたが、それを提供していた喫茶店の店主から、やめた方がいいと言われ、しぶしぶ諦める事にした。
 という夢を見た。