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知っているようで分からない!? 生活課題・地域課題・社会課題

ビジネスでも行政でも「社会課題のソリューションとして・・・」「地域課題の解決のために・・・」などと頻繁に使われる「社会課題」「地域課題」「生活課題」。
実は、WEB検索しても「明確な定義」や「関係性」については分かりません。
これを読んでいただければ、今まで「なんとなく」で使っていた用語に、しっかりとした意味を持ってもらえると思います。

1 生活課題とは

私たちが日々の生活を送る中で、職業生活・家庭生活・人間形成・余暇の利用・健康の維持管理・地域社会生活など、さまざまな領域において解決すべき問題を「生活課題」と言います。

ビジネスではよく「不満」「不安」「不快」「不便」といった世の中の「不」を考えることが大事と言われています。
ですので、生活課題はビジネスチャンスがたくさんある領域です。

2 地域課題とは

実は、生活課題と地域課題という言葉は「兄弟」のようなものです。

生活課題の中で、多くの住民が共有して直面していながら、個人だけではその解決が不可能であったり、地域住民の協働による取組によって初めて解決が可能となる問題を「地域課題」と言います。

以下、簡単な例でお伝えします。

(1)事例「落ち葉掃除」

緑道沿いに住んでいる住民が、「秋になると落ち葉が山積して不便。困る」と思っています。これは生活課題です。
自宅の前を一生懸命に竹ぼうきで掃き掃除しました。
しかし、時間が経つとまた落ち葉が風で運ばれて山積してしまいました。
一方、隣の家の人も全く同じ生活課題を抱えていました。その隣の家の人も・・・
このような生活課題は、一人ではなく地域全体で取り組むことによって初めて解決できる課題です。
地域の自治会で秋に定期的に落ち葉掃除をする。
雨に濡れて掃除がしづらくなる前に、協力し合って掃除する。
そういった地域住民の協働による取組が唯一の解決方法です。

(2)事例「子ども食堂」

また、別の例でお伝えします。

自分の住むまちで、子どもの食事や教育(家庭教育)に関する生活課題を感じている大人が多数いることが分かりました。
よくよく調べてみると、親が夜遅くまで働いていて食事の時間が遅かったり、栄養面を考えた食事を取れていないといった子どもが地域に多数いることが見えてきました。
そこで、地域の大人たちで集まって、行政や社会福祉協議会とも連携し、「子ども食堂」を定期的にオープンしました。
家庭教育の機会が少ない分、地域での教育活動(社会教育)によって補うこともできています。

(3)読者の皆さんへの問い

一つの課題を見るときに、生活課題でもあり地域課題でもあるという関係性を理解いただいたかと思います。
では、上記(1)の事例、(2)の事例の大きな違いは何でしょうか?

3 社会課題とは

地域課題の中で、全国的に住民が共通して直面していながら、地域だけではその解決が不可能であったり、社会全体での取組によって初めて解決が可能となる課題を「社会課題」と言います。

実は、別々に認識されている生活課題・地域課題・社会課題は、明確につながっています。

一つの企業や一つの自治体などで地域課題・社会課題を解決できることは決してあり得ません。
ただ、その企業や自治体などの組織や団体が動くことで社会的なムーブメントを作っていくことはできます。
地域課題・社会課題の解決に向けて取り組む主体が増えれば増えるほど解決に近づくはずです。
逆に言うと、いかに地域課題・社会課題に共感して何らかの主体的な動きを生み出すかがポイントです。

また、大きな視点で社会課題を考えるだけでなく、地域課題・生活課題の視点で細分化して課題を細かく分析することもポイントです。そうすることで、有効な解決策が導き出されることもあります。

さて、上記の事例について簡単に解説します。

上記2(1)の事例は、全国的な社会の課題ではありません。ですから、生活課題でもあり地域課題でもあるということです。

一方、上記2(2)の事例は、全国的な社会の課題です。実際に、2010年代から始まった子ども食堂の活動は全国的に広がり、2021年時点で6,000ヵ所以上になると報告されています。ですから、当事者となる子どもや親の生活課題でもあり、地域課題でもあり、社会課題でもあるということです。

