たけなが

絵や文章を描きます。 子どもの頃から夢見ていたファンタジーの世界と、日常との境界線が混…

たけなが

絵や文章を描きます。 子どもの頃から夢見ていたファンタジーの世界と、日常との境界線が混ざり合うような世界観が作れたらと思います。 よろしくお願いします。石川県のひと。 X(旧Twitter)はこちら→ https://twitter.com/takenaga_draw

マガジン

  • 空想星座製作所(ショートショート)

    空想で作った星座のショートショートなどを集めます。

  • がらくた入れ

    まだ空想段階みたいなお話を入れたりします。 他にもいろいろ入れます。

  • チョコレート(ショートショート)

    チョコレートに関するショートショートなどを集めています。

  • 明けない夜の喫茶店(ショートショート)

    森の奥に佇む、疲れを癒したい人たちがやってくる喫茶店のお話です。

  • 道の駅『はなかがり』(ショートショート)

    桜の咲き乱れる道の駅のショートショートです。たまにショートショート以外もあります。 一部の桜に関するショートショート類も入っています。

最近の記事

エプロン座(ショートショート)

 涼しい夜にジョギングする。  今日は月がとても綺麗だ。いつもよりも、その色が濃いような気がする。  月を見る視線をずらしていくと、四つの星を繋いだ縦長の台形を見つけた。  あれは何になるだろう。何に見えるだろう。  短冊。引っ張ったプリン。いや、違うな。  エプロン。そう、エプロンだ。  もしも夜空でできたエプロンがあったら。  例えば、夜空を加工する工房があるとしたら、そのエプロンを使わなければいけない。そうしないと、服に夜空がこびり付いたときに、洗い落とすことができなく

    • スターピン(雑記)

       夜空は様々な思い出を忘れないように取っておくための、コルクボードだった。  一面に広がる星一つずつに、過去の記憶が留められている。  楽しかったこと、嬉しかったこと。  悲しかったこと、悔しくて、怖くて眠れなかった夜のことも。  それら全てが、昨日のことのように思い出せるように、星々がピンになって、記憶が無くならないようにしている。  都会の空は狭い、と、故郷の知り合いが話していた。僕は、確かにそうかも、と答えた。  ビルに隠れた夜空は、とても遠くにあるように感じる。  無

      • +5

        イラスト(過去絵)

        • サンドイッチ座(ショートショート)

           午前四時。日を跨いで、始まりかけの朝の空気は澄んでいる。踏み出す足も軽い。  珍しく早く起きた朝。せっかくなので何かしたくなって、ジョギングをすることにした。  空にはまだ星が残っている。ただ、ほんのりと遠くの方で青色が滲んでいる。きっと日の出は近い。  こんな朝は軽やかな音楽を聴きながら走ろう。プレイリストを眺めて、決める。ディスプレイの光すら今日一日への希望に満ちている気がする。  足首を回して走り始める。  景色が走るスピードに合わせて移り変わっていく。走りながら、空

        エプロン座(ショートショート)

        マガジン

        • 空想星座製作所(ショートショート)
          15本
        • がらくた入れ
          14本
        • チョコレート(ショートショート)
          11本
        • 明けない夜の喫茶店(ショートショート)
          31本
        • 道の駅『はなかがり』(ショートショート)
          24本
        • 文具店(筆記用具のショートショートなど(仮))
          15本

        記事

          ブロック座(ショートショート)

           その昔。まだ世界中が、永遠に終わらない夜に包まれていた頃。  夜空はおもちゃのブロックでできていた。  人々は当時、とにかく娯楽に飢えており、何か遊ぶための道具が無いだろうかと、世界中を探し回っていた。  そんなある日。旅の商人が次の街を目指して、歩いていたときのこと。  道の脇の茂みに、何かが落ちているのを見つけた。  拾い上げてみるとそれは、一個のブロックだった。  一体なぜこんな場所にこんなものが。商人は不思議に思い、周囲を見回してみた。するとどうだろう。  頭上は

          ブロック座(ショートショート)

          じゃぐち座(ショートショート)

           ……のどが渇いた。  ジョギングをしながら思う。ふと見た腕時計の時間は午後八時。  光る文字盤を振り払うような形で腕を下ろし、再びジョギングに集中する。  けれど、依然のどの渇きは収まらない。そういえば今日、あまり水分補給をしなかったな、と、少し後悔する。  足取りは比較的いつもと変わらないように思う。実際に体がどうなっているかはさておき。  そんな状態で空を見上げたものだから、そこに浮かぶ星の並びが、まるで蛇口のように見えた。  まだ小学生だった頃、校舎の手洗い場の蛇口か

          じゃぐち座(ショートショート)

          街灯クリームまんじゅう(ショートショート)

           先輩から、ジョギングに誘われた。  彼はもともと運動好きな人。一方僕は、まだ運動なんて必要ないかな、と思い続けて早数年。お腹が少しぽっちゃりしてきたかな、と思う今日この頃。 「一度やってみたら? いい汗かくと気持ちいいよ」  先輩はそんな風にいうものの、僕自身、自分が運動をするのが苦手であることを十分承知している。  そのうえで悩んでいるのだけれど。 「じゃあ、無事走り終えたら、他の人には秘密にしている、あるものを食べさせてやる。めちゃくちゃうまいぞ」  ……それは、ずるい

          街灯クリームまんじゅう(ショートショート)

          空想の空き地(雑記)

