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【三年前まで本屋大賞の存在を知らなかった俺が、宮島未奈先生とツーショットを撮るなんて!?】 ~書店員のエッセイ&本紹介~ 花田菜々子 『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
ぶっちゃけてしまうと、三年前の四月まで本屋大賞という存在を知らなかった。 本に関する話題にものすごく疎い人間だったのである。 芥川賞や直木賞くらいは聞いたことがあったけれど、又吉直樹さんの『火花』しか読んだことはなく。それも地元である吉祥寺の居酒屋・美舟が登場していたからで、「行きつけのお店だしな」とかいうちょっとした義理的読書であった。 本は好きだけど、待ち合わせの時間つぶしで本屋に寄ってテキトーな文庫本を買う程度のライト層。 そんな私が本屋大賞の壇上で写真を撮られている
【直木賞作家を信じて立命館へ入学した結果、フィクションをノンフィクションに変えることに成功した話】~書店員のエッセイ&本紹介~ 万城目学 『鴨川ホルモー』
晴れて大学生となった私を待っていたのは、フィクションが本当にフィクションであるという現実だった。 入学前のオリエンテーションで待ち受けていた上回生にビラをもらいまくっても、館内のボードに張り付けられたサークル紹介チラシを片っ端から見て回っても、バイト先の先輩に恥を忍んで聞いてみても、そのサークルが実在するという情報は得られなかった。 まだ新しい香りのする六畳のド真ん中に座り込んで、私は誰に知られることもなくほんの少し落ち込んだ。覚えたての発泡酒をあけ、ぷはあーっと一丁前な
【おみくじは大吉が出るまで引かないと、本当の望みは叶わない】 ~書店員のエッセイと本紹介~小手鞠るい『私たちの望むものは』
見上げた白い空は冬の色。部屋で最大限に温めた身体が、徐々に外気に染まっていく。どことなくだらりとした雰囲気漂う坂道は、妙な寂しさと高揚感に包まれている。 道中、横になって広がる五人家族を早足で追い越した。なにも邪魔だったからではない。むしろ彼らの方が正月らしさという意味では正しい。向かう先はきっと同じ。思いはきっと違うけれど。 境内へ足を踏み入れると多くの人がいた。と言っても明治神宮のようなすし詰め状態ではない。細い参道にずらりと行列ができているくらいだ。待ち時間は十分もな
【トナカイの着ぐるみを着せられキッチンを追い出されたパティシエに降り注ぐ、クリスマスの奇跡と冷えきった恋のリアル】 〜書店員のエッセイと本紹介〜
ゆっくりと十二月の明かりがともりはじめ、あわただしく働く私たちの職場は明日、さらなる激戦になることが予想される。 とは言いつつも、タルト・チーズケーキ製造担当の私にそこまで大きな出番はない。いつもよりほんのちょっと多めの数を作り、いつも通りの仕込みと片付けをして帰るだけ。特別な業務は、最前線で戦う女性店長とフリーターの男の子に、ほどよく立てた生クリームとカットした苺を供給し続けるくらいである。 「お二人、なにか手伝えることありませんか。」 「大丈夫やで。」 「大丈夫っす。」
【青春ブタ野郎はサッカー部のマネージャーと渋谷デートする夢さえ見られないがそれでもやっぱりイチャイチャしたいよ】 〜書店員のエッセイと本紹介〜 今村翔吾 著『ひゃっか!』
渋谷スペイン坂スタジオで行われる、公開生放送番組を観に行くのが好きだった。 当時私は高校二年生。部活がない月曜日は授業が終わるとすぐに教室を飛び出して、一目散に駅へと向かった。 「ラジオDJに俺はなる!」 血気盛んに息巻く少年は、きらきらと目を輝かせて山手線に走りこむ。 「今日もありがとう」 ある日の生放送中、憧れの小山ジャネット愛子さんが声をかけてくれた。電波に乗ったその言葉は、私にとって宝物だった。『僕も将来ジャネットさんみたいなパーソナリティーになれるように頑張ります