なお、社会課題については、明確な定義は存在しませんが、WEB検索すると、よくこのような定義づけがでてきます。

「社会課題とは、世界中にある解決すべき課題」
→それはその通りですが、分かるようで分からない説明です。

「一般層にまで知れ渡っている、社会システムの欠陥や矛盾から生じた解決すべき課題」
→後半は正しいと思います。しかし、「一般層にまで知れ渡っている」というのは誤りと考えます。なぜなら、一般層に知れ渡る前の段階で、既に社会全体に蔓延している課題があるからです。

なお、ソーシャルビジネス業界大手の「ボーダレス・ジャパン」は、「社会的課題」を「社会の欠陥や不合理から生まれている問題で、実際に社会で生活していく上で支障をきたすレベルの大きな問題」と定義しています。

4 要求課題・必要課題という分け方

要求課題・必要課題という言葉は、ビジネスの中ではなかなか出てきませんが、行政の中では使われている考え方です(しかし、認識率は低い状況)。
ぜひ、ここまでお読みいただいた方には、この分類も身に着けていただきたいです。

生活課題・地域課題・社会課題といった課題を要求課題・必要課題という切り口で分類することができます。

(1)要求課題

積極的に学びたい・解決したいと思っている課題のことを「要求課題」と言います。
学ぶことを求めている内容・ニーズであり、「個人の要望」に基づく課題となります。
イメージしやすい例でいうと、英語、ヨガ、料理などです。

(2)必要課題

自発的には学びたいとは思っていなくても、避けて通ることができない社会的問題や地域で問題となって いることを、「必要課題」といいます。
学びの対象者に学んで欲しい内容、あるいは、学ぶべき内容を指しています。「社会の要請」に基づく課題となります。
イメージしやすい例でいうと、子育て、消費生活、環境保全などです。

(3)要求課題・必要課題の関係性

例えば、2010年代の防災・減災の活動について考えてみましょう。
2010年までは、明らかに必要課題の側面が強かったと思います。潜在的な課題と言える状況でした。
しかし、3.11の東日本大震災を経て、急激に学びのニーズが顕在化しました。つまり、要求課題化しました。
これは、必要課題でもあり要求課題でもあるバランスの取れた状態です。

こういった事象は社会全体でなく、地域レベルでも起こります。防犯などは代表的な例かもしれません。あるいは、その地域の歴史が世界遺産指定やTV報道されたときなど、それまでは「地域の歴史として知るべきではあったけど、あえて今学びたくはない」といった状態が、急激に学びのニーズが顕在化するといったことはよくあります。

顕在的な要求課題・潜在的な必要課題の関係性を深く考えるようになると、ビジネスやまちづくりのチャンスを捉える力がつくと思います。

5 まとめ

いかがでしたでしょうか?
少し難しい内容でしたが、ビジネスもまちづくりも課題をしっかり捉えるところから始まります。
よくPDCAサイクルを回す前に、R(Research)をつけてRPDCAサイクルとするのが大事だと言われます。「課題」をしっかりとResearchする上で、今回の記事が役立てば幸いです。

ぜひ、「スキ」「フォロー」いただければ嬉しいです。

おわりに

私たちサステナブルタウンでは「地域に暮らす一人一人が環境・社会・経済にとって最良な選択を見つけられる”サステナブルな地域社会”を日本中にたくさん作る」ことをミッションに活動しています。
◆ まちづくり活動、生涯学習、社会教育、市民活動、地域共創
◆ イベント学(プログラム作成・運営ノウハウ等)
◆ 公共施設や都市計画のソフトづくり(地域共創のワークショップ)
◆ コーディネート、コミュニティ活性化、WS運営
◆ チラシ・ポスター作成
◆ ポートランドのまちづくり
◆ 観光・おもてなし
◆ 多文化共生
◆ 多言語対応
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◆ 東京2020オリンピック・パラリンピックとまちづくり
◆ SDGs
◆サステナビリティ
◆D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)
◆レガシー
◆男女共同参画 など

さまざまな分野にて、2012年より、全国各地にて、その地域の課題に合わせてワークショップや講座、講演会等の内容・方法を考えて取り組んできました。

学びの力でより良い社会づくりを目指す活動を行う専門家として、これからもご要望に応じて取り組んでいきます。


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