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余命1ヶ月弱の父を救えるのは、医師でも家族でもなく宇宙人なのである。

【余命1ヶ月弱の父親へ向けた、罪悪感からくる保身行為ブログ①】←こちらからお読みください。

「これ見てよ。」
ベッドに横たわる父が嬉々として私に差し出してきたスマートフォン。
画面に映っていたのは、病室の窓から見える古いアパートと微妙にたるんだ電線、そして遠くにうっすらと浮かび上がる山の写真だった。
「なにこれ」
「ほら、この光ってる点見て。」
灰色に塗られた空を指さす。
空の中央にはポツっと小さな光が映っていた。言われないと気付かないレベルの小さな点である。

ああ、また始まった。

「・・・UFOって言いたいんだよね、それ。」
「そう。」
「いや、わかんないってそれじゃ。」
「いや、絶対にUFOだったよ。」
鼻の穴を膨らませ、自信満々に答える父。
看護師さんに見せて自慢とかしてないかなぁと、1人息子は不安になるのであった。

初めてUFOを見たのは、
小学4年生の夏休みだった。
我々成生家には、夏休みになると八丈島へ旅行しに行くという家族行事があった。
浜辺で遊び、バーベキューを楽しみ、夜は宿泊先の屋上で星を見るのが慣わしだった。

先導してくれる従業員のお兄さんに続いて、屋上へ続く階段を上る。
成生少年の心は満天の星空ロマンでぱんぱん膨れ上がっており、非常にうきうきであった。

"あれがデネブアルタイルベガ
君は指さす夏の大三角♪"

この曲をガールズバーで熱唱したがるルーツはおそらくここからきているのだろう。
(たぶんちがう)

階段を上りきると扉がみえた。
「星!アーニャ、わくわく!」状態の成生少年を優しい笑顔で見ていた従業員のお兄さん、満天の夜空に通じる扉を開ける寸前、衝撃の事実を口にする。

「実は最近UFOが見えるんだよ。今夜も出るといいいね。」

彼の何気ない一言で、抱いていた遠い昔の星の日への興味は、流れ星のごとく去っていた。
エイリアン、プレデター等の宇宙生物大好きっ子な私は、一瞬にしてUFOに心を奪われる。
そしてそれは私だけでなく、父と母の2人も例外ではなかったようだ。もう星のきらめきなどそっちのけで、「あの動いてるの本当に飛行機かな!?」とUFO探しに夢中な3人。
私がオカルトや超常現象系大好きになったルーツはおそらくここからきているのだろう。(たぶんほんと)

結論から言うと、UFOの観測には成功した。空を見上げてからものの20分ほどでやつは現れた。星に紛れて登場してきたそれは、人類を小馬鹿にするようにフラフラと夜空を横切ってゆく。
そして星と星の隙間を蛇行したのち、テレビでよく見る映像と同じように、パッと闇に消えていった。
未知との遭遇に興奮する私たち。
キャーキャー言われていい気になったのか、もう一度現れてくれたりと、なかなかサービス精神旺盛なやつだった。
謎の飛行物体は、ちっぽけな1家族の思い出を作るのに一役買ってくれたのである。

この一件以来、私たち家族は地球外生命体の存在を信じることになった。
顕著なのは父で、自宅の窓から夜空をぼんやり眺めては、UFOを再度見つけようと試みていることがあった。何度か撮影に成功しているのだが、すべて写真だったので本物なのかは判別できない。(動画撮れよ)

現在父は、ほぼ寝たきり。
外の景色はほとんど見れていない。
もちろん夜空でUFOを探すことも出来ない。

だから思うんですよ。いっそのことあちら側からやってきてくれないかなって。

マンションの真上まで来てもらって、上の階との間を上手いことワープしてもらって、そのまま父を機内に連れて行ってくれないかなって。
そんでもって文明の進んだ彼らに未知の技術で人体改造してもらえれば、少しは健康になると思うんだ。どんな作用が出るかわからないけど、今より悪くなることはないでしょう。

UFOも見れるし、健康にもなれるし、介護する側の負担もなくなる。仕事も復帰できるし経済的にも潤って、治療費捻出の為に売っちまった車も買い戻せるかもしれない。
ああ!すべてが平和になるよネ!
なんてすばらしい!

というわけで待ってます、宇宙人さん。
インターホンごしに「コンニチワー」とか、
ロマンないからしないでね。

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