           その空き地には、普段は何もない。  よく見る、というのか、ありきたり、というのか。大人の足首くらいまでの高さの雑草が茂っていて、季節ごとにタンポポや露草、セイタカアワダチソウなどが咲く。  きっと、誰の生活のそばにもある、もしくはあったようななんの変哲もないただの空き地。今すぐこの文章を読むのをやめて、半日ほど街を歩けば、すぐに見つかるような。  そこでは時々、不思議なことが起こる。  こことは異なる世界につながるのだ。私たちが普段、空想の世界と呼んでいる場所。  それは例

          空想の空き地(雑記)

          かりんとう饅頭座(ショートショート)

           先日祖母が亡くなった。八十九歳だった。  実家を出ていた私は、母から連絡を受け取り、故郷へと帰った。  連絡が来たのはちょうど仕事終わりの時間。翌日は休日だったため、一度マンションに帰ってから準備をし、車で向かった。  最期は病院の中だった。私が到着したころにはすでに、実家のほうに戻ってきており、母は葬儀業者の人とこの後の話をしていた。 「おかえり。ちゃんと食べてるの?」  母は私に気づくと、第一声がそれだった。一人暮らしをしているからだろう。きちんと食事をとれているか。実

          かりんとう饅頭座(ショートショート)

          電池ボックス座(ショートショート)

           もしも夜空を起動するための電源があるとしたら、どんな形だろう。  夜風が髪を撫でるのに身を任せながら、そんなことを考えた。  夜のジョギング中。今日はほんの少し、足取りが重い気がする。いつもより多めに働いたからだろうか。  疲れでよどんだ肺の中を掃除するように、夜の空気を胸いっぱい吸い込む。  ほんの少し体が楽になった気がする。それでは。と、先ほどの思考の続きをする。  夜空に電源があるとしたら。  空に輝く星のどれかがプラスのネジになっていて、そのネジをすべて外すと中から

          電池ボックス座(ショートショート)

          スプリングミルキーウェイ(ショートショート)

           ジョギングをしていて気づいた。  春になると夜の空気が一変する。  いままで氷の中に閉ざされているのではと思うほど冷たかったそれが、とても肌触りの良い、柔らかいものに変化しているのだ。  蘭のような強い花の匂いや、ほんのりと香る草の香り。側溝からの、堆積した葉っぱが腐葉土になったような匂い。どこかの家の夕飯やシャンプーの匂い。人んちの匂いを嗅ぐなんて! 変態! 最低! と思われても仕方ない。漂ってきてしまったのだから。訳のわからない言い訳をする。  それら全てが、柔らかな

          スプリングミルキーウェイ(ショートショート)

          ペットボトルロケット座(ショートショート)

           夜の街をジョギングする。  空気の匂いがどこかで嗅いだことがあるような気がする。ふと、思い出した。  あれは確か、小学校の頃。  家の近所で、ペットボトルロケットを打ち上げて、その距離を競う大会が開かれていた時の風の匂い。  僕はあくまでそれを、外から見ているだけの人間だった。  大きなグラウンド。様々な人たちが集まっていた。そのガヤガヤの外で、風の匂いがなんか好きな感じだな、と思いながら、しばらくその光景を眺めていた。  出場者に割り振られた番号が読み上げられるたびに、打

          ペットボトルロケット座(ショートショート)

          牛カルビ座(ショートショート)

           夜のジョギング。今日はいつもより少し遠くまでやってきた。  重大なミスを犯してしまっているのに気づいたのは、とある匂いが鼻腔をくすぐった時だった。  焼肉屋さんから漂ってくる匂い。よりによって、ちょうど退社後の飲み会が行われていそうな時間にやってきてしまった。  まずい。せめてなんとか、あのお腹がすく匂いの被害を最小限に抑えなければ。  けれどそんな思いもむなしく、歩道は一直線に続いている。焼き肉の匂いが、容赦なく襲い掛かってくる。  あー! くそ! やられた!  うまい!

          牛カルビ座(ショートショート)

          レモン座(ショートショート)

           夜の爽やかな、ほんの少しカンキツの気配を帯びた空気。  ジョギングしながら、肺に流れ込んでくるそれを楽しむ。息をリズミカルに繰り返して、空を見上げる。  夜空の星。果物の果汁が滴るような色。  きらきらと輝くそれを眺めていると、四つのひし形に並んだ星が目に入った。  何となくそれがレモンの形にみえて、口の中がすっぱくなった。もちろん、"思い出しすっぱい"なのだけれど。  夜空の上で実るレモンは一体どんな味がするだろう。  その香りはきっと、今吸い込んでいる空気そのままだろう

          レモン座(ショートショート)

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          ジョギングと星座(イラスト)

          ジョギングと星座(イラスト)

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          お知らせ(ショートショート朗読)

           お知らせです〜!  今年の三月に、拙作『月光バター』の朗読をして頂いた、フリーアナウンサーの島 永吏子さんに、再び作品の朗読をして頂きました!  今回は、このnoteに上げさせてもらった道の駅『はなかがり』のショートショートの中から数点選んでもらい、春のショートショート詰め合わせ、という形で読んで頂いております。  今の季節にピッタリかと思います。ぜひ、よろしくお願いします! 【桜ショート朗読】桜にまつわる不思議な物語集/作・たけなが【元NHKフリーアナウンサーしまえり

          お知らせ(ショートショート朗読)